このウイスキーの特徴を簡単に
このウイスキーについて
今回ご紹介するのは、ローランドモルトの雄と言われる「グレンキンチー蒸留所」の「グレンキンチー10年」のレビューをお届けします。
「グレンキンチー10年」は現在、残念ながら終売となってしまっていますが「グレンキンチー12年」は今でもリリースされているので大まかな味わいなどお伝えできたらと思います。
それでは、まずスコッチウイスキーの産地の一つ「ローランド」についてご説明いたします。
ローランドの位置
「ローランド」はその名の通りスコットランドの下半分の地域を指しており、農村地帯が広がりスコットランドの首都である「エディンバラ」があるのもローランドです。
スコッチウイスキーの産地「スコットランド」中でも「ローランド」には蒸留所は少なく、最近までは「4箇所」しか蒸留所がありませんでした。近年のウイスキーブームによって空前の蒸留所建設ラッシュとなっている地域で今後、期待されている地域でもあります。
ローランドで生まれるモルト原酒の特徴として「華やかで優しい」といった表現がされます。対象的なハイランドのモルト原酒の「力強さ」との違いはどういったところから生まれるのでしょう!?
ではここで、「グレンキンチー蒸留所」について詳しく見ていきましょう!!
グレンキンチー蒸留所について
「グレンキンチー蒸留所」は1837年に創業。ローランドの多くは農耕地帯である為、この地で農業を営む「レイト兄弟」によって創設されました。
驚くことに「レイト兄弟」の蒸留所創設の目的は「副業」で、自ら栽培した「大麦」を原料にウイスキー造りを行い、蒸留所で出た原料の絞りカスなどを家畜の餌にするなど、現在の「サスティナブル」な考え方をしていました。
日本でいう「米作り農家」が冬の間は杜氏や蔵人として「日本酒づくり」をするのと似たような風土がスコットランドにもあったんですね!?
では次に「グレンキンチー蒸留所」の特徴などについてご説明いたします。
グレンキンチー蒸留所の特徴
「グレンキンチー蒸留所」は首都「エディンバラ」から車で30分程度の場所にあり、スコットランド観光のはじめに気軽に立ち寄れる場所にあります。
たった2つの蒸留器で年間250万リットル
「グレンキンチー蒸留所」の最大の特徴は「とても大きな2つの蒸留釜」にあります。
釜の容量は3万リットルと他の蒸留所と比べても非常に大きく、原酒の年間の生産量は「250万リットル」、これは「ハイランドパーク蒸留所」と同じ生産量で、ハイランドパーク蒸留所には4基の蒸留器がありますが、グレンキンチーではこの生産量を2つのポットスチルで支えている事になります。
つまり、初留釜と再留釜自体の生産量がとても大きいということになります。
酒質の特徴
また、蒸留機の形は「ランタン型」というスタイルで胴体とネックのつなぎ目がキュっとくびれているのが特徴です。
とても大きな容量のポットスチル、そしてランタン型の形状。この2つに共通して出来る酒質は「スッキリとしていて軽やか」という特徴があります。
また、仕込み水にも「硬水」が使われている珍しい蒸留所で「発酵」に大きく影響し、蒸留スタイルと合わさり「華やかで軽く上品」なモルト原酒を造る大きな要因と言えます。
実は日本のニッカも意識している
日本においても、ハイランドの「力強さ」とローランドの「華やかさ」を目指して建築された蒸留所があります。
創設者である竹鶴政孝氏は、ハイランドモルトの様な「力強い原酒造り」を目指し北海道に「余市蒸留所」を、そしてローランドモルトの様な「華やかな原酒」を造るために宮城県仙台市に「宮城峡蒸留所」を建設しました。
竹鶴氏の「違う酒質の原酒を造り分けブレンドすることで良いウイスキーが生まれる」という信念により、ニッカウヰスキーもローランドモルトの様な「華やかな原酒」造りをするために、2つの蒸留所を建設していたのですね!
