このウイスキーの特徴を簡単にまとめると
このウイスキーについて
今回ご紹介するウイスキーは「シングルモルト駒ヶ岳2022エディション」です。
「シングルモルト駒ヶ岳」は良質な水と豊かな自然に囲まれた中央アルプス山系駒ヶ岳の麓に位置する「マルス信州蒸溜所」で造られています。
「マルス信州蒸留所」を運営しているのは、鹿児島県の焼酎造り酒屋「本坊酒造」。近年は同じ鹿児島の地に新たに建設した「津貫蒸留所」でも注目を集めています。
では、製造元となる「マルス信州蒸留所」について見ていきましょう!!
マルス信州蒸溜所について
マルス信州蒸留所の歴史
自然豊かで良質な水が流れる長野県中央アルプス駒ヶ岳の山麓標高798mの地に「マルス信州蒸溜所」はあります。
運営元である「本坊酒造」がウイスキー製造免許を取得したのが1949年。「いつか日本の風土を活かした本物のウイスキーを造りたい」と夢を抱き続け、1960年に蒸留所の前身となる「マルス山梨ワイナリー」を設立しました。
「マルス山梨ワイナリー」はワインとウイスキー製造のための工場で、設計を行った人物「岩井喜一郎氏」は「竹鶴ノート」を元に設計したそうです。
岩井喜一郎と竹鶴政孝の関係などについて
当時、「摂津酒造」に所属していた「竹鶴政孝」と「岩井喜一郎」。摂津酒造の「ウイスキー造り」を始めるにあたり、竹鶴氏の上司である岩井氏は「スコットランド」でウイスキー造りを学んでくるよう命じます。
竹鶴氏は勤勉に励み、紙とペンだけでスコットランドから本格的なウイスキー造りを日本に持ち帰りました。この時のノートが有名な「竹鶴ノート」で、日本のウイスキー造りの礎となった重要な「実習報告書」です。
その後、竹鶴氏はサントリーの「山崎蒸留所」の初代工場長に就任しますが、サントリーの創業者「鳥井信治郎」と意見が合わず自身の理想を求め北海道の地でニッカウヰスキーを設立しました。
その一方、岩井喜一郎は本坊酒造の「本坊蔵吉」に師事され本坊酒造の顧問に就任。ウイスキー部門の役目を任され、竹鶴氏の「実習報告書」をもとに山梨県に「マルス山梨ワイナリー」建てたという経緯があります。
「マルス山梨ワイナリー」設立後、さらなる理想の地を求めて1985年長野県に「マルス信州蒸溜所」が創業しました。
その後、1992年にウイスキー需要低迷によって一旦は稼働を停止しますが、世界的にジャパニーズウイスキーが評価され、需要が回復傾向にあった2009年に蒸留再開を決意し2011年の2月より再び再稼働し現在に至ります。
マルス信州蒸留所の製法
マルス信州蒸留所では、1日に約1.1tの麦芽を使います。この麦芽はモルトスターのCRISP社製の製麦済み麦芽で、これをステンレス製の容量6,000Lの糖化槽に入れ「麦汁」を造ります。
出来た「麦汁」は次に発酵の段階に移り、マルス信州蒸留所にはステンレス発酵タンク6,000L×3基、木槽発酵タンク6,000L×3基があります。
発酵によって出来た「醪(もろみ)」はウイスキーの姿へと変わるために「蒸留」という工程に移ります。
蒸留釜は「初溜釜」と「再溜釜」共に1基ずつあり「ストレートヘッド型」でラインアームは下向きに設置されています。この形状ではヘビーな原酒が出来上がると言われています。
蒸溜によって出来たスピリッツは樽に詰めて熟成庫へと運びます。マルス信州蒸留所で使う樽には様々な種類がありバーボン樽やシェリー樽をはじめ、自社のワイン熟成に使われた樽もあります。
熟成庫は近代的なラック式で、標高の高い冷涼な環境で様々な樽に詰められた原酒は長い期間「熟成」の時間をここで過ごします。
マルス信州蒸留所の意外な特徴(減圧蒸留)
マルス信州蒸留所の特徴の一つに798メートルという標高の高さがあります。標高が高くなると大気圧は下がっていきますね。
同時に気圧が下がると液体の沸点も下がり、蒸留をする際にはより低い温度でアルコール蒸溜ができるようになるので、温度上昇によって起こる風味の変化を減らすことが出来るんです。
この様な通常の蒸溜に比べ低温で風味豊かな原酒を蒸溜する技術を「減圧蒸溜」といい、スピリッツを蒸溜する技術として、焼酎やブランデーなどでは盛んに導入されています。
「シングルモルト駒ヶ岳2022エディション」について
「シングルモルト駒ヶ岳2022エディション」は年に一度リリースされる限定品の一つで、バーボンバレルで熟成させた原酒を主体に、シェリーカスク熟成原酒とポートカスク熟成原酒でアクセントをつけた2022年限定瓶詰のシングルモルトウイスキーになります。
ウッディでバニラ香が特徴の「バーボン樽」で熟成した原酒に、華やかな香りが特徴のシェリー樽原酒と甘くドライフルーツのような香りが特徴のポートワイン樽原酒を加えたシングルモルト。
