このウイスキーを簡単にまとめると
宮城峡蒸溜所について
1969年の設立された「宮城峡蒸溜所」は、宮城県仙台市の作並という県境付近にあります。この場所に蒸溜所を建設した目的は、ニッカウヰスキー最初の蒸溜所である「余市蒸溜所」とは違った性質の原酒を造り出す為でした。海辺の「余市蒸溜所」とは異なり「宮城峡蒸溜所」は四方を山々に囲まれ、蒸溜方法もスチームによる間接式蒸溜を行っています。また、蒸留器の形状も余市とは異なり、丸みを帯びたバルジ型のものが使用されているのも特徴です。
蒸溜方法や蒸留器の形状、立地条件の違いによって「宮城峡蒸溜所」では華やかでライトな味わいのモルト原酒が生まれます。
また、偶然ですが宮城峡蒸溜所の近くを流れる川の名前が「新川(にっかわ)」であり、それが仕込み水として利用されているという運命的な関係があるのも興味深いところです。
良いブレンデッドウイスキーを造るには異なった個性のモルト原酒は不可欠!!
更に、宮城峡蒸溜所ではモルトだけでなくニッカならではのグレーン原酒の製造も行っています!!
宮城峡で造られるグレーン原酒
ブレンデッドウイスキーを造るのに欠かせないグレーン原酒。その役割はモルトの個性を調和させるためにあります。ニッカウヰスキーが販売するブレンデッドウイスキーには、宮城峡蒸溜所で製造されるカフェグレーンと呼ばれる原酒が使われています。
このカフェグレーンは、19世紀イーニアス・コフィによって開発された連続式蒸留機(カフェスチル)を使用して造られています。カフェスチルを稼働させているのは世界的にも珍しく、他の連続式蒸留機に比べ生産能力は劣っていますが、原料の特性を生かした風味豊かなグレーン原酒が生まれます。
昔ながらの製法にこだわり真のウイスキー造りを目指し続けるニッカウヰスキー。生産性や効率にとらわれず、グレーンウイスキーも非常に手間をかけて造られています。
素材の風味を活かし、良質なグレーンを造るために手間暇を惜しまない創業者「竹鶴政孝」のスピリッツが現在も受け継がれています。
カフェ式連続蒸留器(宮城峡蒸溜所)
「宮城峡蒸溜所」には世界でも現存数の少ない「カフェ式連続蒸留器」が設置されています。この蒸留器はもともと兵庫県の西宮工場にあったものを宮城峡に移設したものです。先に述べたように、カフェ式連続蒸留器は素材の風味を引き出すために使用され、グレーン原酒の製造に適しています。竹鶴氏の信念を曲げず、ウイスキー職人たちのこだわりでもあるため、効率を求めずこの蒸留器を使用しているのでしょう。
補足ですが、「カフェ式」の綴りは「coffey」と表記します。本来であれば「コフィー」と読むはずが、当時のニッカはこれを「カフェ」と読んでいました。そして、読み間違いのまま現在でもニッカでは「カフェ」と呼んでいます。非常に愛着があって微笑ましさがあるのもニッカらしいところです。
読み間違いを変えないのも「こだわり」の証なんでしょうか!?
読み間違いをそのまま使っているケースは他にもあります!アニメで有名な「ジブリ」はイタリア語の「GHIBLI(ギブリ)」の読み間違いがそのまま社名になりました!!
蒸溜所限定「ウッディ&メロウ」とは
ニッカウヰスキーの蒸溜所で限定販売されている「ウッディ&メロウ」は、宮城狭蒸溜所が誇る「カフェスチル」で蒸溜されたグレーン原酒を100%使用したシングルグレーンウイスキーです。
非効率ながらも風味を生かした連続蒸溜を行える「カフェスチル」は、原料となる穀物由来の甘さや香ばしさが活かしたグレーン原酒を造ることが出来ます。
1960年台の西ノ宮時代から稼働を続け、現在の宮城狭蒸溜所でもグレーンウイスキーに限らず、カフェモルト、カフェジンなど素材を生かした蒸溜を続けています。
今では希少となったカフェスチルで蒸留された「グレーン原酒」を、カスクストレング使用というダイレクトな味わいを楽しめるのも「ウッディ&メロウ」ならでは!!
シングルグレーンウイスキーも少ないのに、カスクストレングスというのはとても魅力的ですね!!
カフェスチルの味わいを堪能できる希少なボトルということですね!!
