このウイスキーを簡単にまとめると
このウイスキーについて
ロイヤルロッホナガー蒸留所の歴史
「ロッホナガー」とは、ディー川に沿ってそびえる1156メートルの山の名前であり、ゲール語で「岩の露出した湖」という意味を持っています。
1845年に誕生したロイヤルロッホナガー蒸溜所は、実はそれ以前から存在していた蒸溜所の後継です。18世紀終わりから、ディー川周辺はウイスキー密造が盛んで、数々の密造業者が活躍していました。
最初の合法蒸溜所は「グレン・フィアダン」という名前で、これが後のロイヤルロッホナガーの前身となります。1823年に元違法蒸留業者のジェームス・ロバートソンによって建てられましたが、わずか3年後には密造業者達の反感を買い、不審火によって焼失してしまいます。
しかし、ジェームス・ロバートソンはめげずに新たにロッホナガー山近くに「ロッホナガー蒸溜所」を設立します。しかし、1841年に再び火災に見舞われ、廃業せざるを得ませんでした。
その後、ジョン・ベッグがジェームスの意思を継ぎ、1845年に「新ロッホナガー蒸溜所」を設立しました。初めは「ロッホナガー蒸溜所」として稼働していましたが、3年後の1848年に隣接するバルモラル・エステートがヴィクトリア女王によって購入され、夏の離宮として利用されるようになりました。
この機会を利用し、ジョン・ベッグは女王に蒸溜所の見学を提案。女王一家が実際に蒸溜所を見学したことで、ロイヤルワラント(勅許状)が授与され、蒸溜所は「ロイヤル・ロッホナガー蒸溜所」として名を馳せました。
女王一家は特にロッホナガーのモルトを愛し、女王はボルドーワインに数滴垂らして楽しんでいたと伝えられています。
尚、バルモラル城に急に訪れるエリザベス女王にも最高のシェリーモルトを提供できる体制が整えられていたそうです。
また、蒸留所は1916年にオーナーが変わり、ジョン・デュワー・アンド・サンズに売却されました。そして、1925年にDCL社に吸収合併され、現在はディアジオの傘下で経営されています。
2度の火災に遭いながらもロッホナガーの灯火は消えること無く受け継がれてきたんですね!!
エリザベス女王にも振る舞われたモルトの味わいがとても気になります!!
ロイヤルロッホナガー蒸留所の製法
ロイヤルロッホナガー蒸溜所では、製造過程において厳選された麦芽が使用されます。これらはローズアイル産であり、ノンピートな特性を持っています。1週間あたり約22トンの麦芽が丹精込めて使われることで、優れた品質のウイスキーが生み出されます。
製造過程において欠かせないのが、ロッホナガー山麓の湧水です。この清冽な水が、ウイスキーの仕込みに使用されます。この湧水の恵みにより、ウイスキーには特有の豊かな風味が宿ります。
発酵はカラ松製の発酵槽1基とオレゴン末製の発酵槽2基の計3基で行われます。約110時間という長い時間をかけて、麦芽が発酵し、独特の味わいを形成します。
蒸溜器は小型でありながら、高品質なウイスキーの製造に欠かせません。初留と再留の蒸溜器が使われ、ストレートヘッドタイプを採用しています。
製造工程の最後には、アルコール度数70%のニュースピリッツが精製され、63.5%に調整されて樽詰めされます。この丹念な工程により、最高品質のウイスキーが完成します。
ロイヤルロッホナガー蒸溜所は、年間50万リットルのアルコールを生産可能な能力を持ちながら、ディアジオ社の傘下にある蒸溜所としては非常に小規模です。週に約28樽が樽詰めされ、1週間敷地内の熟成庫で寝かされた後、他の場所の熟成庫へ移され、熟成が行われます。
ロイヤルロッホナガー12年
ロイヤルロッホナガー蒸留所のオフィシャルボトルとしては最もスタンダードな1本、熟成には主にリフィルのシェリー樽やバーボン樽が使用され12年以上のモルト原酒のみが使用されています。
リフィル樽を使うことによりファーストフィル樽の熟成とは違い、熟成は穏やかに進みます。これにより、優しくエレガントな味わいとなりロイヤルの名にふさわしいモルト原酒が出来上がるのです。
樽の個性がゆっくりと反映するリフィル樽の熟成、穏やかな味わいのウイスキーはこうして造られているんですね!!
スコットランドでも数少ない王室御用達の蒸留所の一つ「ロイヤルロッホナガー蒸留所」の12年熟成ボトル。香りや味わいがとても気になりますね!!
