タリスカー10年の特徴を簡単にまとめると
このウイスキーについて
今回は、スコットランドにある「スカイ島」のシングルモルト「タリスカー10年」をご紹介します。
スコットランドには大小700以上の島々がありますが、その中でも2番目に大きいとされる「スカイ島」はスコットランドの北西部に有り、人口は1万人程度。霧が多く岩盤によって構成されている島です。
現在、スカイ島には2つの蒸溜所がありますが、以前から「スカイ島」で有名な蒸溜所は「タリスカー蒸溜所」です。
それでは次に「タリスカー蒸溜所」について簡単に解説していこうと思います。
タリスカー蒸溜所
タリスカー蒸溜所は1830年創業、近隣のアイグ島から渡島してきたマカスキルの兄弟によって農業を営む傍ら、ウイスキーの蒸溜を行っていた事が始まりとされています。
「タリスカー」とは、ヴァイキングの古い言語「ノルド語」で「傾いた大岩」という意味らしく、マカスキル兄弟が蒸溜所を建設する際に宿泊していた「家」の名前だそうです。
タリスカー蒸溜所は、現在までに様々な所有者に渡りましたが現在のオーナーは「MHD社」ジョニーウォーカーを手掛けるディアジオ社が運営を行っています。
世界一売れているウイスキー「ジョニーウォーカー」のキーモルトとして重要な役割を担っているタリスカー。ディアジオが扱うシングルモルト部門でも、売上高は1位だそうです。
タリスカー蒸溜所の特徴
それでは、タリスカー蒸溜所の特徴について見ていきましょう。
タリスカー蒸溜所では、使用する麦芽全体の75%がピーテッド麦芽を使用しています。そして麦芽の糖化工程を行い、次に発酵という段階に進みますが発酵槽にタリスカー蒸溜所のこだわりがあります。
木製の発酵槽
タリスカー蒸溜所では、6基のウォッシュバック(発酵槽)を使って醪を造っています。そして、醪を造る発酵槽に自社のこだわり「木製の発酵槽」を使っているんです。
木製の発酵槽にすることで、蒸溜所特有の酵母菌や乳酸菌が住み着きその蒸溜所らしさを与えてくれると言われています。この辺は、酒蔵による日本酒造りと同じですね!!
L字に曲がったアームの蒸留器
そして、出来た醪を蒸溜するポットスチルは現在全部で5基。初溜用のウォッシュスチルが2基と、再溜用のスピリットスチルが3基という構成です。
タリスカー蒸溜所では、1928年までアイルランドと同じく「3回蒸溜」を行っていましたが、現在は廃止され、再溜用のスピリットスチルのアームがL字に折れ曲がっているのが特徴的です。
ワームタブ式の冷却装置と水不足問題
ただ、このワームタブ方式は効率が悪く殆どの蒸溜所では廃止されてしまっています。また、水を大量に使うので保水力の無いスカイ島では不向きな冷却方法でもあります。
冷却だけでなく、仕込みにも蒸溜所は大量の水を使うます。岩盤が多く保水力の無いスカイ島では蒸溜所は常に水不足という悩みが有るんですね・・・。
しかし、近年タリスカー蒸溜所では冷却に海水を使うシステムを導入し晴れて水不足の問題は解消したそうです!!その事により、生産量も年間190万リットルから330万リットルへ増産出来るようになりました!!
熟成について
では次に、熟成に使われる樽の特徴などについて簡単に解説致します。
タリスカー蒸溜所では基本的に「熟成がおだやか」なリフィル樽を熟成に使用します。
リフィル樽とは、新品の樽から熟成に使う回数として3回目に使用される樽の事です。
新樽では主にバーボンやシェリーが詰められ、次にスコッチウイスキーが詰められます。そして、スコッチで使われた樽を再度熟成に使う工程をリフィルと呼びます。
2回熟成に使用されているので、樽自体の成分は和らぎ熟成も穏やかになる傾向があるんですね!!