それでは、今回もストレート、ロック、ハイボールの3種類の飲み方でレビューをしてみたいと思います!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- バナナ、バニラ、キャラメル、カカオ、生クリーム、ウエハース、花
味わい
- 甘く軽やか、スパイシーな余韻
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。
香りは、バナナやバニラ、キャラメルといった甘くウッディな香りがグラスいっぱいに広がっています。また、カカオやウエハースといった香ばしい香りに、花を連想するフローラル感も感じられます。
口に含むと、カスクストレングスとは思えないほど滑らかで、香ばしさとバナナの甘くウッディな香りが広がります。そして、オークの香りとスパイシーさが追いかけてきて、ほろ苦いカカオとスパイシーが互いに絡みながら余韻で長く香ります。
アルコール度数55%とは思えない滑らかさと、樽の影響を素直に受けたウッディな香りと甘さがあって物足りなさはありません。むしろ、下手なモルトウイスキーよりもコクが有りクセがないので気兼ねなくゆっくりと楽しむことが出来ます。
カスクストレングスのシングルグレーンという国内では稀なスペック!!甘く香ばしいカフェグレーンの味わいは病みつきになります!!
加水すると
次は、加水をして飲んでみます。
香りは、変わらずバナナ、バニラ、キャラメルとあってカカオにウエハースや生クリーム、花っぽいフローラルも感じられますが、幾分甘さが強調された感じを覚えます。ほろ苦さやフローラルが奥まってバナナ、バニラ、キャラメルが前に出てきた印象です。
口に含むと、滑らかでウッディな香味が口に中で膨らみ、スパイシーとビターが追いかけてきます。余韻はオークの香りにスパイシーを感じますが、不思議と加水したほうがピリピリとしたアルコールの刺激を感じました。
加水すると甘さが目立ちますが、アルコール感も引き立ってしまいました。加水する水を別なものにすると良かったのかもしれません。
ロックで飲んでみる
香り
- オーク、バナナ、バニラ、カカオ、ウエハース、オガクズ、花
味わい
- ほろ苦く、香ばしいビター
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは、ウッディなオークの香りにオガクズっぽい木の香りが印象的で、バニラやバナナといった甘い香りもありますが、カカオの風味にマスクされていて奥まった印象があります。
口に含むと、ウッディなオークの香りが口の中に広がってビターが追いかけてきます。その後、スパイシーが膨らみ、ほろ苦いビター感が余韻となって静かに消えていきます。
ストレートよりもオークの香りが目立ち、味わいはビターな傾向に変化。キリッとしたニュアンスに柔らかく香ばしいグレーンの味わいがして、全体の印象は分離しているかのような感じに思えました。
ビターと甘くウッディな味わいを繋ぐ要素が乏しく、全体の印象はほろ苦い感じでした。それでも、市販のグレーンウイスキーの中では味わい深さはダントツ!!
ハイボールで飲んでみる
香り
- バニラ、キャラメル、カカオ、花、オガクズ
味わい
- フローラルでほろ苦い余韻
感想
最後にハイボールで試してみます。
香りは、バニラやキャラメルにカカオのほろ苦さが加わり、バーボンウイスキーのような花を思わせるフローラルな香りがします。また、香りの隅にオガクズっぽい木の香りも感じられます。
口に含むと、メロウというボトルネームにふさわしい滑らかさがありスルッと口に中に溶け込みます。ほんのり甘く香ばしい香りが広がると、花を思わせるフローラルとビターが追いかけてきて、ウッディな香りと共に消えていきます。
バニラ香に花を思わせるフローラル、ハイボールにするとバーボンウイスキーにも似た側面が顔を出し、甘く香ばしい味わいと相まってとても飲みやすく、香り高いハイボールを楽しめました。
木や花の香りが炭酸とマッチし、甘く香ばしい味わいを引き立ててくれます。グレーンウイスキーは本当にハイボールによく合うんです!!
まとめ
ニッカウヰスキー蒸溜所限定販売シングルカフェグレーン「ウッディ&メロウ」のレビューでした。
グレーンウイスキーは、モルトウイスキーに比べて主張が穏やかな為に「サイレントスピリッツ」といった言われ方をします。この「ウッディ&メロウ」も例外ではなく、際立った味の個性という意味ではおとなしい印象がありますが、穀物由来の香ばしさ、モルトウイスキーにはない軽やかな口当たりなど、グレーンならではの味わいを楽しむことが出来ます。
また、グレーンウイスキーの中ではシングルグレーン(一つの蒸溜所で造られたグレーン)であることや、カスクストレングス(原酒に水を加えない)という仕様である事は非常に稀で、グレーンウイスキーの美味しさがそのまま詰まった希少な1本であることに間違いありません。
ブレンデッドウイスキーの製造には欠かせないグレーンウイスキー。手持ちのモルト原酒に好みの量をブレンドして、オリジナルのブレンデッドウイスキーを造ることも出来てしまうでしょう。
ニッカの蒸溜所を訪れた際は、「ウッディ&メロウ」も視野に入れた方が、ウイスキーライフの幅が広がる事になるでしょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
コメント