ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所では、蒸溜所限定で販売されている「構成原酒シリーズ」というウイスキーがあるのをご存知ですか!?
宮城峡の「構成原酒シリーズ」は、宮城峡蒸溜所のショップで限定販売されている特別なボトルで、宮城峡の個性豊かなモルト原酒の味わいタイプ別に楽しむことができます。
シリーズには、「シェリー&スイート」「フルーティ&リッチ」「モルティ&ソフト」という3つのタイプがあり、「シングルモルト宮城峡」は、これらの個性的な原酒の要素をブレンドして作られています。
かつては、このシリーズは12年ボトルとして販売されていましたが、現在は原酒不足の為に”ノンエイジ使用”となっています。また、このシリーズは原酒の個性を余すこと無く味わえる”カスクストレングス”でボトリングされており、アルコール度数は全て55%とモルト通にも納得出来る仕様となっています。
宮城峡のモルト原酒の個性を一つ一つ味わえるなんて、とても魅了的なシリースですね!!
その中から、今回は最もエレガントな味わいといわれる「シェリー&スイート」のレビューを行っていきます!!
「シェリー&スイート」を簡単にまとめると
宮城峡蒸溜所について
日本のウイスキーの父である『竹鶴政孝』が北海道の余市に第一の蒸留所となる「余市蒸溜所」を操業させてから約30年が経ち、新たな蒸留所建設の計画が立てられました。竹鶴氏は「異なる蒸溜所で生まれた複数の原酒をブレンドすることで、ウイスキーはより味わい深く豊かになる」という信念を持ち、山形県との県境に近い”宮城峡”を訪れました。
自然豊かなこの土地には、広瀬川の支流である新川(にっかわ)が流れ、山々が育んだ良質な水が得られるウイスキー造りに適した土地です。竹鶴は新川の水で手持ちのブラックニッカを水割りにして試飲し、その味わいに確信を得て蒸溜所の建設を決めました。
スチームによる間接蒸溜について
「宮城峡蒸溜所」では、「余市蒸溜所」とは異なる蒸溜方法が採用されており、その違いがあります。
まず、余市ではストレート型の蒸留器が使用されていますが、宮城峡ではくびれのあるバルジ型が採用されており、ラインアームは上向きです。
さらに、宮城峡では蒸溜方式も異なります。余市では石炭直火蒸溜が行われていますが、宮城峡では間接式のスチーム蒸溜が行われています。この方法では、温度が約130℃と直火蒸留よりも低くなり、ゆっくりと蒸溜が行われます。蒸気と香味成分が何度も繰り返し釜に戻ることで、洗練された香りと味わいが凝縮されていきます。
余市の石炭直火蒸留の様な力強いモルトとは対照的に、宮城峡では香味が濃縮されるので華やかで優しい味わいのモルト原酒が生まれます!!
蒸溜所方法だけでなく、ポットスチルの形状やラインアームの向きによっても生まれてくる原酒に違いが出来るのもウイスキーならではですね!!
宮城峡限定シングルモルト「シェリー&スイート」
宮城峡蒸溜所限定のシングルモルト「シェリー&スイート」はその名が示す通り「シェリー樽原酒」をを主にボトリングした華やかな宮城狭モルトの特徴を全面に出したシングルモルトになります。
ウイスキーの熟成に使われる樽の種類は様々ですが、主に「バーボンウイスキー」に使われた「バーボン樽」とスペインのアンダルシア地方の酒精強化ワイン「シェリー」の熟成・輸送に使われた「シェリー樽」での熟成が一般的で、この「シェリー&スイート」の色味が赤いのは、シェリー樽熟成ならでは色味と言えるでしょう。
また、果実由来の華やかさとフルーティーな味わいは心地よく感じやすいものです。「スイート」は”甘い”という意味もありますが、個人的には”心地よい”という意味に捉えています。
宮城峡の華やかな香りにエレガントさも加わった仕様ということですね!!
