ニッカウヰスキー「余市蒸溜所」では、蒸溜所限定で販売されている「構成原酒シリーズ」というボトルがあるのをご存知ですか!?
余市の「構成原酒シリーズ」は、余市蒸溜所のショップで限定販売されている特別なボトルで、余市の力強いモルト原酒の味わいをタイプ別に楽しむことができます!!
シリーズには、「シェリー&スイート」「ウッディ&バニラ」「ピーティ&ソルティ」という3つのタイプがあり、「シングルモルト余市」は、これらの個性的な原酒の要素をブレンドして作られています。
かつては、このシリーズは12年熟成したボトルとして販売されていましたが、現在は原酒不足のため、ノンエイジ使用となっています。また、このシリーズは加水を行わないカスクストレングスでボトリングされており、アルコール度数は全て55%とモルトファンにもおすすめ出来る仕様となっています。
余市のモルト原酒をタイプ別に味わえる魅力的なシングルモルト、それが「構成原酒シリーズ」です!!
余市限定「シェリー&スイート」はこんなウイスキー
ウイスキー属性 | シングルモルト |
産地(メーカー) | 日本(ニッカウヰスキー) |
蒸留所 | 余市蒸留所 |
味わい | エステリーでクリーミー |
飲みやすさ | ★★★★☆☆ |
おすすめの飲み方 | ストレート・ハイボール |
個人的感想 | マッカランにも引けを取らない |
余市蒸溜所について
日本ウイスキーの父である『竹鶴政孝』は、当時在籍していたサントリーの「山崎蒸溜所」を退所し、自身の求めるウイスキーの味わいを実現するために、”理想の地”を探していました。
ウイスキー造りにおいて大切な”冷涼な気候”や大麦の乾燥に用いる”ピート”の採取が可能で、自身がウイスキーの研修を行ったスコットランドの風土に類似している北海道余市町にニッカウヰスキーを設立します。
ウイスキーを販売出来るようになるまでは、最低でも3年ほど熟成の期間が必要になります。その間、竹鶴は余市の名産品である”リンゴ”をジュースにして販売し、会社の存続を確保したそうです。そして、これこそが、現在の社名でもある「ニッカウヰスキー」の前身「大日本果汁」であり、ニッカは「ニホンカジュウ」の略語から命名されました。
次は余市蒸溜所の特徴についてご紹介致します!!
世界的に希少な「石炭直火蒸溜」
「余市蒸溜所」では、今でも蒸溜方法に石炭による直火蒸留を採用しています。
竹鶴自らがスコットランドで学んだ蒸留方法に習い、余市蒸溜所では「石炭」による直火蒸留を今でも行っています。
本来であれば、効率や安全面から考えても「スチーム式」や「ガス式」へ転換するべきところを「余市蒸溜所」ではあえて「直火」それも「石炭」にこだわります。
その理由として、石炭による圧倒的な火力により得られるモルトの力強さと香ばしさがあります。直火で蒸留すると、蒸留釜の底ではもろみに焦げが生じます。この焦げこそが、香ばしいモルトを生み出し、同時に力強くコシのある味わいが生まれるのです。
非効率であっても創業者:竹鶴の理想と情熱が今もなお受け継がれているわけです。
現在では貴重な「石炭直火蒸留」は竹鶴政孝の情熱への証なんですね!!
余市蒸溜所限定シングルモルト「シェリー&スイート」
余市蒸溜所限定「シェリー&スイート」は、「余市蒸溜所」でのみ販売されているシングルモルトで、石炭直火蒸留によって生み出された余市のニューメイクが、シェリー樽によって熟成されエレガントな香りと味わいに変化します。
竹鶴政孝が描いた理想とするウイスキーの味わい、その1ピースを楽しめるのも「構成原酒シリーズ」。その中で、”シェリー樽”による熟成の味わいに焦点をあてたのが「シェリー&スイート」です。
シェリー樽で熟成した余市モルトとは一体どんな味わいなのでしょう!?
エレガントなイメージが先行しますが実際に飲んでみないと分からないのもウイスキーの奥深さですね!!