それでは、いつものようにストレート、ロック、ハイボールの3種類で味と香りをみていきましょう!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- アプリコット、ジンジャー、リンゴ、パイン、ハチミツ、バニラ、干し草、紅茶
味わい
- オイリー、甘く華やかで果実香る
感想
まずはストレートで飲んでみます。
香りは、甘く華やかで、アプリコットやリンゴ、パイナップルなどの果実の香りにジンジャーのスパイス、そしてハチミツやバニラの甘い香りがします。また、オークの香りに混じって干し草や紅茶のような発酵感もあります。
口に含むと、舌触りはややオイリーで、味わいは軽く華やかです。ハチミツの甘さと干し草が香り、紅茶の渋みを感じると、ジンジャーのスパイシーさが追いかけてきます。そしてハチミツが消えかかると同時に、干し葡萄の熟した果実に変わり、余韻がしばらく続きます。
ロイヤルの名を冠しているだけあって、とても華やかで気品に満ちた味わいです。引っかかりもなく、もちろんアルコール感もありません。これだけ華やかでフルーティーな味わいでしたら、初心者はもちろん、女性にも安心しておすすめできる味わいです。
とても飲みやすく全体的に甘い味わいのモルトです。ジンジャーのスパイシーさが心地よくデザートモルトとしてもオススメですよ!!
ロックで飲んでみる
香り
- リンゴ、レーズン、ハチミツ、黄桃、ベリー系の果実
味わい
- 果実とスパイシーの見事な調和
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは、リンゴやレーズン、黄桃などの果実の香りで満ち溢れていて、カシスやクランベリーなど赤いベリー系の香りもあります。また、ハチミツも感じられ、ストレートと同様に果樹園を彷彿とさせるとてもフルーティーな印象です。
口に含むと、果実の甘酸っぱさに麦の香ばしさが絡み、なんとも贅沢な味わいが広がります。そして、ハチミツと紅茶の香りと共に、スパイシーが膨らんできて、少しシトラスっぽいニュアンスのビターを感じながら、スッと消えていきました。
熟した果実の香りや甘酸っぱさ、僅かに感じるシトラスのビター、そして心地よいスパイシーさ。氷を入れて冷やしても崩れず、ビターな傾向に傾くこともないので、飲みやすく安心して楽しめます。
冷やすとビターになるウイスキーが多いですが、甘やかで果実感あふれる味わいが楽しめます。飲み方に左右されないというのはとても素晴らしいですね!!
ハイボールで飲んでみる
香り
- リンゴ、パイン、マンゴー、ハチミツ
味わい
- 黄色い果実とハチミツ
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りはリンゴにパイナップルやマンゴーなど黄色いトロピカルな果実香があり、それらを引き立てるよにハチミツが香ります。
口に含むと、ハチミツと果実の柔らかな甘さが広がり、レモンティーのような味わいに変化していきます。そして、プラムのような爽やかな酸味が駆け抜けると紅茶に似た味わいと黄色い果実の香りが重なって余韻はハチミツの甘さが残りサッと消えていきます。
飲みやすさで好評のある「グレングラント アルボラリス」と同等、またはそれ以上にも感じるフルーティーだ爽やかな味わいのハイボールです。味わいの中には「◯後の紅茶」にも似た香りもあって、ウイスキーであるのを忘れてしまいそうなほどでした。
優しいハチミツの甘さと絶妙に絡む黄色い果実、スッキリと甘やかで飲みやすい味わいのハイボールです!!
まとめ
『ロイヤルロッホナガー12年』のレビューでした。
王室御用達だけあって、とてもエレガントで果樹園のようなフルーティーさが特徴的でした。どこをとってもカドがなく、どんなスタイルでも飲みやすい非常に完成度の高いモルトウイスキーだと思います。
初心者や女性の方がウイスキーを始めるにはピッタリの味わいですし、モルト通であっても一通り飲んだ後の銘柄として十分なポテンシャルを持っています。
そして何より、王室御用達の蒸留所でありながら12年熟成のシングルモルトとしては求めやすい価格なのも魅力に一つです。年々高騰しているスコッチモルトの中で、ややマイナーではありますがメジャーな銘柄にも全く引けを取らない味わいと、果樹園のような香り高いフルーティーさは必見です。
リベット、フィディック、マッカランなど一通り試された方、とにかく飲みやすいシングルモルトを求めている方は是非、一度お試しください!!
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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