このウイスキーを簡単にまとめると
このウイスキーについて
今回のウイスキーは「嘉之助蒸留所」初のレギュラーボトルとして、2022年に発売された「シングルモルト嘉之助」をご紹介します。
「嘉之助蒸留所」は、2017年に創業したクラフト蒸留所です。リリースされるボトルは即完売してしまうなどの人気ぶりで、とても注目を集めている蒸留所です。
人気の理由はもちろん「味」にあります。短年熟成ながら「若さを感じない」、「まろやかな味わい」といった声が多く、新しい蒸留所とは思えないしっかりとした味わいが特徴です。
まずは、注目を集める「嘉之助蒸留所」についての特徴をご紹介いたします。
嘉之助蒸溜所
「嘉之助蒸留所」は鹿児島県日置市にあるクラフトウイスキー蒸留所で、2017年に稼働しました。運営をしているのは、日本初の長期熟成米焼酎である「メローコヅル」を販売している「小正嘉之助蒸溜所株式会社」です。
蒸留所の名前にもなっている「嘉之助」とは、小正醸造の二代目「小正嘉之助」の精神を受け継ぐという意味が込められています。
嘉之助は、日本独自の蒸留酒である焼酎も”熟成によって一層美味しくなる”という確信を持っていました。彼は、オーク樽で長期保存することに耐えられる力強い原酒を造るため、3回蒸留という手法にたどり着きました。
試行錯誤の末に昭和32年、当時では考えられなかった6年もの長期熟成の米焼酎、「メローコヅル」を世に送り出したのです。
そして、その精神は四代目小正芳嗣氏に受け継がれ、現在の「嘉之助蒸留所」建設に結びつきました。
嘉之助蒸留所の製法
嘉之助蒸留所では自社の看板製品でもある熟成米焼酎「メロ-コヅル」の技術を生かしたウイスキー造りを行っています。
1つは「シングルモルト嘉之助」の特徴である、短期熟成とは思えない芳醇な香りのウイスキーを作り出す為、醪を造る工程の「発酵」に注視しました。
香り高いモルトを造るため、発酵の際に有害となる菌を駆逐する乳酸菌ができるだけ早い段階で増えるよう試行錯誤を行い、芳香性に富んだ醪をつくり出すことに成功!!
また、醪を蒸溜する過程でも嘉之助蒸留所ならではのこだわりがあります。
通常のクラフトウイスキー蒸留所が「初溜釜」と「再溜釜」の2基なのに対し、嘉之助蒸留所では「メローコヅル」で培った技術が生かされ、「初溜釜1基」と「再溜釜2基」の合計3基で蒸溜を行っています。
それぞれの容量は6000ℓ・3000ℓ・1600ℓで、2回目の蒸留(再留)の際にネックの形状や上部のラインアームの角度の異なるポットスチルを使用することで原酒の香りや味わいをより豊かに変化させることができる工夫がされているんです。
そして、熟成にはアメリカンホワイトオークの樽を主に使っていますが、この樽も「メローコヅル」で使用した樽をリチャー(樽の内部を焦がして樽の力を呼び覚ます工程)したものが使われています。
ウイスキーほど長くない焼酎の熟成によって、程よくこなれさせた樽をリチャーによって活性化させ、ウイスキーの熟成に用いるという嘉之助蒸留所ならではの熟成方法を行っています。
なお、原酒が眠る貯蔵庫は半地下の工夫がされているそうです。
理由は、冬の厳しい寒さと夏の高温による寒暖差によって樽に与えるストレスがあまりにも大きい為で、通常よりも早く熟成が進んでしまうからだそうです。
製造された樽や所有する貯蔵庫はあくまで焼酎用の貯蔵庫として利用しながら、条件の整った環境で丁寧にウイスキーを造りを行っているんですね!!
