

こんにちは!ウイスキーの魅力と楽しさを伝えるカエル「sister-ley」です!
今回は、終売銘柄「グレンエルギン12年」の解説&レビューを行っていきます!
グレンエルギン12年は、スコットランドのスペイサイド地方で生まれたシングルモルトウイスキーです。そのエレガントで滑らかな味わい、フルーティーな香りが特徴の初心者にもおすすめなウイスキーです。
しかし、2025年1月下旬をもって、グレンエルギン12年は終売となることが発表され、長年グレンエルギンを愛飲してきたモルトファンからは惜しむ声が多く寄せられています。
この記事では、グレンエルギン蒸留所の解説はもちろん、終売が決まった「グレンエルギン12年」をテイスティングして、グレンエルギンの魅力をたっぷりとお伝えいたします!
これが最後のチャンスかもしれない、グレンエルギン12年の魅力をぜひ知ってください。
グレンエルギン12年を簡単はこんなウイスキー

カテゴリー | シングルモルトスコッチウイスキー |
産地 | スコットランド・スペイサイド |
蒸留所 | グレンエルギン蒸留所 |
アルコール分 | 43% |
内容量 | 700ml |
価格帯 | ¥14,000〜 |
飲みやすさ | ★★★★★☆☆ |
味わいの特徴 | バランスの取れたフルーティさと甘み |
おすすめの飲み方 | ストレート(水割りもオススメ) |
終売が決定したグレンエルギン12年

グレンエルギン12年は、スペイサイド地方のエルギン近郊にあるグレンエルギン蒸留所で生産されています。1898年に創設されたこの蒸留所は、設計者チャールズ・ドイグの手による伝統的なパゴダ屋根を持ち、地域の風景に溶け込んでいます。
このウイスキーの最大の特徴は、長時間の発酵とスローな蒸留工程によって生まれるフルーティーで華やかな香り、そしてアメリカンオーク樽で熟成されることで加わるバニラやトフィーの甘さです。アルコール度数は43%で、ストレートはもちろん、少量の水を加えてもバランスが崩れない点が魅力です。
しかし、この人気商品も2025年1月下旬をもって終売が決定しました。ディアジオ社のブランド戦略の一環として発表されたこのニュースは、ウイスキーファンたちに驚きをもたらしています。

グレンエルギンは昔から”通好み”なモルトウイスキーとして知られています。

今後は、ホワイトホースなどブレンデッドウイスキーへの原酒供給に専念し、シングルモルトのリリースは行なわないとアナウンスされました。
スペイサイドに佇むグレンエルギン蒸留所

グレンエルギン蒸留所の歴史
グレンエルギン蒸留所は、スコットランドのスペイサイド地方、エルギンの近郊に位置する蒸留所です。その歴史は、スコットランドのウイスキー産業が変革を迎えた19世紀後半にさかのぼります。
創設と初期の歴史
グレンエルギン蒸留所は、1898年に建築家であり蒸留所設計者として名高いチャールズ・ドイグによって設計されました。ドイグは蒸留所建築の分野で広く知られており、彼の設計はその効率性と美観で評価されています。特に、伝統的なパゴダ屋根は、蒸留所のシンボルとして知られています。
蒸留所は、創設者のウィリアム・シンプソンとジェームズ・キャリントンによって運営が開始されました。しかし、蒸留所が開業した1898年は、ちょうどスコットランドのウイスキー業界がバブル崩壊を迎えた年でした。当時のブレンデッドウイスキー市場が急激に縮小し、多くの蒸留所が閉鎖を余儀なくされた中、グレンエルギン蒸留所も経営困難に直面します。

創設当初からオーナー会社が倒産し、わずか操業5ヶ月で稼働停止に追い込まれるという波乱の歴史を持つグレンエルギン蒸留所。
経営の変遷と復活
蒸留所は開業からわずか数年後に閉鎖を余儀なくされ、その後いくつかのオーナーを経て、1920年代にDCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)(現在のディアジオ)に買収されました。DCLの管理下で、グレンエルギン蒸留所は安定した生産体制を確立し、特にブレンデッドウイスキーの原酒として重要な役割を果たしました。
1950年代には設備の近代化が進み、2基だった蒸留器が6基に増設されるなど、生産能力の拡大が行われました。この増設により、蒸留所はより多くの原酒を供給できるようになり、主要なブレンデッドウイスキーの中核を支える蒸留所として地位を確立しました。

