こんにちは!ウイスキーの魅力と楽しさを伝えるカエル「sister-ley」です!今回も、魅力的なウイスキーの解説&レビューを行っていきます!!
スコットランドのアイラ島は、ウイスキー愛好家の間で「スモーキー&ピーティ」なシングルモルトの聖地として知られています。しかし、そのアイラ島にあって、異彩を放つ存在が「ブナハーブン(Bunnahabhain)」です。ピートをほとんど使わず、まろやかで優しい味わいを特徴とするこのウイスキーは、「最も飲みやすいアイラモルト」として、多くの人々に愛されています。
この記事では、そんなブナハーブンの魅力、蒸溜所の歴史や製法、そしてラインナップに至るまで、深く掘り下げてご紹介します。スモーキーな味わいが苦手な方も、初心者の方も楽しめるアイラウイスキーの奥深さを、一緒に探ってみましょう。
ブナハーブン12年はこんなウイスキー
ウイスキー属性 | シングルモルト |
産地(エリア) | スコットランド(アイラ) |
蒸留所 | ブナハーブン蒸留所 |
味わい | フルーティでクリーミー |
飲みやすさ | ★★★★☆☆ |
おすすめの飲み方 | 何でもOK! |
個人的感想 | とても美味しいが割高感は否めない |
飲みやすいアイラモルト「ブナハーブン」
アイラ島のウイスキーと言えば、スモーキーでピーティな味わいが特徴的であると多くの人が認識しています。ラフロイグやアードベッグなど、強烈なピート香が前面に出たウイスキーがその代表です。しかし、アイラ島北部に位置するブナハーブンは、アイラウイスキーの伝統にとらわれない、まろやかで滑らかなスタイルで愛されています。
ノンピートの独自性で他とは違う魅力を放つ
ブナハーブンが他のアイラモルトと大きく異なる点は、ノンピートで作られていることです。ピート(泥炭)をほとんど使用せず、柔らかでクリーミーな口当たりを生み出しています。これにより、ピート由来のスモーキーさが苦手な方や、ウイスキー初心者にも親しみやすい風味が特徴となっているのです。
しかし、ブナハーブンが常にノンピートであったわけではありません。設立当初はアイラ島の他の蒸溜所同様、強いピートを使ったウイスキーを生産していましたが、1960年代に入ってノンピート麦芽へと転換。この時代の転換は、世界的なウイスキー市場の変化にも影響を受け、より飲みやすい味わいを目指したものでした。その結果、1979年に初めてリリースされた「ブナハーブン12年」は、従来のアイラモルトとは異なる、優しい風味で瞬く間に人気を博しました。
ピーティなラインナップもちゃんとある
また、近年ではウイスキーブームによってピートフリークが増え、ピートを使ったウイスキーの需要が高まっています。これを受け、ブナハーブンも2004年頃からピーティなラインナップの生産を再開しています。ピートを使わないウイスキーがメインですが、ピートを取り入れたウイスキーにも力を入れ、さまざまな風味を楽しめるバリエーションを展開しています。
ブナハーブン クラックモナ
ゲール語で「積み重なった乾燥泥炭」を意味するクラックモナは、強烈なピートスモークを伴ったパワフルなウイスキーです。アイラモルトらしい味わいを求める方にはコチラがオススメです。
ブナハーブン蒸溜所の歴史と特徴
河口という名の蒸留所「ブナハーブン」
「ブナハーブン」という名前はゲール語で「河口」を意味し、その名の通り、アイラ島の最北端に位置する蒸溜所です。ブナハーブン蒸溜所へは、島の主要道路であるA846号線から分岐した小道を通り、さらに狭い農道を約5km進む必要があります。この道は車同士のすれ違いが困難なほど細く、まるで冒険のようなアクセスです。
蒸溜所は、アイラ海峡を見渡せる絶景の地にあり、対岸にはジュラ島がくっきりと見えます。この人里離れた場所では、訪れると時間が止まったかのような静寂に包まれ、穏やかな雰囲気の中で過ごすことができます。また、辺鄙な立地にあるため、蒸溜所には職人やゲストが滞在できる住居スペースが設けられ、訪れる人々を温かく迎え入れる体制が整えられています。
近年では観光客向けのビジターセンターやカフェ、ショップが新設され、さらに宿泊用のコテージも増設されるなど、施設の充実が進んでおり、今後ますます多くの人々がこの蒸溜所を訪れることが期待されています。
独自性へ転換した歴史
