このウイスキーの特徴を簡単に
このウイスキーについて
今回は、サントリーから限定で発売された(たまに販売している!?)「角瓶 復刻版」をご紹介致します。
まずは、角瓶という名前の由来
「角瓶」は1937年に発売され、当時はまだ「角瓶」とは呼ばれていませんでした。ボトルデザインこそ今と同じく「亀甲模様の四角い瓶に黄色いラベル」が貼られ、名前も「サントリーウヰスキー12年」という名前で上級ウイスキーという扱いだったのです。
現在の「角瓶」というネーミングは、「サントリーウヰスキー12年」のボトルが角ばっていることからついた「通称」が、そのまま銘柄の名前になったという経緯があります。
(トヨタのAE86が現在の「86」という車名になった様な感じです)
角瓶が誕生するきっかけ(簡単に説明)
次に、「角瓶」が誕生する事になったきっかけを簡単にご説明いたします。
この「サントリーウヰスキー12年」よりも前に、「国産ウイスキー第1号」としてサントリーは「白札」というウイスキーを世に出しています。しかし、これがさっぱり売れませんでした。
理由は、本場スコットランドの味を追求した「白札(現:ホワイト)」ですが、当時の日本人には未知の味で全く受け入れられなかったのです。
目指すウイスキーの方向性の違いから、「山崎蒸留所」創設に携わった「竹鶴氏」はサントリーを去りニッカウヰスキーを設立。サントリーの創業者である「鳥井氏」は「白札」の失敗から、日本人の舌に合う日本人の為のウイスキー造りを目指します。
そうして試行錯誤の上に完成させたのが、現在のハイボールブームの火付け役でありベストセラー商品である「角瓶」の元祖「サントリーウヰスキー12年」でったのです。
角瓶が注目された理由
次に、「角瓶」がこんなにもロングセラーで日本の人々に浸透していったか!?について簡単にご説明いたします。
「角瓶」は鳥井信治郎の「本場に負けない日本独自のウイスキーを造りたい」という熱い思いにより「ピート香を抑えた飲みやすい味わい」に仕上がっており、ウイスキーを飲み慣れていない人々にも徐々に受け入れられるようになりますが、さらに追い風が吹くことになります。
ちょうどその頃は、日本が戦争へと突き進む時代で外国からの輸入品に限りが出始めた頃でした。ウイスキーに関しても例外ではなく、洋酒に関しては国産品に頼らざるえなくなります。
しかし、これがサントリーの転機となり飲みやすい「サントリーウヰスキー(角瓶)」の認知度はますます上がる事となったのです。
それに、1923年より創業の山崎蒸留所には10年以上の熟成した原酒が使えるようになっており、国産ウイスキーへ需要が高まるタイミングに味わい深いモルトを使った「サントリーウヰスキー12年」が満を持して発売され、ヒット商品となったわけです。
この時、発売された「サントリーウヰスキー12年」つまり「初期の角瓶」の味わいを現代の山崎蒸留所などに眠るモルト原酒やグレーン原酒で再現したのが、今回ご紹介する「角瓶 復刻版」というわけです。
本品は、横浜開港150年を記念して2009年に最初に発売されたのが最初で、現在は限定生産品らしくたまに店頭でも見かけたりする場合もあります。
レギュラーの角瓶との味の違いなど比べながら、いつものように3種類の飲み方でレビューしたいと思います。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- キャラメル、バニラ、紅茶、レーズン、ゴム、クッキー
味わい
- ややアルコールの刺激、砂糖の甘さと柑橘のビター
感想
まずはストレートから飲んでみます。香りは、キャラメルやバニラといったウッディな香り、紅茶の発酵感があり、うっすらとですがレーズンやゴムっぽい香りがして「シェリー樽原酒」を思わせる香りがあります。また、ほのかにクッキーの様な焼き菓子の香ばしさが漂い「現行品」と比べると熟成感や使われて原酒の違いがはっきりと分かります。
口に含むと、少しピリッとするアルコールの刺激を感じ、砂糖の様な濃縮した甘さと柑橘のビターが膨らみ、余韻は短くサッパリとしています。味の傾向がサントリーと言うよりは、スコッチ感が漂うニッカっぽい味わいで、どことなく古い往年の雰囲気を醸し出しているのが面白いと思いました。
現行品と飲み比べてみましたが、味や香りの印象はまるで違い、現行品の香りはグレーンの要素が大きく、「バーボン」っぽいセメダイン臭を強く感じました。味についても、アルコールの刺激が強めで、単品で飲んでいる時は「まずまず」と言った印象でしたが、こうして飲み比べてみると明らかに「ハイボール」など割って飲んだ時に美味しく感じる様に特化したブレンドがされている事に気づきます。
「復刻版」には、シェリー原酒も多少使われているかと思いますが、同社の「オールド」ほどシェリー感は無く、どこかサッパリとしたドライな印象で「角瓶」らしさはありますが、同価格帯の「オールド」を選んだほうが無難だと思います。
まぁ、こういった類のボトルに求めるのは実質の味わいよりも「ロマン」みたいなものを求めるほうが正しいのかもしれませんね(汗)
ロックで飲んでみる
香り
- キャラメル、クッキー、ミント、レーズン、お香
味わい
- ビターとレーズン感、余韻で香るミズナラ!?