近年では、MHD社(モエ・ヘネシー・ディアジオ)が所有し、「ホワイトホース」の原酒供給を担っています。
シングルモルトとしての台頭
長らくブレンデッドウイスキーの原酒として使用されていたグレンエルギンですが、1990年代以降、シングルモルトウイスキーとしての販売が本格化します。特に、グレンエルギン12年はスペイサイドモルトらしいエレガントでフルーティーな味わいが高く評価され、愛好家の間で人気を博しました。
また、蒸留所の製法においては、発酵時間を通常よりも長く取ることで、華やかなエステル香を引き出す独自の特徴を持ち、他のスペイサイドモルトとは一線を画す存在となっています。

スペイサイドモルトらしい、エレガントなフレーバーが特徴のグレンエルギン!
現代と終売決定
現在、グレンエルギン蒸留所は世界的なウイスキー企業ディアジオが所有しており、安定した品質を誇っています。しかし、2025年1月下旬をもって、主力製品であるグレンエルギン12年の終売が発表され、多くのウイスキー愛好家に衝撃を与えました。この終売決定は、ディアジオ社のブランド戦略に基づくもので、グレンエルギンが今後どのような展開を見せるのか注目されています。

オフィシャルリリースは終売となりますが、ボトラーズからのリリースはしばらく続く予定です。そのため、無理にオフィシャルにこだわる必要はないかもしれません。
- 創設と初期の歴史:1898年にチャールズ・ドイグ設計、ウィリアム・シンプソンとジェームズ・キャリントンが創設。開業直後、ウイスキーバブル崩壊で経営困難に直面。
- 経営の変遷と復活:1920年代にDCL(現ディアジオ)に買収され安定生産体制を確立1950年代に蒸留器を2基から6基に増設し、生産能力を拡大。
- シングルモルトと現代の動向:1990年代以降、シングルモルトとして本格販売開始、グレンエルギン12年が人気を博す。2025年1月下旬、グレンエルギン12年の終売が発表され注目を集める。
グレンエルギン蒸留所の製法と設備

グレンエルギン蒸留所は、スペイサイド地方の伝統を守りながら、独自の製法や特徴的な設備を使用してウイスキーを生産しています。その中でも、他の多くの蒸留所と異なり、伝統的な冷却装置であるワームタブ(Worm Tub)を現在も採用していることが大きな特徴です。
製造工程の特徴
1. 仕込み水
グレンエルギン蒸留所では、近隣の湧水を仕込み水として使用しています。この軟水はウイスキーにクリーンで滑らかな口当たりを与える重要な要素です。スペイサイド地方の高品質な水は、グレンエルギンの独特のバランスの良いフレーバーの基盤を支えています。
2. 長時間の発酵
発酵時間は通常よりも長い75時間以上で設定されています。この長時間の発酵により、発酵中に豊富なエステルが生成され、フルーティーで華やかな香りが生まれます。発酵には伝統的な木製のウォッシュバック(発酵槽)を使用しており、微妙な風味の奥行きを加えています。
3. スローな蒸留
蒸留はゆっくりと時間をかけて行われます。この「スローな蒸留」は、スピリットに滑らかさと複雑さをもたらす重要なプロセスです。
蒸留に使用される設備:
- ウォッシュスチル(初留器):3基
- スピリットスチル(再留器):3基
蒸留器は比較的小さめで、首部分(スワンネック)が独特の形状を持っています。これが蒸気の還流を促進し、よりクリーンでエレガントなスピリットを生み出します。
4. ワームタブ冷却装置
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グレンエルギン蒸留所の最大の特徴の一つが、伝統的な冷却装置であるワームタブ(Worm Tub)を採用している点です。
ワームタブとは
ワームタブは、スピリットの冷却に使われる装置で、蒸留器からの蒸気が通る銅製のらせん状のパイプ(ワーム)が水槽の中に設置されています。蒸気がこのパイプ内を通りながら水槽内の冷水によって冷却され、液体状のニューメイクスピリットが生成されます。
ワームタブの効果
- よりリッチで重厚な風味を付加
ワームタブは冷却プロセスが急激に行われるため、スピリット内の高揮発性成分が凝縮され、重みのあるオイリーな口当たりを生み出します。この重厚なテクスチャーは、他の冷却方式(コンデンサー)では得られない特徴です。 - 伝統的なキャラクターを維持
ワームタブは近代的な冷却装置であるシェル&チューブコンデンサーに比べて効率が低いですが、伝統的な製法を守ることで、グレンエルギンの特有の味わいを保っています。 - 味わいの複雑さを増加
フルーティーなアロマを持ちながらも、しっかりとしたコクと複雑なフレーバーを作り出す役割を果たしています。このため、グレンエルギンのシングルモルトは一味違う個性を持つと評価されています。
5. 熟成
蒸留後のニューメイクは、主にアメリカンオーク樽で熟成されます。この樽は、ウイスキーにバニラやトフィー、キャラメルの甘いニュアンスを付与します。熟成は、蒸留所内の伝統的なダンネージ式倉庫で行われ、湿度や温度の自然な変化がウイスキーに時間をかけて複雑さを加えます。
- 仕込み水と発酵の特徴:スペイサイド地方の高品質な湧水を使用し、滑らかでバランスの良いフレーバーを実現。長時間の発酵(75時間以上)でエステルを豊富に生成し、フルーティーで華やかな香りを引き出す。
- ワームタブ冷却装置の採用:伝統的なワームタブを使用し、急速な冷却でリッチでオイリーな口当たりを実現。他の冷却方式にはない重厚感と複雑なフレーバーを維持し、グレンエルギン特有の味わいを形成。
- 製造全体の特徴:スローな蒸留と独特な形状の蒸留器でクリーンかつエレガントなスピリットを生産。熟成にはアメリカンオーク樽とダンネージ式倉庫を使用し、甘いニュアンスと複雑さを加える。