ただ、加水をしていない「カスクストレングス」ですので、キツイと思ったらお水を加える事をおすすめします!!(度数55%)
では、今回もストレート、ロック、ハイボールの3種類の飲み方で味と香りを確かめていきましょう!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- レーズン、りんご、ドライフルーツ、ハチミツ、ビターチョコ、エルダーフラワー、硫黄、ゴム
味わい
- 濃厚なドライフルーツ、スパイシー
感想
まずは、ストレートから飲んでみます。
香りは、圧倒的なシェリー樽熟成の香りで満ち溢れています。レーズンやドライフルーツの熟した赤い果実、ニッカらしいリンゴ、ハチミツ、香ばしいビターチョコに花やエルダーフラワーのようなフローラル感とシェリー樽熟成ならではのサリファリーな硫黄やゴムっぽさを感じます。
口に含むと、さすがにカスクストレングだけあってパンチのある味わいでレーズンやリンゴのフルーティーな香りが口いっぱいに広がります。そして、スパイシーさが一気に加速して、ブドウのタンニン感とスパイシーな絡みが余韻となってゆっくり消えていきます。
全体の味わいはスパイシーな傾向にあって、「スイート(甘い)」ではありませんが、グレンファークラス105のように力強く、濃厚なシェリー樽原酒の味わいが楽しめます。
加水してみると
ここでアルコールの刺激を緩和するために少し加水してみました。
香りの基本的な表情は変わりませんが、ストレートに比べるとリンゴやハチミツ、硫黄が少し前に出てきて、アルコールでマスクされていた部分がクッキリと感じ取れるようになりました。また、先程は気づかなかったウエハースのような香ばしさと穀物の甘さみたいなものが感じられます。
味わいはブドウのタンニンとスパイシーが主で、そのまま飲むよりもエレガントな風味が感じられます。ハイランドのシェリー樽熟成モルトと真っ向勝負しても勝てる素晴らしい味わいに仕上がっていると思いました。
シェリー樽の特徴がしっかりと堪能出来る味わいでした。本場スコッチと比べても遜色のない濃厚な味わいが楽しめます!!
ロックで飲んでみる
香り
- 焼きリンゴ、レーズン、ハチミツ、花、硫黄、ゴム
味わい
- 赤い果実、ビター
感想
次はオンザロックで飲んでみます。
香りは、焦がしたような風味が印象的で焼きリンゴを連想する香りにレーズンやハチミツ、フローラルな花に硫黄やゴムも絡んできます。
口に含むと、ベリーやサクランボ、リンゴといった甘酸っぱさが口に広がり、焦げた感じの香ばしさとビターがじわじわと膨らんできます。途中からスパイシーも追いかけてきて、余韻ではビターとスパイシーがゆっくり消えていきます。
驚くくらいに香ばしく焦がしたような風味が生まれ、宮城峡ではなく余市では!?と思えるほどでした。力強く、果実感溢れる味わいはエレガントで気品にあふれています。
ストレートを試してから、ロックで飲むと初心者の方でも味わいの変化に驚くと思います。甘酸っぱい赤い果実を連想する味わいはクセになりそうです。
ハイボールで飲んでみる
香り
- 焼きリンゴ、レーズン、ハチミツ、プラム、硫黄、ゴム
味わい
- 爽やかなビター感
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りは、焼きリンゴ、レーズン、プラムと続き、ハチミツに硫黄とゴムが感じ取れます。
口に含むと、軽く焦げた感じがとても香ばしくブドウの甘酸っぱさが広がります。そしてすぐにビターが膨らんできて、甘酸っぱさと絡みながら、爽やかな風味が余韻にまで続いていきます。
ただフルーティーなだけでなく、中盤から追いかけてくるビターが甘酸っぱい果実の風味を引き立ててくれます。エレガントな香りとニッカの力強い風味が調和した贅沢な味わいのハイボールです。
シェリー樽熟成のモルトはハイボールに向かない傾向にありますが、これは違います!!ニッカの香ばしい風味がマッチしてとてもエレガントな味わいが楽しめました!!
まとめ
宮城峡蒸溜所限定シングルモルト「シェリー&スイート」のレビューでした。
何かと持て囃される「シェリー樽熟成」ですが、基本的にはバーボン樽熟成の方がハイボールとの相性もよく、飲みやすい傾向にあると個人的には思っています。
しかし、この「シェリー&スイート」はシェリー樽熟成の本質と、ニッカの力強いハイランドモルト感が見事に融合して、飲み方を選ばない味わいに仕上がっていると思いました。
一際目を引く「真紅のラベル」は蒸溜所内でも特別感を解き放っていますが、見た目に負けないエレガントな味わいがギュッと詰まった「シェリー&スイート」はおすすめの1本です。
ただ、カスクストレングスですので強いアルコール度数ということを忘れないで下さい!まずは一舐めだけしてみて、キツイと思ったら加水やロック、ハイボールで楽しんでみましょう!
ニッカのシェリー樽モルトの魅力を存分に堪能できますよ!
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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