このウイスキーについて簡単に説明
響について
サントリーが販売しているブレンデッドウイスキー『響』は、サントリー創業90周年にあたる1989年に誕生しました。発売当初は年数表記がありませんでしたが、後に『響17年』と年数表記がされて、以降「響12年」、「響21年」、「響30年」とラインナップを増やし、現在も国内のブレンデッドウイスキーの最高峰という位置づけを不動の物にしています。
以外かもしれませんが、響というブランドの最初のボトルは「17年」だったのです。
発売当初のラベルは見た目も手触りも和紙そのもの感が凄かった。
現行でこの響12年の後継が巷で人気の『響ジャパニーズハーモニー』
「響」という商品名は「人と自然と響きあう」というサントリー社の企業理念と、クラシック音楽の作曲者ブラームスの作品「交響曲第1番 第4楽章」のイメージが盛り込まれており、口内で複層的に響き合う至極のハーモニーから来ています。
シングルモルトが楽器のソロパートであるなら、ブレンデッドウイスキーはオーケストラ、まとめ上げるブレンダーは指揮者という位置付けです。
数々の楽器(シングルモルト)が奏で響き合う様をネーミングにしているあたりはサントリーならではのセンスの良さですね。
この響12年は当時のチーフブレンダーを努めていた「輿水精一氏」の定年前に世界に誇れるブレンデッドウイスキーを造るという精神によって誕生しました。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- 梅、バニラ、ハチミツ、紅茶、ベリー、お香
味わい
- 芳醇な熟成感、梅酒樽後熟モルトによる心地良い酸味、終盤に香る白州モルトのビター
感想
サントリーの上位ボトルには、裏の説明に『最初の一杯はぜひ、ストレートで』と書かれていることがあります。作り手としてストレートが完成の味わいであり、そのボトルの個性を最も感じ取れる飲み方だからです。
ということで、ストレートで飲んでみます。第一印象は、熟成感がしっかりあって梅酒樽後熟モルトの心地良い酸味が『スコッチウイスキーには無い、唯一無二のウイスキー』を十分すぎるくらいに演出しています。もう少し深く香りを嗅いでいくとバニラや熟した果実の様な甘さ、山崎モルトであろう熟成感で鼻腔が満たされます。
口に含むと、芳醇な熟成感と共に甘酸っぱい味わいが口の中に広がります。続いてグレーンの軽快な甘さや、ミズナラのお香を思わせるエキゾチックな香りがサントリーらしさを演出。アフターにかけては、どことなく顔を出してきた白州モルトのビターで清涼な味わいが、ブレンデッドウイスキーの複雑さを知らしめる形で余韻となって消えていきました。
当時、初めて飲んだ時は『美味しい』というだけでなく、大げさかもしれませんが、ブレンデッドウイスキーの可能性を叩きつけられる様な感覚を覚えました。この一杯で、サントリーが所有する3つ蒸留所の個性をしっかりと感じられる、素晴らしい味わいです。
ロックで(氷を入れて)飲んでみる
香り
- 梅酒、バニラ、白檀
味わい
- 終始梅酒の香り、長期熟成グレーンの優しい甘さ
感想
続いて、氷を入れたロックスタイルで飲んでいきます。
保存の為、小瓶に移し替えて中途半端に残った物を思い切ってロックとハイボールで飲んでしまいました・・・。
ストレートの時よりも梅の香りが大分強くなりました。ブラインドで飲まされたら梅酒と勘違いする方もいると思うくらい梅酒感たっぷりです。山崎モルトの熟した果実感というよりも、もう少し手前の収穫間近の果実の様な味わいに変わり、フレッシュさが加わった印象です。口当たりは粉っぽさ(プアール茶の様な)を感じ、ミズナラ由来のエキゾチックな香りを堪能できます。総じて12年のボトルとは思えない滑らかさです。これは発売当初に長期熟成などの貴重なモルト原酒が多くあったことを伺わせます。この様な味わいが気楽に飲めた頃が懐かしい・・・
ハイボールで飲んでみる
香り
- 梅、ナッツ、ハチミツ、お香
味わい
- 炭酸の爽快さが甘酸っぱさを加速させる
感想
最後はハイボールで頂いてみます。ハイボールくらいに比率を薄めてしまっても樽香はしっかりと感じられ甘酸っぱい香りが心地良く、相変わらず優しい口当たりで後半にかけてのビターがしっかりと飲み応えを演出してくれます。現行のジャパニーズハーモニーよりも、ビターが優しく熟成年数の恩恵は随所にあると感じました。
余談ですが、当時のサントリーは響シリーズとペリエのマリアージュを大々的に謳っていました。都内でのイベントやキャンペーンを通じて響シリーズの魅力を世間にアピールし、需要を伸ばそうと企業努力をしていました。それが、まさか今日の様な大幅な需要拡大の事態になるとは想像もしていなかったと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか、現在では終売になってしまったボトルではありますが、今日のジャパニーズウイスキーブームを牽引してきたサントリーが世界に無い味わいを求めてリリースした響12年。本来のウイスキーらしい味わいにとらわれず、日本を感じる、日本人にしか出来ない、日本らしい味わいを求めたサントリー精神は、世界に類を見ない梅酒樽後熟モルトを使用して唯一無二の味わいを完成させたのです。この様な味わいは、現行のジャパニーズハーモニーへと受け継がれ、熟成感など違いはありますが、味の方向性は一緒で欧米では出せない真のジャパニーズウイスキーを作り続けています。希少価値などから年々価格が高騰していますが、ウイスキーは飲むもの。味わってこそ本当の意味で自分の物になると思います。ご馳走様でした。
最後までお読み頂き有難うございました。
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