ブナハーブン蒸溜所は、1881年にグラスゴーのウィリアム・ロバートソンによって設立されました。しかし、蒸溜が開始されたのは1883年のことで、その後はハイランドディスティラリー社やエドリントン社、そしてバーンスチュワート社といった複数のオーナーによって運営されてきました。アイラ島では比較的新しい蒸溜所であるブナハーブンですが、その独自のスタイルと歴史を築いてきました。
第二次世界大戦後、1960年代にポットスチルを増設し、ノンピートの麦芽を使用するスタイルへと転換しました。当時はシングルモルトのリリースはなく、ブナハーブンは主にブレンデッドウイスキーの原酒として供給されていました。しかし、1979年に満を持してシングルモルト「ブナハーブン12年」をリリースし、その滑らかで飲みやすい味わいが瞬く間に人気を集めました。
ブナハーブン蒸溜所の設備と製造工程の詳細
ブナハーブン蒸溜所は、規模の大きな設備と特有の製造工程を持ち、これが他のアイラモルトとは異なる滑らかさを生み出す鍵となっています。
麦芽と仕込み水のこだわり
ブナハーブンで使用される麦芽は、6割がノンピート麦芽であり、4割がピーテッド麦芽です。この比率は、ブナハーブンが多彩なラインナップを提供できる理由の一つです。ピーテッド麦芽は、ポートエレン製麦所からフェノール値35ppmのものが供給され、アイラ島の他の蒸溜所で使われるものと同様に、しっかりとしたスモーキーさを持つ麦芽が使用されています。
また、仕込みや加水に使われる水は、アイラ島北西部にあるマーガデイル・スプリングの湧水です。この水源は、地下に埋設されたパイプによって、ピートの影響を受けないように守られています。ピート由来の風味が一切加わらない清澄な水は、ブナハーブンの優しい味わいを支える重要な要素です。
発酵と蒸溜のプロセス
ブナハーブンの発酵槽は、10万リットルもの容量を持つオレゴンパイン製のものが6基設置されています。発酵時間は66〜100時間と長めに設定されており、この長い発酵時間が、ブナハーブンの柔らかでフルーティーな風味を引き出す役割を果たしています。発酵の過程で作られるもろみのアルコール度数は6〜8%と、他のアイラ蒸溜所と比べても低めに設定されており、これがブナハーブン特有の軽やかさを生み出しています。
次に、蒸溜は初溜2基、再溜2基の計4基のポットスチルで行われます。これらのポットスチルは、背が高く、くびれのないストレートヘッド型をしており、その形状が蒸気の凝縮と蒸溜を効率的に行うことで、まろやかな原酒を生み出す要因となっています。このポットスチルの形状は、一般的なアイラ蒸溜所で見られる球形のものとは異なり、よりクリアなフレーバーを得ることができるのです。
熟成と樽管理
ブナハーブンの熟成は、9割がバーボン樽で行われ、残りの1割はシェリー樽やワイン樽などが使用されています。バーボン樽の特徴的な甘さと、シェリー樽由来のフルーティーさやウッディな風味が絶妙に調和し、複雑で多層的な風味を持つウイスキーが完成します。シェリー樽での熟成は、特に長期熟成のブナハーブンでその特徴が強く現れ、深みのある甘さとドライフルーツのような風味が際立つことが特徴です。
最もスタンダードなボトル「ブナハーブン12年」
ブナハーブン12年は、アイラモルトの中でも非常に珍しいノンピートタイプのウイスキーです。通常、アイラ地方のウイスキーはスモーキーな香りが特徴ですが、こちらの商品はピートを使用していないため、スモーキーさを感じることなく、より繊細で優雅な味わいをお楽しみいただけます。仕込み水に含まれるわずかなピート成分により、ほのかに潮風を思わせるニュアンスが感じられますが、全体としては甘みが主体となっています。
かつてのブナハーブン12年は潮の風味が強調されていましたが、現在はスイートな方向に進化しており、非常に飲みやすく、豊かな風味を堪能できる一本です。使用する樽はバーボン樽とシェリー樽を組み合わせており、シェリー樽由来のドライフルーツや黒糖を思わせる甘い香りが際立ちます。飲み進めるうちに、和菓子を思わせるような日本的な風味も顔をのぞかせ、奥深い味わいが広がります。
ピートレベルを示すフェノール値は1~2ppmと非常に低く、ほぼピート感を感じない穏やかな仕上がりが魅力です。さらに、アルコール度数は46.3%とやや高めではありますが、ロックや少量の水を加えることで、アルコールの刺激が和らぎ、より一層まろやかで豊かな風味を引き出すことができます。
それでは「ブナハーブン12年」の味わいをストレート、ロック、ハイボールの3種類の飲み方でみていきましょう!
