このウイスキーの特徴
このウイスキーについて
今回ご紹介するウイスキーは「アイラの巨人」と称されるシングルモルト「ラガヴーリン16年」です。
「ラガヴーリン」とはゲール語で”水車小屋のある窪地”という意味で、製造している「ラガヴーリン蒸溜所」はスコットランドのアイラ島にあります。
独特のヨード香やスモーキーフレーバーで有名なアイラ島のシングルモルト。その中でも「ラガヴーリン16年」は”アイラ最強”と言われるほどフルボディでとても重厚な味わいが特徴です。
スモークの度合いを数値化したフェノール値こそ、アイラモルトの中では普通かもしれませんが、独特の薬品臭や重厚感によって、アイラモルトの中で最もヘビーな味わいがする銘柄と言われています。
ひょっとしたら!?史上最もクセのあるウイスキーの一つかもしれません。
それでは、「ラガヴーリン蒸留所」について見ていきましょう。
ラガヴーリン蒸留所
創業は1816年、地元の農家で蒸留職人であった「ジョン・ジョンストン」によって設立されました。
彼の死後、何度か買収があり1889年に「ジェームズ・ローガン・マッキー」によって運営されますが、このマッキー氏の買収がきっかけとなり、後に有名なウイスキーブランドが誕生します。
ホワイトホースの重要なキーモルトである「ラガヴーリン」、両者は切っても切れない関係にあるんですね!!
ラガヴーリン蒸溜所の製法
ラガヴーリン蒸溜所は、仕込み水に近くにある湖「ソラン湖」の湧き水を使用しています。
湿地帯でもある蒸溜所付近のピート層をくぐり抜けた水は、ラガヴーリンの個性を育む重要な要素となっています。
この仕込み水を使い、糖化を行う発酵槽は21,000リットル、ステンレス製で16時間もかけてピートを焚いた麦芽は38ppmと、ピーティーに仕上がっています。
そして、発酵槽は木製で10基あり、55時間という時間をかけアルコール9%程度の醪が完成します。この時間をかけて造られる醪がラガヴーリンの重厚な味わいの秘訣だと言われています。
そして、出来上がった醪は「蒸留」というウイスキー造りのクライマックスを迎えます。
ラガヴーリン蒸溜所には、ストレートヘッドタイプの蒸溜器が4基あり、初溜釜2基と再溜釜2基の構成になっています。
特徴的なラインアームは下向きになっていて、初溜に5時間、再溜に10時間もの時間をかけることでラガヴーリンの重厚なスピリッツが生まれます。
熟成に使用される樽はアメリカンオークのバーボン樽、ヨーロピアンオークのシェリー樽が使われ”力強い味わい”と”エレガントさ”が見事に融合した味わいに仕上がります。
しかし、公式では「16年にはシェリー樽は使っていない」と言われており、シェリー樽由来の要素が間違いなくある為に、愛好家の間では「セカンドフィル以降の穏やかな性質の樽を使っているのではないだろうか!?」と推測されています。
シェリー樽熟成のゴムっぽい香りや硫黄感もあるので、全く使っていないとは思えません。謎は深まるばかり・・・!?
何はともあれ、「アイラの巨人」と称される銘柄であることは間違いなく、スタンダードで16年熟成というスペックは飲み手の期待感を高めてくれます。
今回も、3種類の飲み方で忖度なくレビューしていきます!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- ヨード、ピート、磯、薬品、オレンジ、シトラス、ゴム、硫黄、タール、土、灰、チョコレート
味わい
- 滑らかでとてもオイリー、ふくよかな果実香、アフターにBBQスモーク
感想
では、まずストレートから飲んでみます。香りはアイラモルトの要素がたっぷりと感じられ、ヨード、ピートスモーク、磯などの海の香り。更に薬品、又は理科室の化学を感じる臭いが伴っています。
また、オレンジやシトラスの爽やかな香りにシェリー樽由来のゴムっぽさがあり、硫黄やタール、土、灰に混じってダークチョコの様な甘い香りもします。
口に含むと、非常に滑らかな舌触りで粘性のあるオイリーな感じは16年熟成の賜。とても重厚感のある味わいは、他のアイラモルトにはない厚みを感じます。中盤から硫黄と果実の爽やかさが膨らみ、アフターにかけてビターがジワっと滲みてきます。
余韻は長く、肉っぽいジューシーなスモークが鼻腔に残ってゆっくりと消えていきました。
独特のスモーキーさと薬品臭、そしてエレガントで重厚なフルボディの味わいは唯一無二。他のアイラモルトに比べて価格も張りますが、それに見合った味わいがある銘柄だと思います。
ロックで飲んでみる
香り
- スモーク、ピート、硫黄、ゴム、オレンジ、灰、土
味わい
- ビター、クリーミーな甘さ、余韻にBBQスモーク
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。香りはピーティーなスモークに硫黄やゴム、オレンジが混じり灰や土の香りがします。
口に含むと、口当たりは柔らかく終始ビターが支配します。しかし、中盤から麦の甘さでしょうか!?クリーミーな優しい甘さが広がって、アフターにかけBBQスモークと続きます。時折、シェリーの果実感などもあり冷やされていても余韻は長く、強い酒精と改めて感じました。
独特の香味は間違いなくシェリー樽原酒によるものだと思います。ロックでの味わいは「アードベッグ ウィービースティー」っぽさがあり、ピーティーさをシェリーの硫黄やゴム感でブーストされているような印象を持ちました。
ハイボールで飲んでみる
香り
- スモーク、ピート、硫黄、ゴム、シトラス
味わい
- 麦の甘みとビター、ミーティー、アフターにBBQスモーク
感想
最後はハイボールで飲んでみます。ラガヴーリンをハイボールで頂く・・・、正直初めての経験です(笑)
香りはピーティーなスモークフレーバーが先行して感じられ、他には硫黄やゴムと続きます。ハードな印象の中にもシトラスの爽やかさがあり、ハイボールにしてもポテンシャルの高いモルト感を醸し出しています。
口に含むと、麦のほんのりと甘い味わいがして柑橘の様なビターが追いかけてきます。中盤から肉っぽいミーティーさもあり、余韻はBBQスモークの残り香が静かに消えていきます。
アイラの強烈な個性と、シェリー樽由来のエレガントな雰囲気が一体となり、炭酸の刺激と相まって重厚なハイボールが出来上がります。何かと合わせるというより、単体でじっくり味わったほうが良さがわかるハイボールだと思いました。
まとめ
アイラ最強と謳われる「ラガヴーリン」の16年をレビューしてみました。オフィシャルでは「シェリー樽原酒は使っていない」と言われていますが、味わいには明確にシェリー樽原酒の特徴が現れています。硫黄やゴムチューブの様な香りはまさにそれです。
しかし、独特の薬品臭やとっつきにくいと言われるアイラ特有のスモーキーでヨーディーな香りを無視してでも、16年というたっぷりの熟成年数からくる芳醇なフルボディの味わいは好きになったら抜け出せなくなる中毒性があります。
近年のウイスキーブームにより原酒が枯渇し、一時は終売とまで噂されましたが、ホワイトホースをはじめとするブレンデッド用にも供給をしなくてはならない為、もしかしたら今後オフィシャルのリリースは下位ボトルの8年がスタンダードになる可能性もあります。煽るつもりはありませんが、「あるうちに飲んでおけば・・・」とならないためにも是非、一度試してほしい銘柄の一つです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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