【レビュー】シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITIONを3種類の飲み方で味と香りを解説！！

このウイスキーを簡単にまとめると

このウイスキーについて

嘉之助蒸溜所について

鹿児島県の西岸に広がる吹上浜沿いに位置する嘉之助蒸溜所。広大な約9,000㎡の敷地に、コの字形の2階建て本棟が誇らしく立ち並んでいます。ここでは蒸留設備が整えられているだけでなく、絶景を望むことのできるBARやオリジナルグッズを手に入れることができるショップも楽しめます。

この蒸溜所の特筆すべき点は、なんといっても3つの異なるサイズのポットスチル（蒸留器）を備えていること。それぞれの容量は大が6000ℓ、中が3000ℓ、小が1600ℓです。一般的なクラフト・ディスティラリー（小規模蒸留所）が持つ蒸留器は通常2基ですが、嘉之助蒸溜所はその倍近い数を誇っています。

ウイスキーの蒸留は通常2回行われますが、この蒸留所では2回目の蒸留（再留）において、ネックの形状や上部のラインアームの角度が異なる異なるポットスチルを使用することで、原酒の香りや味わいをより一層豊かに変化させることができるのです。これはウイスキーの個性を引き立たせるための工夫といえるでしょう。

また、蒸留所の周囲に広がる吹上浜は、「日本三大砂丘」の一つにも数えられ、その美しさから「日本の渚百選」にも選ばれています。約47kmにわたる砂浜は南北に広がり、強風が海面から砂を巻き上げ、蒸留所の周囲は透き通った白い霧に包まれることでしょう。夏は暑さ、冬は氷点下近くまで冷え込む厳しい気候が特徴であり、その寒暖差もこの地域の個性となっています。

シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION

「シングルモルト嘉之助2023 LIMITED EDITION」は、2018年から2019年にかけてピート麦芽を使用して仕込み、バーボン樽でじっくりと熟成させた原酒を中心に使用しています。さらに、焼酎リチャーカスク原酒など、異なる種類の樽から生まれた原酒を複数用意し、これらを巧みにブレンドしています。その結果、個々の樽の特徴が融合し、独自の風味が生まれました。

この特別なシングルモルトは、カスクストレングスでボトリングされています。つまり、原酒の持つ力強さや深みがそのままボトルに詰められており、まさにそのままの姿を味わうことができます。この限定エディションは、嘉之助蒸溜所の熟練の技術とこだわりが詰まった逸品となっています。

テイスティング（実際に飲んでみた）

ストレートで飲んでみる

香り

• ぶどう、ハチミツ、レーズン、カラメル、蒸しパン、ピート、焦げた木

味わい

• 華やかな香りとフレッシュなシェリー感

感想

ストレートから飲んでみます。

香りは、ぶどうやレーズンの果実が感じられ、ハチミツとカラメルのほろ苦く甘い香りが漂います。また、ふっくらとした蒸しパンや焦がした木の内側のような香りに、ピートのツンとしたニュアンスが加わっています。

口に含むと、アルコール感はあるものの、フレッシュで酸味のあるシェリーの風味が口の中に広がります。そして、スパイシーな要素が広がり、ブドウのタンニンとスモーキーなフレーバーが絶妙に調和した余韻が続きます。

カスクストレングスのため、アルコール度数は非常に高く、注意して味わう必要がありますが、その中に若さを感じさせない華やかな香りとフレッシュな印象のシェリーの風味が、独特の味わいを作り出しています。同様のニュアンスを持つモルトとして、以前にレビューした「イーガンズ フォーティチュード」がありますが、こちらもエレガントなシェリーの香りというよりもむしろ”フレッシュ”さを感じさせる味わいが特徴でした。

加水してみると

ここで少し水を加えて、香りと味わいをチェックしてみました。

香りは焦げたニュアンスとカラメルの甘さが強まり、スモーキーさが感じられるようになります。

さらに、味わいは樽の特性が豊かになり、香ばしいビスケットやバニラのニュアンスが現れます。そして、スパイシーな要素とタンニンが広がり、スモーキーな香りとともにゆっくりと消えていきます。

ストレートで飲むよりも、樽の影響が前面に出てきた印象で、アルコールによって隠れていた香味成分が一気に解放されてきました。時間をかければ、さらに多彩な香りを楽しむことができそうです！

ロックで飲んでみる

香り

• バニラ、ハチミツ、ぶどう、レーズン、シトラス、ゴム、硫黄、スモーク

味わい

• 華やかなシェリーと香ばしいシリアル

感想

次は、氷を入れてオンザロックで飲んでみます。

香りは、バニラやハチミツの甘い香りが最初に広がり、その後にぶどうやレーズンの果実感が追いかけてくるように変化します。さらに、柑橘の皮のようなビターなニュアンスと、シェリー原酒に特有のゴムや硫黄のサリファリーな要素も感じられます。

口に含むと、甘いバニラの中にブドウの酸味が絡んで広がっていきます。そして、香ばしい穀物とブドウのタンニンが調和し、スパイシーな要素がゆっくりと増していきます。余韻ではビターな要素とスモーキーさが交互に表れながら徐々に消えていきます。

ハイボールで飲んでみる

香り

• スモーク、灰、シトラス、ゴム、硫黄

味わい

• スモーキーでビターな味わい

感想

最後はハイボールで飲んでみます。

香りは、スモーキーさが際立っており、”灰”のような乾いた印象が強調されています。さらに、シトラスの爽やかな香りがやや控えめになりながらも存在感を保ち、うっすらとゴムや硫黄のようなシェリー樽のニュアンスも漂っています。

口に含むと、軽やかでドライな印象のスモーキーさが口いっぱいに広がり、柑橘の酸味とビターな要素が後を追います。白ワインのようなタンニンとビターが絶妙に絡み合い、余韻は長くは続かずにサッパリとした印象を残します。

ここまで、ストレート、ロック、そしてハイボールとさまざまなスタイルで楽しんできましたが、どの方法でも表情豊かな味わいが楽しめ、そのバランスが崩れていない点が非常に素晴らしいと思います！

まとめ

「シングルモルト嘉之助 2023 LIMITED EDITION」をレビューしました。

「嘉之助蒸留所」は、クラフト蒸留所の中でも高く評価されています。その中でも、レギュラー商品である「シングルモルト嘉之助」と同様に、短い熟成期間にもかかわらず、これほどの複雑さと深みを持つ表情と味わいを実現している点は、驚くべきことです。

味わいの特徴として、レギュラー品よりもシェリーとスモーキーな要素が強調されています。しかし、香りや味わいはレギュラー品にはない、濃厚で力強い印象を備えています。

他のクラフト蒸留所のウイスキーには、時折「焼酎臭さ」を感じることがあり、海外原酒をブレンドして馴染ませている傾向も見受けられます。一方で、嘉之助蒸留所は自社のモルトのみを使用しています。これには、長年の蒸留酒造りのノウハウや、独自のチャーリング樽から生まれる滑らかな酒精が影響していることでしょう。

以前の記事でも似たようなことを綴りましたが、現在でも十分美味しいモルト原酒が今後、どのよう変化していくのが非常に楽しみでなりません。