やはり焼酎造りの技術があってこその嘉之助蒸留所。ウイスキーに全振りしないところも老舗蔵として伝統を重んじているんでしょう。
では、嘉之助蒸留所から初となる「シングルモルト嘉之助」を3種類の飲み方でレビューしていきます。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- ハチミツ、キャラメル、バニラ、のど飴、ハーヴ
味わい
- ハチミツの甘さ、ハーヴィーな香り、カリンのビターと甘み
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。
香りはハチミツ、キャラメル、バニラのウッディで甘い香りと、ハーブっぽい薬草感があります。まるでのど飴を舐めた時のような柑橘っぽい香りも感じ、不思議な感じがします。
口に含むと、ハチミツの甘さがフワッと広がり、中盤からビターでややスパイシーな味わいが膨らみます。アフターにかけてはビターな味わいが続き、カリンのような柑橘感がゆっくりと消えていきます。
この独特の薬草っぽい柑橘感はクセになる味わいで、ネガティブな感じは一切ありません。甘さや酸味、ビター感などを繋ぐ重要な役割を果たしているように感じました。
香りや味の主体となっている「ハチミツ」っぽさは「オールドプルトニー」に近い感じを持ちました。ストレートの段階で「これはハイボールに合う」といった期待が高まります。
ロックで飲んでみる
香り
- ハチミツ、バニラ、カリン、ハーブ、焦がした木片、スモーク
味わい
- ビターテイスト、バニラウエハース、柑橘の渋み
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは、ハチミツやバニラのウッディな香りに加え、ハーブやカリンの柑橘、そして少し煙たさを感じる木片やスモーク感があります。
口に含むと、ビターがかなり強調された柑橘の渋みが広がり、バニラウエハースの甘さがほんのりと乗ってきます。また、味わいの中にどこかエキゾチックなアジアを感じるスパイシーさも感じますが、このあたりは若い原酒の影響かもしれません。
ビターが主体ではありますが、相変わらずハチミツやカリンっぽいニュアンスは残っており、余韻には柑橘の皮っぽい渋みが残ります。
キリッとした味わいのオンザロック。原酒の若さからくる強いアタック感はややハードな味わいです。全体的にビターで、加水が進むと穀物由来の甘さが顔を出してきます。ストレートではあまり出てこなかったスモーク感が出てくるのも面白いですね。
ハイボールで飲んでみる
香り
- ハチミツ、カリン、ハーブ
味わい
- 上品な甘さ、とろみを感じる喉越し
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りは、ハチミツ、カリン、そしてハーブっぽい薬草感があり、清涼感よりも上品さがにじみ出ている感じです。
口に含むと、麦(穀物)とハチミツの優しい甘さが口の中に広がり、少し焦げたような香ばしさが追いかけてきます。ハーブや薬草のような感じとハチミツの香りが終始続き、余韻には柑橘のビターとカリンがゆっくりと消えていきます。
とても飲みやすく、上品な甘さと喉に良さそうな柑橘感はクセになる味わいです。思った通りハイボールにとてもマッチしており、滑らかな喉越しは独特の清涼感を演出しています。
巷で人気の「嘉之助ハイボール」!!メロウという言葉通り、喉越しはノンエイジとは思えない滑らかさがあります。スコッチ好きの筆者としては、ここに潮気も欲しいところですが短年熟成でこの味わいには驚かされました。今後はもっと深みを増してくると思います。
まとめ
話題のクラフトウイスキー「シングルモルト嘉之助」を飲んでみました。
忖度なしに、近年のクラフトウイスキーの中で一番美味しいと思います。新しい蒸留所ではウイスキー造りに不可欠な「熟成」が足りていないため、トゲがあったり、まろやかさとはほど遠いものがほとんどですが、「シングルモルト嘉之助」は、メロウという言葉通りの滑らかさ、カリンを思わせるような柑橘感とハチミツの甘さ、そして香ばしいモルト香がバランスよくまとまっていて、ウイスキー初心者はもちろん、長年のモルト通であっても満足できる味わいだと思います。
短年でこの味わいを表現できるのはとても素晴らしく、今後リリースされる年数表記のあるボトルリリースがとても楽しみです。ただ、現行のレギュラー商品となる「シングルモルト嘉之助」も、やや入手は困難ですから、気軽に楽しむためにはもっと結構な時間が必要になるかもしれません。
熟成年数のハンデを、発酵や蒸留技術で補う「嘉之助蒸留所」。今後がとても楽しみです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
コメント