では、今回もストレート、ロック、ハイボールの3種類の飲み方で味と香りを確かめていきましょう!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- レーズン、ブドウ、黒糖、キャラメル、ダークチョコ、焦げた木片、硫黄、ゴム
味わい
- 力強く濃厚なシェリー、香ばしくダークな焦げ感
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。
香りは、レーズンやブドウの濃厚なシェリー感に黒糖やキャラメルの甘い香りがまとわりついています。そしてダークチョコや焦がした木片の香ばしさに、わずかながら硫黄やゴムっぽさも感じられます。
口に含むと、熟した濃厚な果実感が口いっぱいに広がり、ダークチョコのほろ苦く香ばしい香りが広がってきます。そして、スパイシーさが追いかけてきて、ブドウのタンニンとビター、スパイシーが重なり、重厚でエステリーな余韻が長く続きます。
味わいや雰囲気は「グレンファークラス105」っぽい感じもしますが、濃厚さや力強さはこちらの方が上です。どちらもカスクストレングスならではの味わいがありますが、余市の直火蒸留からくるパワフルなモルト感は唯一無二かもしれません。
加水してみると
ここでアルコールの刺激を緩和するために少し加水してみました。
香りは、レーズンやブドウのシェリー感は変わらずに残っていますが、甘さに変化が生じました。黒糖の香ばしい甘さからハチミツの滑らかな印象に変化し、ハーブっぽいニュアンスとアーモンドなどナッツっぽい要素も感じられます。
口に含むと、ストレートの時よりもビターが増してタンニンの渋みに瑞々しさが加わりました。途中からスパイシーさが膨らみ、ブドウ由来のフルーティーさと絡みながらスパイシーでわずかに硫黄っぽさを感じる余韻が長く続きます。
余市らしい力強さにシェリー樽のエレガントな風味がとても良く馴染んでいます。本場スコッチに全く負けていません。これぞ余市!これぞシェリー樽熟成の味わいです!!
ロックで飲んでみる
香り
- 黒糖、ハチミツ、バニラ、レーズン(ラムレーズン)、焦げた木片、アーモンド
味わい
- 香ばしいビター
感想
次はオンザロックで飲んでみます。
香りは、黒糖やハチミツにバニラが絡んで甘さが引き立った印象があります。また、レーズンも少しクリーミーで、バニラの香りと調和して”ラムレーズン”のような変化があります。焦げた感じのロースト感や香ばしいアーモンドも変わらずあり、氷を入れても力強さは失われません。
口に含むと、レーズンの香りにビターが広がってきます。そしてブドウのタンニンが追いかけてきて、スパイシーな風味と一緒にゆっくりとレーズンの香りが薄れていきます。
氷を入れて加水が進むと、ビターはさらに強くなり、ブドウのネガティブな要素がより感じられるようになりました。シェリー樽の華やかな甘さは冷やして飲むことと相性があまり良くないのかもしれません。
ブドウの渋み(タンニン)が慣れている人であれば問題ないですが、個人的にはやや飲みにくい印象がありました。
ハイボールで飲んでみる
香り
- ブドウの皮、レーズン、バニラ、キャラメル
味わい
- ジューシーなブドウと香ばしい香り
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りは、ブドウを思わせるジューシーさとレーズンの熟成感にバニラやキャラメルが絡んでいます。
口に含むと、ブドウの程よい酸味と甘みが口いっぱいに広がり、底の方からタンニンが現れてきます。そして、香ばしいモルト感とエレガントなシェリー香が交差しながら、余韻はスッと消え、僅かなタンニンが舌上に残ります。
ハイボールにすると、味わいは一気にジューシーでエレガントな雰囲気に変わります。しかし、どこかに香ばしさがあり、余市モルトの存在感を忘れることはありません。ハイボールとの相性の良さが一役買っている印象がありました。
シェリー樽のエレガントな香り、それに寄り添うように余市の香ばしさを感じるハイボール!!
まとめ
余市蒸溜所限定「シェリー&スイート」のレビューでした。
過去には同じ石炭直火蒸留を行っていたグレンファークラスにも通じる力強さとシェリー感があり、本場スコットランドのシングルモルトウイスキーに匹敵する味わいです。
竹鶴政孝が追い求めた理想が現実のものとなり、それを超えていく唯一無二の味わいは余市という理想の地で今も造り続けられています。
北海道への交通手段は様々で、季節によっては少しハードルが上がってしまいますが、ウイスキーファンなら一度は行ってみたい余市蒸溜所です。そこでしか手に入らない希少なモルトウイスキーは期待を裏切らず、素晴らしい味わいでした!
シェリー感とは何かという疑問に120%で応えてくれるシングルモルト、それがこの「シェリー&スイート」です。
(カスクストレングスですので、強いアルコール度数であることを忘れずにください!まずは一口だけ試して、強すぎると感じたら水割りやロック、ハイボールで楽しんでみましょう!)
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「グレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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