このウイスキーを簡単にまとめると
このウイスキーについて
今回ご紹介するのは「アラン バレルリザーヴ」です。アランは近年非常に人気が高まっており、以前は地味な印象が漂っていたブランドも、ボトルデザインの刷新とともに味わいが豊かになり、多くのファンを魅了するようになりました。
「アラン バレルリザーヴ」は、ファーストフィルのバーボン樽で熟成された原酒を使用して造られたシングルモルトウイスキーで、アランを初めて試すには最も適した銘柄の一つです。
アラン諸島とロックランザ蒸留所
アランモルトは、スコットランドの美しい西側に広がるアラン諸島に位置する蒸留所で、具体的には1994年に創設されたロックランザ蒸留所で生まれるウイスキーを指します。この小規模な蒸留所は、クラフト蒸留所のパイオニアとしての評判を築いています。以前は「アイルオブアラン蒸留所」として知られていましたが、2019年に「ロックランザ」へと改名されました。
2018年には、同じくロックランザを運営する企業が手がけ、アラン島の南部にあたる場所に新しい蒸留所「ラグ蒸留所」が誕生しました。これにより、アランモルトは2つの蒸留所を有するユニークな存在となりました。アラン諸島のウイスキー業界には、この2蒸留所体制が新たな活気をもたらし、将来にわたって期待が寄せられています。
ロックランザ蒸留所について
アラン島の特徴とウイスキー製造の環境
アラン島は、スコットランドのクライド湾内に位置し、面積約430平方キロメートルを誇る美しい島です。この島は英国王室の避暑地としても有名であり、穏やかな気候と安定した雨量が特徴とされています。こうした環境は、ウイスキーの製造に非常に適しており、アラン島独特の荒涼とした大地、そして豊かな雨量から得られる水源は、ウイスキーづくりにおいて不可欠な要素となっています。
現在、アラン島には「ロックランザ蒸溜所」と「ラグ蒸溜所」の2つの蒸溜所が存在しています。しかし、1800年代にはアラン島内には驚くほど多くの50軒もの蒸溜所があり、ウイスキーの製造が盛んでした。ところが、当時の厳しい課税政策が原因で製造が次第に途絶え、1837年にはラッグ蒸溜所の閉鎖を最後にアラン島でのウイスキー製造が停止しました。
ロックランザ蒸留所の誕生と歴史
ロックランザ蒸留所の創立者であるハロルド・カリー氏は、スコッチウイスキー業界のベテランであり、シーグラム社やペルノー社での経験を積んでいました。彼は70歳にして、アラン島におけるウイスキー蒸留所の創設を夢見て実現させました。資金に関する課題に直面した際、息子のアンドリューはクラウドファンディングの発想を活かし、資本を集め、債権を発行して投資家を募りました。
アンドリュー氏は債権を購入した人々に対して、将来的に優先的にウイスキーを受け取る特典を提供し、当時のアラン蒸留所の再興に成功しました。現在、30年以上が経過し、ロックランザ蒸留所となった今も島の住民や創設者ファミリー、そして熱心な投資家たちの情熱に支えられ、再びウイスキーの製造を行っています。
当時としては珍しい「クラウドファンディング」を行うなど、創設者の優秀さとウイスキーに対しての情熱が伺えます。
アラン バレルリザーヴの製法
ウイスキーの製造工程
ロックランザ蒸留所では、徹底的なこだわりをもってウイスキーが製造されています。主原料として、アルコール収率が優れたオプティックとして知られる大麦麦芽が採用され、これは効率的で品質の高い麦芽であり、製品に特有の特徴を生み出します。蒸留器には初留2基、再留2基が使用され、ウォッシュバックには4槽が活用されています。
また、アラン島固有の湧水であるロッホ・ナ・デューの湧水が仕込み水として使用されています。この湧水はウイスキーの味わいにおいて重要な要素となり、製品に独自のアラン島らしい風味を与えています。
蒸溜所のスタッフとマスターディスティラー
ロックランザ蒸留所では、5人のスチルマンが樽や蒸溜器の管理に携わり、最高の原酒を生み出すために精力的に取り組んでいます。現在のマスターディスティラーはジェームス・マクタガート氏であり、彼が原酒のヴァッティングレシピや最終的な味わいを決定しています。このチームの手により、「アランバレルリザーヴ」はとても高品質なウイスキーとして生み出されています。
バレルリザーヴの使用原酒
2019年に新しくラベルがデザインされ、発売された「アラン バレルリザーヴ」は、すべてが1stフィルバーボンバレルで熟成された原酒からなっています。熟成期間は7~8年で、アランのエントリーボトルとして、どのような飲み方でも楽しめる一本となっています。
ファーストフィルとは、ウイスキーを初めて詰める樽のことで、前に詰められていたお酒の影響がとても出やすいのが特徴!!