ブナハーブン12年をテイスティング(実際に飲んでみた)
ブナハーブン12年のフレーバー
ブナハーブン12年の味わい
ブナハーブン12年をストレートで飲んでみる
香り
- 洋梨、リンゴ、カスタード、ハチミツ、ハーブ、木片、かすかにピート
味わい
- 甘く潮っぽい
感想
まずはストレートで飲んでみます。
香りは、洋梨やリンゴといったフルーティーなアロマに、クリーミーなカスタードやバニラ、ハチミツの優しい甘さが漂います。さらに、わずかにハーブや薬草を思わせるニュアンスや、古い木片や樽、そしてかすかにピートの香りも感じられます。
口に含むと、淡いタンニンと柔らかな甘さが広がり、奥からハーブの香りやスパイシーさがにじみ出てきます。そこに潮の香りとピートのニュアンスが加わり、複雑な味わいが楽しめます。余韻にはハーブのビターな味わいが続き、スパイシーさとタンニンが絡み合いながら、ゆっくりと消えていきます。
ノンピート仕様なので、アイラモルトが苦手な方でも飲みやすい仕上がりです。穀物由来の甘さとシェリー樽原酒からくるエレガントさが感じられ、本当にアイラモルトなのか!?と思うほど優しい味わいです。
ピートのニュアンスも通常のブレンデッド以下のピート感ですので、苦手な方でも安心して楽しめます!
ブナハーブン12年をロックで飲んでみる
香り
- リンゴ(皮)、オレンジ、カスタード、バニラ、ハチミツ、スモーク、ゴム
味わい
- 優しいビター感、フルーティ
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは切ったばかりのリンゴやオレンジのフレッシュなフルーティさがあって、クリーミーなカスタードやバニラの香りにハチミツの甘さがあります。また、少し煙たいニュアンスにシェリー樽特有のゴムっぽさも出てきました。
口に含むと、まずシトラスや果実の皮のような新鮮でビターな味わいが広がり、その後オレンジピールやタンニンの苦みの中から、かすかなスパイシーさが顔を出します。余韻にかけて、スパイス感が徐々に和らぎながらも、渋さと共に爽やかなビター感が静かに消えていきます。
氷を加えるとビターさが一層際立ちますが、嫌な苦さはなく、フルーティーな爽快感が強調されます。甘口のウイスキーが苦手な方でも楽しめる、バランスの取れた味わいが楽しめます。
氷を入れるとスッキリとした果実感とコクのある穀物感がバランスよく口の中に広がります。普段ロックを飲まない方にもオススメです!