「ワームタブ方式」はスコットランド伝統の蒸気冷却システムで、非効率かつ場所を取るため、近年では採用が減少しています。

多管式(シェル&チューブ式)への移行も可能ですが、グレンエルギンでは「ワームタブ方式」でしか生み出せない重厚な酒質が特徴。こだわりが良質な原酒造りに活かされています。

「ダルウィニー蒸留所」、日本ではサントリー「山崎蒸留所」やニッカウヰスキー「余市蒸留所」などで一部採用されています。
ちょっとした豆知識1


90年代流通のオフィシャルボトルには、シングルモルトでありながら「ホワイトホース」のロゴが記載されていました。

現在ではスペイサイドモルトであるはずの「グレンエルギン」ですが、ラベルには「HIGHLAND MALT」と記載。当時は産地が今ほど細分化されておらず、大まかな分類だったためです。

ネットが普及していなかった90年代、グレンエルギンは一部の熱烈なモルトファンに楽しまれていました。情報が限られ、探究心旺盛な人々がひっそりと楽しんでいた貴重な時代です。
ちょっとした豆知識2


現行ボトルのラベルについてちょっとだけウンチクがあります。上部に鳥の絵が描かれていますが、これは「イワツバメ」という鳥です。

夏になると蒸留所周辺、特に「ワームタブ」の間を飛び回る「イワツバメ」。その姿をラベルに採用するセンスは、とてもおしゃれで季節感を感じさせます!

グレンエルギン12年をテイスティング

グレンエルギン12年をテイスティング
グレンエルギン12年のフレーバー
グレンエルギン12年の味わい
ストレートで飲んでみる

香り
- ハチミツ、紅茶、花、青りんご、ブランデーケーキ、オレンジ、ビスケット、ハーブ
味わい
- ダークチョコの様なコクのある甘み、柑橘のビターと酸味、スパイシー
感想
まずはストレートで飲んでみます。香り立ちはハチミツの上品な甘い香りと紅茶などの発酵感、さらに生花の様なフローラル感が漂い、フルーティーな青りんごとオレンジ、そして穀物の香ばしいモルト感が感じ取れます。
口に含むと、ダークチョコの様なしっとりとしながらビターな甘さが広がり、ピリッとしたスパイシーさも感じられます。余韻にかけては、口の中で馴染みながらハーブっぽい感じがして、柑橘の酸味とビターさが徐々に膨らみ、粉っぽさ(発酵感)がわずかに残ります。
一般的なスペイサイドモルトの華やかさはそこまで強くなく、どこか重厚なニュアンスが漂っている味わいです。もちろん華やかな部分もありますが、なんというか「飲み手を選ぶ」といったニュアンスを感じます。重厚感、焦げた感じの風味、ハーブっぽさなど、バランス良くまとまっていますし、飲みやすくもありながら、何か・・・静かな圧を感じる不思議なモルトです。