現在、熟成樽の主流の一つであるバーボン樽の特性がよく出た味わいになっているんですね!!
では、今回もストレート、ロック、ハイボールの3種類の飲み方で味と香りをみていきましょう!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- 青りんご、洋梨、梅ガム、バニラ、ビスケット、かすかにスモーク
味わい
- スパイシー、ジューシーな果実香の余韻
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。
香りは青リンゴや洋梨などの青い爽やかな果実香が漂っており、梅ガムのような酸味も感じられます。また、奥にはバニラの甘い香りとビスケットの香ばしさが広がり、僅かにですがスモーキーなニュアンスも漂います。
口に含むと、非常に軽やかで青りんごの爽やかな果実の風味が口いっぱいに広がり、スパイシーな要素が徐々に膨らんできます。そして、ビターな要素が追いかけてくるとスパイシーな風味と混じり合い、余韻はシトラスのスッキリとした爽やかな香りがゆっくりと消えていきます。
フルーティーでクセのないアランモルトは、従来のウイスキーに対するイメージを払拭してくれる爽やかな味わいです。初めてシングルモルトを試す方や、女性にも好まれる味わいだと思います。何より、青りんごのジューシーな果実感は飲み疲れることもなく、ストレートでも十分に楽しめます。
とっても飲みやすく、フルーティーで爽やかな味わいは初心者からコアなファンまで楽しめる完成度の高い味わいです!!
ロックで飲んでみる
香り
- 青りんご、グレープフルーツ、洋梨、ビスケット、バニラ
味わい
- フルーティーでシトラス香るビターな余韻
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは青りんごや洋梨とストレートの時と同様ですが、ややシトラスの風味が前に出てきて、グレープフルーツを彷彿とさせるニュアンスが漂います。また、加水が進むとビスケットの香ばしさやバニラの甘い香りも奥から感じられ、何の引っかかりも感じられません。
口に含むと、爽やかでジューシーな果実の香りと酸味が口いっぱいに広がり、奥からシトラスのスッキリとしたビターが膨らんできます。そして、スパイシーが追いかけてくるとシトラスを再び強く感じ、余韻では柑橘の皮を連想する爽やかな果実香がゆっくりと消えていきます。
全体の味わいはビターな傾向に変化しますが、ギュッとした強いビターではなく、あくまでジューシーで爽やかな味わいが広がります。普段はあまりロックでは飲まないのですが、この味わいなら食事中でも違和感なく楽しめそうです。
水と麦、そして酵母と樽熟成で何故こんなにもフルーティーで爽やかな飲み物が出来るのか!?ウイスキーの不思議について改めて考えさせてくれる味わいでした!
ハイボールで飲んでみる
香り
- シトラス、青りんご、若葉、麦、オーク、穀物の皮
味わい
- シトラスの爽やかなビターが広がる
感想
最後は、ハイボールで飲んでみます。
香りは弱まりながらも、シトラスをメインとした果実香が漂い、時折フレッシュで若葉を連想させる香りも感じ取れます。また、麦の甘く香ばしい香りとともに、オークのウッディなニュアンスが漂い、フルーティーでありながらしっかりとしたモルトの香ばしさも感じられます。
口に含むと、シトラスの爽やかなビターが広がり、優しいスパイシーさが追いかけてきます。そして、アフターにかけて麦の香ばしさとジューシーな果実香が広がり、余韻は淡くシトラスの皮を感じさせるビター感がスッと消えていきます。
ハイボール専用といっても良いくらいに、炭酸との相性もよく、爽やかでジューシー、若葉を思わせるフレッシュな香りとともに、何杯でも飲めてしまいそうです。ウイスキー初心者はもちろん、ボリューム感のあるモルトの口直しにもオススメです!
角瓶に代表されるようなハイボールではなく、もっと上品でジューシーな味わいが楽しめます。アテがなくても十分すぎるくらいに美味しいハイボールでした!!
まとめ
「アラン バレルリザーブ」のレビューでした。
アランモルトのレギュラーラインナップの中で、入門ボトルとして展開される「バレルリザーヴ」は、その完成度が高く、ノンエイジ仕様ながら非常にスムースで、若い原酒が使われていることを感じさせない味わいとフルーティーさに溢れています。
近年のアランは、ボトルデザインの刷新だけでなく、味わいにもしっかりと注力されており、そのために飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が高まっています。
ストレートからハイボールまで美味しく楽しめ、アランのキレイな味わいはどのような飲み方をしても満足できるボトルとなっています。
他のラインナップも、「アランモルト10年」を筆頭に「シェリーカスク」や「クォーターカスク」などがリリースされていますが、初めてアランを試されるなら、ナチュラルな味わいが魅力の「アランバレルリザーヴ」から試してみるのが良いと思います。
人気のため、少し入手が難しい状態ですが、もし見かけた際は是非お試しください。
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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