ブナハーブン12年をハイボールで飲んでみる
香り
- リンゴ、カスタード、ビスケット、ハチミツ、スモーク、ダークチョコ
味わい
- 香ばしくほろ苦い
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りは、リンゴのフルーティーさにクリーミーなカスタードが加わり、香ばしいビスケットやハチミツの甘さ、そしてほんのりスモーキーなニュアンスが漂います。さらに、これまで感じたことのなかったほろ苦いダークチョコの風味も楽しめます。
口に含むと、麦汁やビスケットの香ばしさに、ダークチョコのほろ苦さが絶妙に絡み合い、モルトの旨味が口いっぱいに広がります。オレンジピールのほろ苦い香りが続き、最後には香ばしさとともにカカオの優しい香りがふわりと消えていきます。
以前レビューした「ニッカ カフェモルト」のように、優しく香ばしい味わいが特徴で、食後のリラックスタイムにのんびりと楽しみたいハイボールです!
香ばしく、甘く、そしてほろ苦い。ゴクゴクと飲むのはもったいないくらいモルトの味をじっくりと楽しめる味わいでした!
ブナハーブン12年のまとめ
ブナハーブン12年は、アイラモルトの中でも一風変わった存在感を持つノンピート仕様のウイスキーです。軽やかでほんのりとした甘さが特徴で、リッチな風味を感じさせつつも軽快な口当たりで、非常に飲みやすい仕上がりとなっています。デザート系ウイスキーにありがちな重たさを感じさせず、スムーズに楽しめる一品です。価格はやや高めですが、初心者にも自信を持っておすすめできる親しみやすいシングルモルトです。
ただし、ブナハーブンはアイラモルトの特徴であるスモーキーなフレーバーがほとんど感じられないため、アイラモルト初心者が期待する独特のスモーキーノートを求める場合には、少し異なる印象を受けるかもしれません。同じノンピート仕様の「クラシックラディ」もありますが、ブナハーブン12年はさらにピート感が無く、モルトの旨味が際立っているため、アイラモルトに慣れていない方でも安心して試せる一本です。
アイラモルトの世界に初めて足を踏み入れる方には、軽いスモーキーさを持つ「クラシックラディ」やブレンデッドなら「ジョニーウォーカー12年」のようなウイスキーの方が、より適しているかもしれません。
”飲みやすい”正真正銘のアイラモルト「ブナハーブン12年」、気になる方は是非チェックしてみて下さい!
最後までお読み頂きありがとうございました。
ブナハーブンのラインナップ解説
ブナハーブンは、ノンピートを中心にしつつ、ピートを取り入れたさまざまなボトルを展開しています。以下に、主なラインナップをご紹介します。
ブナハーブン 12年
ブナハーブン12年は、バーボン樽とシェリー樽で熟成されたバランスの良いシングルモルトで、甘みとドライさが調和しています。ノンピート麦芽を使用しており、アイラウイスキーにしては珍しく、スモーキーな香りがほとんど感じられないのが特徴です。黒糖やカカオ、青リンゴの香りが広がり、フルーティーで爽やかな味わいが楽しめます。初心者にもおすすめできる飲みやすさが魅力です。
ブナハーブン 25年
25年以上の熟成を経たこのウイスキーは、非常に濃厚でリッチな風味が特徴です。プルーンや黒糖、和三盆のような深い甘みが広がり、口の中で複雑に絡み合います。ウッディな余韻とカカオの風味が長く続き、飲むたびに新たな発見があるボトルです。デザートモルトとして特に愛されており、特別なシーンで楽しむのにふさわしいウイスキーです。
ブナハーブン クラックモナ
ゲール語で「積み重なった乾燥泥炭」を意味するクラックモナは、強烈なピートスモークを伴ったパワフルなウイスキーです。シナモンをまとったピートスモークに、グレープフルーツやバニラ、黒糖といった複雑なフレーバーが絡み合い、非常に奥行きのある味わいが楽しめます。
ブナハーブン トチェック
「トチェック」は、ブナハーブン蒸溜所がアイラモルトらしいヘビーピートの麦芽を使って仕上げたボトルです。名前の由来はゲール語で「煙」という意味で、スモーキーで力強い味わいが特徴です。レーズンチョコの甘みとスモークが絶妙に混ざり合い、長い余韻が楽しめる一本です。
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