そして、リフィル樽に詰められたニューメイク(ウイスキーの素)は、スカイ島の厳しい環境と海風の影響を受けながら「その時」が来るまで樽の中で長い眠りにつきます。
厳しい環境がもたらす熟成の恩恵
原酒は、波しぶきや海風など海の影響を大きく受け熟成していきます。つまりタリスカーのモルトは「海によって造られた」という自然への敬意を評して、ボトルには「MADE BY THE SEA」と表記されています。
ピーテッド麦芽を使用している為、スモーキーな香りに潮気が絶妙に調和し「タリスカー」ならではのスパイシーな風味のシングルモルトが完成します。
黒胡椒を振りかけて飲む「スパイシーハイボール」という斬新な飲み方を提案している「タリスカー10年」。今回もいつものように3種類の飲み方でレビューしてみたいと思います。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- 潮の香り、ヨード、レモン、胡椒、オガクズ、紅茶
味わい
- スパイシー、柑橘の酸味、甘み、そして皮のビター
感想
最初はストレートから飲んでみます。香りは海の近くで感じる磯っぽさに軽いヨード「まさに海」を感じます。ただ、アイラモルトにあるような強いヨード香ではなく、もう少しドライで塩っ辛い印象のヨード感です。さらに、柑橘と胡椒のスパイシーな刺激、そしてオガクズのような樽感に発酵っぽさを感じる紅茶を感じます。
口に含むと、ピリッとしたスパイシーな味わいが広がり、樽のモルティーさと相まってなんとも言えない絶妙なバランスで口の中が満たされます。中盤からレモンやライムといった柑橘の酸味と甘味がジンワリと広がり、アフターにかけては皮の部分のビターが膨らんで、潮気にレモンといった相性の良い味わいが一連の流れになっています。
大陸系スモーキーの「アードモア」よりしっとりしていて、アイラよりドライでフルーティーな印象です。煙系としては「飲みやすい」部類かと思います。また、値段に関してもコストパフォーマンスに優れていると思います。
ロックで飲んでみる
香り
- 優しい潮気とスモーク、ヨード、未熟の果実(青リンゴ、洋梨)
味わい
- 果実や麦の爽やかな甘み、強めのビター
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。タリスカーをロックで飲むのは初めてかもしれません。香りは、優しい潮気とヨードに軽く煙たいスモーク感があり、青リンゴや洋梨といった爽やかな果実感があります。
口に含むと、爽やかな果実の甘酸っぱさがきて麦汁の優しい甘さを感じます。そして追いかけるように柑橘のギュッとしたビターが膨らみ、余韻はスパイシーな刺激とヨード感が少しずつ消えていきます。
氷を入れただけで、ストレートの時に感じた柑橘が一気にジューシーで甘い果実感に変わったのには驚かされました。しかし、ビター感がやや強すぎる印象があり個人的にはストレートの方が好みで「タリスカーらしさ」があると思います。
ハイボールで飲んでみる
香り
- バニラ、マンゴー、ピート、ヨード、レモン
味わい
- 潮気の効いたスモーク感、スパイシー&ビター
感想
最後はハイボールです。ブラックペッパーを振りかける「スパイシーハイボール」を提案しているだけに期待は高まります。ストレートの時には、胡椒の様な香りと味わいが感じましたがハイボールではどうでしょうか!?
香りは、バーボン樽由来のバニラの甘い香りがしてマンゴーのトロピカルフルーツと続きます。加水は炭酸によって進みましたが、ここで南国フルーツを感じるのも驚きました。甘い香りが主体ですが、アクセントにピートやヨード、そしてレモンなどの柑橘も感じます。
口に含むと、潮気のあるスモーキーなフレーバーが口いっぱいに広がりトロピカルフルーツの甘さと柑橘のビターが心地よいアクセントになっていて、時折すりおろしたリンゴの様な優しい甘さを感じます。余韻にかけてはスパイシーさとビターに支配されますが、どこかふんわりとした甘みも残りドライながらも奥深さを感じました。
モルトに含まれるフルーティーな香味が、炭酸と加水によって鼻で感じやすくなったのだと思いますが、飲み方を変えるだけで、劇的に変化するのもウイスキーの楽しさの一つと言えるでしょう。
まとめ
厳しい環境と海の影響を大いに受けたシングルモルト「タリスカー10年」をレビューしてみました。今回のボトルはラベルが違う旧製品で現行とは少し味が違うかもしれませんが、昔から「ラベルが変わってもずっと美味しいタリスカー」として有名で、品質の高さは折り紙付きです。そのうち現行品との比較もしてみたいと思いますが、慣れ親しんだ旧ラベルの方を先行してレビューしてみました。
ストレートからロック、そしてハイボールと飲み方を変え様々な味わいに変化しましたが、どの様な飲み方をしても美味しく、10年という「熟成感と未熟さのバランス」が際どいながらも完成している味わいは、とてもコストパフォーマンスに優れていると思います。
メーカーの謳う「スパイシーハイボール」も刺激があって夏やBBQの際にはピッタリですが、粒山椒をミルしてかけると刺激よりも山椒の芳しい香りがクセになり和食にも合うのでオススメです。
シングルモルトながら求めやすい価格ですので、スパイスの効いたスモーキーなハイボールが好みの方はもちろん、初心者の方にも高くないハードルだと思いますので是非、試してみて下さい!
最後までお読み頂きありがとうございました。
人気ブログランキング
コメント