こんにちは!ウイスキーの魅力と楽しさを伝えるカエル「sister-ley」です!今回も、魅力的なウイスキーの解説&レビューを行っていきます!!
ベンロマック10年は、華やかで飲みやすいイメージのあるスペイサイドでは異色のピーティーな味わいが楽しめるシングルモルトです。
その歴史と味わいには、多くの魅力と奥深さが詰まっています。この記事では、ベンロマック10年の魅力を余すところなくお伝えし、実際に3種類の飲み方で飲んだ感想や蒸溜所の歴史まで詳しく解説します。
数々の輝かしい賞を受賞したベンロマック10年の魅力を是非、知って下さい!
ベンロマック10年を簡単にまとめると
ウイスキー属性 | シングルモルト |
産地(エリア) | スコットランド(スペイサイド) |
蒸留所 | ベンロマック蒸留所 |
味わい | ピーティー&フルーティー |
飲みやすさ | ★★★☆☆☆ |
おすすめの飲み方 | ストレート、ハイボール |
個人的感想 | 独特のピーティーさがクセになる |
スペイサイドでは珍しいピーティーなベンロマック
ベンロマック10年は、古典的なスペイサイドモルトとしての特性を保ちながら、ピートスモークが効いた独特の風味を持っています。アイラモルトとは異なり、焼けた木材のようなスモークが特徴的です。また、ナチュラルカラーで着色なし、使用する樽も全てファーストフィルのものを使用するという拘りが、品質の高さを物語っています。
さらに、ベンロマックはシングルモルトとしてだけでなく、過去にはブレンデッド用の原酒として高く評価されていました。スペイサイド地方の他の蒸溜所とは一線を画す独自の風味と高い品質が、長年にわたってウイスキーファンを魅了してきたのです。
一般的な解釈としてスペイサイドは優しくノンピートのイメージですよね!?
しかし、ベンロマックはピートの効いたスモーキーな風味と果実味あふれる古典的な味わいを特徴的なウイスキーです。
G&M社の悲願、自社蒸留所として再稼働したベンロマック蒸溜所
ベンロマック蒸留所はかつてブレンデッドウイスキーへの原酒供給用の蒸留所でした。
幾多の困難を乗り越え、現在は自社蒸留所を持つこと悲願としていた老舗ボトラーズメーカー「ゴードン&マクファイル社」が所有しています。
次はベンロマック蒸留所の歴史、そして製法について解説いたします。
数々の困難を乗り越えたベンロマック蒸溜所
ベンロマックはスコットランドのスペイサイド地方で製造されるシングルモルトウイスキーであり、スペイサイド最小規模の蒸溜所です。この蒸溜所のオーナーは、数々の銘酒を世に送り出してきた老舗のボトラーズであるゴードン&マクファイル(G&M)社です。同社はウイスキー愛好家の間で「GM」や「G&M」の愛称で知られ、業界のパイオニアとして高い評価を受けています。
ベンロマックの始まりは1898年に遡ります。ダンカン・マッカラム氏とF・Wブリックマン氏の共同出資によって設立されました。しかし、創業直後から数々の困難に見舞われました。1898年10月には大手ブレンダーのパティソンズ社が倒産し、これによりブリックマン氏はウイスキー事業から手を引かざるを得なくなりました。残されたマッカラム氏も経営を続けましたが、ベンロマックはすぐに閉鎖に追い込まれました。
1909年に再稼働するも、またすぐに閉鎖。その後も稼働と閉鎖を繰り返し、オーナーも幾度となく変わります。1938年にはウイスキー業界の異端児として知られるジョセフ・ホッブズがベンロマックを買収しますが、すぐにアメリカのナショナル・ディスティラーズ社に売却されました。1953年にDCL社が買収し、ようやく安定期が訪れますが、1983年に生産能力の低さが原因で再び閉鎖されました。
1992年にゴードン&マクファイル社がベンロマックを買収し、約5年間の改装を経て、1998年に再び生産を開始しました。
この再稼働を祝うために、当時のチャールズ皇太子が公式に蒸溜所を訪れました。チャールズ皇太子は蒸溜所近くの名門寄宿学校「ゴードンストウン」の卒業生であり、ゴードン&マクファイル社代表のイアン・アーカート氏も同校のOBであることが、この訪問の背景にありました。
現在、ベンロマックはシングルモルトウイスキーのブームに乗り、小規模ながらも高品質なプレミアムウイスキーを少量生産することで成功を収めています。昔はブレンデッドウイスキーの原酒の生産が主流でしたが、現在ではその独自の味わいが評価され、シングルモルトウイスキーとしての地位を確立しています。
5年もの歳月をかけてベンロマック蒸溜所を再建したGM社。
自社蒸溜所を持つというGM社の強い信念を感じますね!