(飲み比べてざっくりと似ているなと思ったのはニッカウヰスキーから発売している「ブラックニッカスペシャル」です。独特のハービィーな感じと焦げ感が重厚なニュアンスを演出し、ニッカらしいリンゴの香りでエレガントさも感じるあたりは往年のモルトファンから怒られそうですが、個人的に似ていると思いました。)
ロックで飲んでみる

香り
- ハチミツ、バニラ、キャラメル、リンゴ、チェリー
味わい
- 滑らかでフラット、果実香とスパイス、ビターな余韻
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。基本的に繊細な感じのウイスキーや、シングルモルトなどはストレートが基本と言われますが飲み方は自由なので好きなように飲みましょう(笑)本場スコットランドではストレートで完成形になりますが、日本においては様々な飲み方をするので、ブレンダーの仕事もあらゆる飲み方を想定していると思うので大変だと思います。
まずは香りですが、少し苦味を感じるハチミツと甘いバニラ、そして同じく焦げ感のあるキャラメルと続きます。ほんのりとですが、リンゴやチェリーなどの甘酸っぱいフルーティーな香りも感じ取れます。
口に含むと、冷えている分香味成分などは落ち着き、ややオイルっぽくも粉っぽさがあり味わいは平坦な感じで口に馴染みます。途中から果実の甘酸っぱさとスパイスが効いてきて、ストレートの時よりも濃縮感のあるビターが余韻へと続きます。
2口目を飲んだ頃から、ほろ苦さが出てきて鼻をフローラルな雰囲気が抜けていきます。アフターにかけては穀物の香ばしさと、ほんのりとした甘さが漂いビターと共に消えていきます。
ストレートよりは飲みやすい気もしますが、冷えた分色々な要素が引っ込んだ印象です。アフターにかけてのビターだけは強調され、キリッとした冴える感じがしますが粉っぽい甘さがほんのり香るのでチョコ菓子などデザートなどに合わせたくなる味わいです。
ハイボールで飲んでみる

香り
- 青りんご、バニラ、ワックス、オレンジピール、ミント
味わい
- ビスケットやクッキーのシリアル感、フローラルな香味
感想
次はハイボールです。やや薄めで試しましたが、香りは青りんごのフレッシュな感じにバニラの甘さ、そしてワックスっぽい少しケミカルさも感じます。ビターなニュアンスの果実香(オレンジピール)とミントの様な清涼感が混じり、コクのある感じに少し遊び心があるように思います。
口に含むと、ビスケットやクッキーのシリアル感が豊富に感じる甘さがあり、フローラルな香りが鼻を抜けていき、2口目からはうっすらと酸味があり若干ですが、ワインぽさを感じながら、ほろ苦い香ばしさと微かなミント感のアフターへ心地よく消えていきます。
樽由来の香りと、ハーブっぽい香味が混ざり合ったコクのあるハイボールで、コチラもデザートに合わせたくなる味わいですが、上品さがあるのでビーフシチューなどの少し苦味のある濃いソースの物と合わせるとシリアル感やミント感が引き立ってより一層に美味しく飲めると思います。
まとめ
グレンエルギン12年は、スペイサイドの伝統を受け継ぎながらも、ワームタブを用いた製法や長時間発酵によるフルーティーな香りが特徴の、エレガントなシングルモルトです。その滑らかな飲み心地とバランスの取れた甘みは、初心者から愛好家まで楽しめる一本でした。
しかし、2025年1月下旬をもって終売が決定。これにより、長年親しまれてきたこの味わいを楽しめる機会は限られてしまいます。まだ手に入るうちに、ぜひ一度その魅力を体験してみてください。特にストレートでの芳醇な香りと味わいを堪能し、グレンエルギンの個性を心ゆくまで楽しんでください。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!!

テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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