このウイスキーの特徴
このウイスキーについて
今回ご紹介するのはスコットランドのハイランド北部にあるプルトニー蒸留所からリリースしている「オールドプルトニー12年」です。
プルトニー蒸留所は元々バランタインなどのブレンデッドウイスキー用の原酒供給を主に製造を行っていましたが、近年はオフィシャルでの安定したリリースやボトラーズでのリリースも目立つようになってきました。
特徴的なボトルデザイン
オールドプルトニーの特徴の一つに変わったボトルデザインがあります。
これは「プルトニー蒸留所」に設置されているポットスチルの形状を模していて、ウイスキーのボトルがズラリと並んでいる状況でも、一際目立つデザインとなっています。
プルトニー蒸留所
独特な形状の蒸留器の理由
ボトルデザインにも反映されている独特のポットスチルですが、この様な形状をしているのには訳があります。
その理由は、設計ミスです(笑)
蒸留所の建設の際に、ポットスチルを搬入しようとしたところポットスチルの先端が蒸留所の天井より高いことが分かり、急遽ネック部分を切り取り、ラインアームを繋げるという力技で無理矢理に設置した為です。
ところが、この工程によって通常ではありえない蒸留ラインが生まれ、オールドプルトニーの軽やか且つボディのある酒質を生み出すに至りました。偶然の産物とはいえ、あまりにも強引な感じがしますが・・・結果オーライってことですね(笑)
蒸留所と町の歴史
北海に面した漁港の町ウィックで生産されるオールドプルトニーのモルト原酒は「海のモルト」として愛され、海岸沿いという立地の影響を受け、独特の潮の香りとオイリーさを持っています。
「ウィック」という町はニシンの漁で栄えた町で、蒸溜所名の由来は「この町を活気あふれる町に変えた」に英国屈指の資産家ウィリアム・ジョンストン・プルトニー卿に由来します。
プルトニー卿は、北にある小さな町「ウィック」を工業化しようと町に港を建設し、数千人しかいなかった人口は労働力の需要と共に徐々に拡大。何もなかった小さな町は一気に賑わい、「プルトニータウン」と呼ばれるようになります。1826年創業のプルトニー蒸留所もプルトニータウンの名称に由来し、労働と人口増加で活気に溢れましたが、1922年に「ウィックでの禁酒条例」によって町にも蒸留所にも暗い影を落とします。
一時は廃墟化した町ですが、禁酒条例の撤廃を受けて1951年に再稼働します。再稼働後も蒸留所のオーナーは幾度も変わり不安定な状態でしたが、1995年にオーナーとなったインバーハウス社によってウィックの禁酒条例廃止からちょうど50周年となる1997年に「オールドプルトニー12年」をリリースします。
蒸留所のオフィシャルリリースによって知名度は徐々に上がりましたが、さらなる転機になったのは、「ウイスキー・バイブル」においてオールドプルトニー21年がウイスキー・オブ・ザ・イヤーに選出され、ブレンデッド供給で地味な印象のプルトニー蒸留所も一気に知名度が上がりました。
その後も「プルトニー蒸留所」は安定して原酒を供給し続け、現在のウイスキーブームによって更に注目を集めるようになっています。
そんな「プルトニー蒸留所」からリリースされるスタンダードなボトル「オールドプルトニー12年」を3種類の飲み方でレビューします。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- ハチミツ、レモン、ワックス、ハーブ、スパイス、花(食用菊)
味わい
- オイリーでスパイシー、塩気、アフターにハチミツ、レモンピールの苦味
感想
まずはストレートから飲んでみます。香りは、信じられないくらいのハチミツが印象的です。香料が添加されているのでは!?と思えるくらいにハチミツの甘い香りが漂い、柑橘のスッキリした酸味と、ワックスっぽいオイリーな香りが感じ取れます。ほんの少し加水すると、ハーブの様な薬草感とシナモンっぽいスパイス、若干ですがフローラルな花の香りが感じ取れます。(花はスーパーに置いてある食用菊の様な香り)
口に含むと、やや粘性を感じるオイリーさがあってドライっぽくもあっさりとした印象があります。続いて、海が近い蒸留所らしく塩気を帯びたハチミツの甘さが一気に広がり、レモンピールっぽいビターがじんわりと膨らみ消えていきます。
ハイランドを代表するような「いかにも感」はなく、独特のフレーバーが印象的なシングルモルトです。特に「ハチミツ」のフレーバーや味わいは、容易に分かりやすく主張してくるので、実際に飲んで確かめて頂きたいです。結構、衝撃的な感覚ですよ(笑)
ロックで飲んでみる
香り
- ハチミツ、レモン、オレンジ、花、鉄、シナモン
味わい
- スパイシー、アフターにハチミツと柑橘のビター
感想
続いて、氷を入れてオンザロックで飲んでみます。香りは、ハチミツが印象的ですが冷やされた分ちょっと柑橘が顔を出してきて「はちみつレモン」っぽくもあります。また、オレンジの香りとフローラルなニュアンスがあり、どこか錆びた鉄っぽい感じと一緒にシナモン感もあります。
口に含むと、ややスパイシーなピリッとした刺激があり香味とは裏腹にドライな印象もあります。しかし、アフターにかけての「ハチミツ感」は変わらずに、ややビターが増して柑橘の皮の苦味の様な感覚がありますが、ハチミツの甘い香りと味わいが全体を優しく包んでくれているので、そこまで構える感じはしないです。
また、冷やしたことで独特の「粉っぽい発酵感」と「オイリー感」が余韻に残り、プルトニー蒸留所の独特の世界観が口の中で広がります。
ハイボールで飲んでみる
香り
- ハチミツ、レモン、ミント
味わい
- ハチミツの香りと潮気、はちみつレモン
感想
最後はハイボールです。炭酸の泡と共にハチミツの甘い香りが弾け飛びます。ここまでハチミツ感が残るのは本当にすごく、「バランタイン12年」で感じたハチミツ感はまさに、「プルトニーモルト」の影響と改めて思います。他にも、レモンの柑橘感と淡いミントの清涼感がハチミツと共に感じ取れ、香味豊かで「少しホッとする感」も感じる香りが特徴です。
口に含むと、ハチミツの甘さや苦味、香りがこれでもかというくらいに口の中に広がって、後からほんのりとオイリーな潮気が香ってきます。塩キャラメルではありませんが、甘さと相性は抜群の塩気がとても心地よく、食事後のデザートハイボールとしてオススメの味わいです。
まとめ
北ハイランドの「プルトニー蒸留所」が建つウィックという港町を感じることの出来る個性的なシングルモルト「オールドプルトニー12年」のレビューをしてみました。
ここまで、分かりやすくハチミツを感じることの出来るモルトは他には無いのではないでしょうか!?もちろん、実際にハチミツが入っているわけでもなく厳選されたバーボン樽(セカンドフィルアメリカンオーク)にて熟成させた恩恵が如実に出ている訳ですが、この様な抜きん出た個性が、数々のブレンデッドウイスキーの味わいを支えているのでしょう。
いつも飲んでいるウイスキーのキーモルトに「もしかしたらブレンドされているかもしれない!?オールドプルトニー」、ハチミツ感や一風変わった味わいのモルトをお探しの方は是非、一度お試しください!!
最後までお読み頂きありがとうございました。
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