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。香りはキャラメルの甘さに、クッキーの香ばしいシリアル感があり、ミントの清涼感とレーズンの甘酸っぱくも熟成した果実香がうっすら感じます。
口に含むと、ストレートよりもしっかりとしたビターを感じ、レーズンの甘酸っぱいさが漂います。そして、余韻にかけて「サントリーらしさ」である「お香」の様なエキゾチックな香りが静かに広がり消えていきます。
氷を入れるとビターやレーズン、そしてミズナラ感のある余韻は「サントリー」を感じる味わいで良いと思いましたが、若干アルコールの刺激に雑味を覚えた部分が残念に思いました。まぁ、価格を考えれば仕方ないかな!?とは思います。
さて、現行品と比べた印象ですがコチラもストレート同様に「バーボン感」と「グレーン感」を強く感じます。「復刻版」はモルトの旨味を感じますが、現行品はグレーンが主体で「セメダイン臭」がどうしてもひっかかる印象を持ちます。これはこれでアリかもしれませんが、もう少しモルト感があっても良いのでは!?ないでしょうか。
ハイボールで飲んでみる
香り
- バニラ、キャラメル、レーズン、ピート
味わい
- フルーティーで香ばしく、ほろ苦い
感想
最後はハイボールで飲んでみます。「カクハイ」を世に浸透させた「角瓶」の復刻版ではどうなのでしょうか!?
香りは、キャラメルやバニラといったウッディさにレーズンの甘くも少し酸味を感じる薫りが漂い、そしてピートのアクセントが効いています。(いいぞいいぞ♪)
口に含むと、程よいウッディな甘さと穀物感、そしてレーズンの熟した果実感が広がり、アフターにかけてややピーティーな余韻が心地よいです。ベースにある味わいはサントリーですが、一つ一つの個性となる部分に、往年のスコッチ感があるところは非常に面白いと思いました。
一方で現行品の香りは、「グレーンを主体とするキャラメルやバニラといったウッディさ」はあるものの、ややセメダイン臭などのケミカルな要素も感じます。
しかし、実際に飲んでみるとスッキリとしてクリアな味わいで、炭酸との相性が良くゴクゴクと飲める爽快感は「角」ならではの飲み方であり現代にマッチした味わいに仕上がっていると思います。
まとめ
1937年、当時の味わいを再現した「角瓶 復刻版」を「現行品」と合わせてレビューしてみました。
実際に、当時の「元祖 角瓶」を飲んだわけではありませんので、どの程度再現されているのか!?疑問に感じる部分もありますが、「現行品」と比べてみると明確な違いを感じます。現行品はやはりハイボールに特化したブレンドになっていると思いますし、復刻版の方は「角らしさ」みたいな感じはありつつ、スコッチを学んで出来た「日本のウイスキー」の原点のような「古風」な感じがあります。
実際に飲んで「味わい」と値段を考えるとコストパフォーマンスに優れているとは思いませんでしたが、収集癖のあるウイスキーラヴァーにとっては、そこに「ロマン」を感じられるだけで価値が生まれます。単に、近い値段で美味しさだけを求めたら同社の「オールド」や「リザーブ」に軍配が上がると思います。
ですが、ウイスキーは「時間を飲む、飲み物」です。今あるジャパニーズウイスキーの先駆者達が作った当時の味わいを少しでも感じられたら・・・それで十分なのでは!?
最後までお読みいただきありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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