では、実際に3種類の飲み方でどのようなウイスキーに仕上がっているのか”味”や”香り”などレビューしていきますので、最後までご覧ください!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- トロピカルフルーツ、柿、グレープフルーツ、おがくず、カスタード
味わい
- ジューシーな果実感、柿、柑橘の皮
感想
まずは、ストレートで飲んでみます。
香りは南国フルーツのヌタっとした果実感とグレープフルーツの爽やかな酸味があります。また、製材所などで感じるオガクズの木の香りと、クリーミーな甘さのカスタードっぽい甘い香りが奥の方にあり、大手2社とは明らかに違うキャラクターを持っています。
口に含むと、シュワッとした酸味が広がって柑橘の皮のビターが膨らみます。公式のテイスティングノートにもある「柿」の甘さもじんわりと感じられ、アフターはカラメルやシェリーっぽい華やかさとビターが余韻となって残ります。
味と香りは、サントリーやニッカと違う独特の個性を持っていて、本場スコッチと言われても遜色のない力強さを感じました。ノンエイジではありますが値段相応で決して高くない品質だと思います。
アルコール度数50%とかなり強めですが、シトラスの爽やかな香りがあるので気負いする必要はありません!初めてマルスウイスキーを飲まれる方はサントリーやニッカとは明らかに違うキャラクターを感じれると思います。華やかで力強い味わいの素晴らしいジャパニーズウイスキーです!!
ロックで飲んでみる
香り
- ハチミツ、柿、トロピカルフルーツ、木片
味わい
- 柑橘の皮、タンニン、柿の甘さ
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは、ハチミツの甘い香りがグラスの中いっぱいに広がって柿の素朴な果実感、そして少し奥まった印象のトロピカルフルーツ、そしてオガクズの様な直接的な木の香りからやや湿った感じの木片の香りが感じられます。
口に含むと、グレープフルーツなどのシトラスとビターがグッと舌に広がりブドウのタンニン、そして柿の優しい甘さが広がります。中盤からスパイシーな味わいが広がって余韻はビター。トロピカルフルーツの脂っぽさも僅かにありますが、主役はキリッとしたビターが強くモルトの香ばしさよりも苦味や渋みが強調され、硬い印象が残りました。
オンザロックはキリッとした印象が強いです。香りはフルーティーで味わいはとても引き締まった強めのビター。ウイスキーの持つウッディな香りよりも、柑橘の皮など苦味が強く感じられるので、硬派な味わいに思えました。
ハイボールで飲んでみる
香り
- グレープフルーツ(シトラス)、白ワイン
味わい
- グレープフルーツの爽やかさ、心地よいビター感
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りはグレープフルーツなどのシトラスが主体となってとっても爽やか!!また、白ワインの様な少し渋みやナッツ感のある香りも楽しめます。
口に含むと、フレッシュフルーツのジューシーな甘酸っぱさが広がり、追いかけるようにして優しいビターが膨らみます。そして、白ワインのような酸味と少しウッディな香りが隠し味となって爽快さの中にも気品のある重厚さを併せ持っている感じがとても美味しいハイボールです。
バーボン樽主体の味わいに、ブレンドレシピ通りのシェリーの華やかさ、ポートワインのポテっとした甘みを感じることが出来ます。グレープフルーツのジューシーな感じは何杯でも飲めてしまいそうになり、危険です(笑)
まとめ
マルスウイスキーの「駒ケ岳2022エディション」のレビューでした。
ジャパニーズウイスキーの二大巨頭「サントリー」や「ニッカ」に比べて地味な印象のある「マルスウイスキー」ですが、近年の受賞歴や新設された「津貫蒸留所」など話題性で徐々に人気も高まってきています。
日本ウイスキーの父である「竹鶴政孝」をスコットランドへ送り出し、サントリーの地盤が構築され、ニッカウヰスキーの誕生などジャパニーズウイスキーの礎となった人物「岩井喜一郎」のスピリットが宿っているウイスキーでもあります。
ジャパニーズウイスキーのブームで日の目をみる形になりましたが、品質の高さはとてもレベルの高いものになっています。「サントリー」、「ニッカ」に続くもう一つのジャパニーズウイスキーの巨塔を是非、一度味わってみてください。不思議と感慨深いものを感じれるはずです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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