古典的な製法を守るベンロマック蒸溜所
ベンロマック蒸溜所のウイスキーは、古典的なスペイサイドシングルモルトをコンセプトにしており、ピートスモークが効いた豊かな味わいが特徴です。使用される大麦はすべてスコットランド産で、フェノール値10〜12ppmの麦芽をピートで燻し、約4〜5ppmのニューメイクスピリッツが精製されます。
発酵工程
ベンロマックでは、発酵槽にスコットランド産カラ松を使用しています。元々4基設置されていた発酵槽は、2014年の改装でさらに9基追加されました。新しい発酵槽も同様にカラ松製であり、これにより発酵プロセスの安定性と一貫性が確保されています。
蒸溜工程
蒸溜は、2基のポットスチルを使用して行われます。初溜用のポットスチルは容量7,500リットルのストレートヘッド型、再溜用のポットスチルは容量4,500リットルのボール型です。この規模はスペイサイド地方において最小クラスとなっています。蒸溜所マネージャーのキース・クルックシャンク氏によれば、風味豊かなシェリー樽に負けないスピリッツを得るために、蒸溜時のカットポイントを細かく調整しています。ライトリーピーテッドではアルコール度数61%、有機栽培のノンピート大麦モルトでは62.8%、ヘビリーピーテッドでは58%と、使用する大麦モルトの種類によって変えています。
仕込み水と熟成
仕込み水には、フォレス近郊のチャペルトンの泉水を使用しています。この水は、ベンロマックのウイスキーに特有のクリーンな味わいを与える重要な要素です。
熟成には、ジャックダニエルのアメリカンオーク樽とオロロソシェリー樽が使用されます。シェリー樽は全体の70%を占め、ヨーロピアンオークのバットやホグスヘッドが主に使われますが、一部アメリカンオークのシェリー樽も含まれます。これらの樽は3年間シーズニングされており、その他にもワイン樽や新樽も一部使用されています。
生産量と設備
ベンロマック蒸溜所の年間生産量は約2,500本、純アルコール換算で年間135,000リットルとなっています。しかし、2014年からの改装により発酵槽が増設され、現在では年間380,000リットルにまで生産量を拡大しています。今後の需要増に備えてさらなる設備投資も行われており、最大で年間約700,000リットルまで生産量を引き上げることが可能です。
ベンロマック蒸溜所の継続的な設備投資と改良は、品質と生産効率の向上を図るためのものであり、その成果が今後の製品に反映されることが期待されています。
スタンダードボトル「ベンロマック10年」の特徴
ベンロマック10年は、スタンダードなラインに位置するウイスキーであり、近年そのパッケージが刷新されました。このウイスキーの製法と特徴について詳しく見ていきましょう。
ベンロマック10年の原酒比率
ベンロマック10年は、異なるタイプの樽を組み合わせたユニークな熟成方法が特徴です。具体的には、次のような構成で熟成されています:
- バーボンバレル(80%):ウイスキーの主要部分はバーボンバレルで熟成されます。これにより、バニラやキャラメルのような甘く滑らかな風味が加わります。
- シェリーのホグスヘッド(20%):残りの部分はシェリーホグスヘッドで熟成され、フルーティーでリッチな風味が加わります。
- ファーストフィルのオロロソ樽での仕上げ(最後の1年):最終的に、すべてのウイスキーは1年間ファーストフィルのオロロソ樽で仕上げられます。これにより、深みのある色合いと豊かなシェリー風味が加わります。
さらに、ベンロマックは「ソレラ方式」と呼ばれる方法を使用しています。
この方式では、各バッチの一部を次のバッチに混ぜることで、ボトリング毎の品質や味わいを一定に保っています。この工夫により、一貫した風味を維持し続けています。
ソレラシステム
ベンロマック10年の生産には「ソレラシステム」と呼ばれる方法が用いられています。この方式はスペインのシェリー作りで発展したもので、異なる年次の液体を混ぜることで一貫した品質を保つ方法です。
ソレラシステムでは、以下のようにして品質を保ちます
各バッチの一部を次バッチへ混ぜる:ベンロマック10年では、各バッチの一部を次のバッチに混ぜることで、毎回同じような風味と品質を維持します。これにより、年ごとの違いを少なくし、安定した味わいを提供することができます。
ソレラシステムはグレンフィディック15年でも導入しているシェリー酒伝統のシステムです!
古典的な製法とソレラシステムによってバラツキのない、一貫性のある味わいを可能にしています!
それでは、実際にストレート、ロック、ハイボールの3種類の飲み方で味と香りをみていきましょう!
テイスティング(実際に飲んでみた)
ベンロマック10年のフレーバー
ベンロマック10年の味わい
ベンロマック10年をストレートで飲んでみる
香り
- ピート、スモーク、オーク、ナッツ、コショウ、オレンジ、土
味わい
- エステリー&スモーキー
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。
香りはツンとしたピートのスモーキーなフレーバーがグラスから立ち上がり、オークの樽香が漂います。また、ナッツの香ばしい香りに混じってコショウなどの香辛料の香りがあり、オレンジとやや土っぽさを感じるナチュラルな印象を持ちます。少し時間が経つと、ピートの香りの奥にベリー系のニュアンスが現れ、非常にフルーティーな表情に変わります。
口に含むと、ホワイトペッパーとオークのウッディな香りが広がり、スパイシーなフレーバーが立ち上がります。そして、そのスパイシーさが徐々にタンニン感に変わり、シトラスの爽やかさが現れます。余韻にはスモークとブドウ、オーキーな香りが静かに混じり合いながら消えていきます。
エレガントなスペイサイドの雰囲気に、古典的なオーキーでスモーキーな香りが漂う味わいは、最近のシングルモルトではなかなか味わうことができません。老舗ボトラーG&Mならではの、ウイスキーを知り尽くした味わいと言っても過言ではありません。
オーキーな木の香りとピートのニュアンスがなんとも古典的な味わいで美味しいです!アイラとは違った木のニュアンスを強く感じます!