ちなみに「グレンキンチー蒸留所」で生産される原酒の90%は「ブレンデッドウイスキー」用の原酒(ジョニーウォーカーなど)で、残りの10%が「シングルモルト」としてリリースされています。
では、ローランドの雄と言われる「グレンキンチー」のシングルモルト「グレンキンチー10年」をいつものように3種類の飲み方でレビューしていきます。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- 青りんご、洋梨、ハチミツ、アプリコット、ジンジャー、ドライフルーツ
味わい
- 軽やかでスパイシー、ドライフルーツとハチミツの余韻
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。香りは、青りんごや洋梨を感じるフルーティーでスッキリとした果実感が溢れ、ハチミツとジンジャー、アプリコットやドライフルーツの熟した果実感があります。
口に含むと、ローランドモルトらしい軽やかな舌触りで、ハチミツっぽさの中にジンジャーのスパイシーな刺激と熟した果実の甘さが広がります。中盤からビターが膨らみますが、ドライフルーツの濃縮した果実感に抑えられながら、ゆっくりと消えていきます。
優しい香味とフルーティーで軽快なモルト感は、華やかで落ち着いた印象のローランドモルトならではの味わいです。ハイランドやアイランズのように厳しい気候の中で育つ重厚なモルトとは対象的に、温和で心地よい風土が生み出した陽気ささえ感じる様な味わいです。
人のマインドも北国は強くたくましく、南国は陽気で大らかなイメージがありますがウイスキーもそうなんですかね!?(笑)
ロックで飲んでみる
香り
- 青りんご、ハチミツ、ドライフルーツ、ジンジャー、ミント
味わい
- スパイシーで青々としたビター、ハチミツとドライフルーツの甘み
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。香りは変わらず清々しい青りんごが主体で、ハチミツ、ドライフルーツなど熟成感のある甘い香り、そしてジンジャーにミントやハーブといった薬草感も感じます。
口に含むと、ハチミツやドライフルーツの甘みが優しく広がりながら、奥まった感じのビターが徐々に膨らみます。ミントっぽい瑞々しい清涼感をまとったビターと共にハチミツの甘さがそれを追いかけます。香ばしいモルト感も感じながらビターが静かに消えていき、ほんのりとした甘さを感じる余韻が続きます。
氷を入れると一気に青っぽさが膨らんできました。柑橘の皮ほど強めではないですが華やかな甘さが少し削がれてしまった印象で、少しもったいなさを覚えました。
ハイボールで飲んでみる
香り
- 青りんご、洋梨、ライム、ミント、ハチミツ
味わい
- 甘苦い、リンゴ感にライムのビター、パフューミーな余韻
感想
最後はハイボールで飲んでみます。香りは弱まったものの、青りんごの甘酸っぱさ、そして洋梨にライムの柑橘感、ミント、ハチミツが感じ取れます。
口に含むと、甘くも柑橘の苦味と調和して何とも言えない大人の味わいがします。リンゴの甘くジューシーな果実感とライムをギュッと絞った様なキレのあるビターが良いバランスで口の中に広がります。
ただ、少し洗剤や香水の様な香りにも感じられ「何かに似ている!?」と悩んでいましたが、棚にあるリキュールがその答えでした。
それは「カンパリ」です。薬草の苦味に砂糖のような甘さがあるイタリア伝統のリキュールですが、カンパリにも少し洗剤っぽく感じる味わいがあり、まさにあの洗剤感とビターを薄めたような味わいが、このハイボールに感じられました。
人によっては苦手な味わいかもしれませんが、「大人の味」と感じたのはその為だったのかもしれません。クセはありますが面白い味わいのハイボールです。
まとめ
華やかで軽やかと言われるローランドモルト。今回の「グレンキンチー10年」も同様に、ハチミツや青りんごなどのフルーティーで軽やかな味わいが特徴のシングルモルトでした。
以前、この「グレンキンチー10年」が酒販店に置いてある時に「10年」よりも「12年」の方が価格的に安いという逆転現象があった事を思い出します。元々、ブレンデッドの原酒供給が主な蒸留所であるので、中途半端に10年のリリースを続けるよりも需要性のある12年を継続するという選択は当然だと思います。現在では終売となってしまいましたが、飲みやすさや熟成感では「12年」の方が間違いなく格は上ですので、無理にプレ値で購入しなくとも現行の「グレンキンチー12年」でローランドモルトの華やかなモルト感を体験してみて下さい(^^)
最後まで読んで頂きありがとうございました。
こちらは現行品の「グレンキンチー12年」になります。
こちらが今回ご紹介した終売品の「グレンキンチー10年」です。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
コメント