ベンロマック10年をロックで飲んでみる
香り
- ピート、スモーク、オレンジ、ナッツ、コショウ、オーク
味わい
- シトラス&ピーティー
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りはツンとしたピートのニュアンスにオレンジが混じり合い、オークやコショウ、ナッツの香りがじんわりと漂います。氷が溶けて加水が進むと、シトラス(オレンジ)の香りが前面に出てきて、ジューシーな雰囲気に変わっていきます。
口に含むと、ピートのフレーバーが広がり、スモーキーな香りが後から追いかけてきます。オレンジの果実感と、皮を噛んだような強いビターが広がると、再びスモーキーフレーバーが中心となり、ゆっくりと消えていきます。
果実と煙が上品に混じり合う様子は、アイラモルトには見られない陽気さを感じさせます。ストレートよりもシトラスフレーバーが強調され、スッキリとした味わいになり、飲み疲れせずにスイスイと飲めてしまいます。ビターが中心の味わいなので、口直しにもピッタリです。
柑橘感がグッと前に出てきてビターな傾向ですが、スッキリとしていて飲みやすく、優しいスモークとオークの香りが飲み飽きせず楽しめます!
ベンロマック10年をハイボールで飲んでみる
香り
- スモーク、ピート、ナッツ、コショウ、オーク
味わい
- シトラス&スモーキー
感想
最後はハイボールで楽しんでみましょう。
香りは非常にスモーキーで、ピートのニュアンスをしっかりと感じられるドライな印象です。その中にナッツやコショウ、オークの香りもありますが、ストレートやロックよりもドライな印象で、シトラスの爽やかさがふんわりと広がります。
口に含むと、爽やかな柑橘の風味とともにスモーキーフレーバーが広がります。爽やかなシトラスとともに、スモークとピートのニュアンスが続き、余韻にはオークやナッツが香り、シトラスと混じりながら最後にはスモーキーな香りがゆっくりと消えていきます。
アイラモルトほどウェットではなく、ハイランドほどドライすぎない、しかし独特のクセを感じるスモーキーなハイボールです。
ハイランドスモーキーよりもウッディで果実味を感じます。スモーキーなニュアンスも負けないくらいあり飲みごたえのある一杯!!
ベンロマック10年のまとめ
ベンロマック10年は、スペイサイドの古典的なシングルモルトの魅力を凝縮した一本で、歴史的な背景とゴードン&マクファイル社の技術が融合したその味わいは、ウイスキー好きなら一度は試してほしい銘柄です。香ばしいスモークとモルティな風味、複雑な余韻が織り成す味わいには、日本のウイスキーにはない独特の魅力が詰まっています。
ただ、ピーティーな味わいは人によって好みが分かれることもあるので、アイラモルト好きやスモーキーなウイスキーが好みの方には特におすすめです。もちろん、ピートの香りがする玄人向けウイスキーの入口としても最適です。
復活後、数々の賞を受賞した秀逸なシングルモルト「ベンロマック10年」。気になる方はぜひチェックしてみてください!
最後までお読み頂きありがとうございました。
ベンロマックのラインナップ
ベンロマック蒸留所は、その品質と伝統を重んじたウイスキー作りで知られています。ベンロマック10年は特に有名ですが、それ以外にも魅力的なラインナップが揃っています。以下では、ベンロマック蒸留所の主要なラインナップを紹介し、それぞれの特徴について詳述します。
ベンロマック オーガニック
ベンロマック オーガニックは、完全にオーガニックな素材を使用して作られたウイスキーです。英国有機認証協会(Soil Association)によって認証されており、環境に優しい製造方法が特徴です。このウイスキーはバーボン樽で熟成され、バニラや果物の香りが豊かで、スムースな飲み口が魅力です。
ベンロマック15年
ベンロマック15年は、より長い熟成期間によって得られる深いフレーバーが特徴です。シェリー樽とバーボン樽の両方で熟成されることで、フルーティーでスパイシーなノートが絶妙にバランスされています。ダークチョコレートやシナモンの香りが感じられ、リッチな余韻が楽しめます。
ベンロマック21年
ベンロマック21年は、21年間熟成された高級ウイスキーで、シェリー樽とバーボン樽の影響を受けた複雑なフレーバーが特徴です。深い琥珀色をしており、ドライフルーツ、ナッツ、スパイスのアロマが豊かに広がります。長い余韻が楽しめるウイスキーです。
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