数あるシングルモルトの中でもスモーキーな味わいで人気のアードベッグ!!
今回は、2023年アードベッグデーに先駆け限定発売された「アードベッグ ヘビーヴェーパー コミッティ限定ボトル」をご紹介致します。
アードベッグ ヘビーヴェーパーを簡単にまとめると
アードベッグ ヘビーヴェーパーについて
「アードベッグ ヘビーヴェーパー」は2023年のアードベッグデーに合わせてコミッティ(会員)限定と通常版の2種類が発売されたアードベッグの限定ボトルになります。
「ヘビーヴェーパー」とは「重い蒸気」という意味で、蒸留工程の際に湧き上がる蒸気は重いものと軽いものがあり、この「ヘビーヴェーパー」は重い蒸気のみを抽出して造られています。
誕生のキッカケとなったのは、ウイスキーに対しての探究心旺盛なアードベッグの製造責任者である「ビル・ラムズデン博士」が、アードベッグの蒸留器から「ピュリファイアー」を取り除いたらどんな味になるだろう!?」という発想から生まれました。
「ピュリファイアー」とは、蒸留器の上部に取り付けられた別名「精留器」といわれるものです。蒸留器の釜から上がった蒸気はネックからラインアームへと上がって行きますが、蒸気にも様々な種類があり、軽い蒸気と重い蒸気があります。
アードベッグでは、軽い蒸気だけを抽出してニューメイクが造られる為、重い蒸気は「ピュリファイアー」内から再び釜の中へ戻されているのです。
アードベッグはとてもスモーキーな味わいで有名ですが、トロピカルフルーツのような香りがあり軽い酒質なのが特徴のアイラモルト!!
アードベッグの軽やかでフルーティーな味わいには「ピュリファイアー」がとても重要な役割を果たしているんですね!!
そこで、「戻されるはずの重い蒸気を使ってウイスキーを仕込んだらどんな味わいになるか!?」という発想によって「アードベッグ ヘビーヴェーパー」は誕生しました。
現在、スコットランドでは「ピュリファイアー」が設置されている蒸溜所はアードベッグの他にもいくつかありますが、全てに設置されているわけではありません。そもそも、「ピュリファイアー」は蒸気の分類する他に、温度管理やフレーバーを引き立たせる役目などがありますが、必要ないと判断する蒸溜所も数多くあります。
ピュリファイアー自体は銅製で使用していくうちに厚みが薄くなり交換というメンテナンスも必要になってくるため、その際に味わいが変わってしまうなどのリスクを考えれば設置しないほうが良いと考える蒸溜所もあるからです。
いずれにせよ、ピュリファイアーを使用していないアードベッグの味わいを楽しめるというとてもユニークなボトルが「アードベッグ ヘビーヴェーパー」です!!
そもそもアードベッグ(蒸溜所)とは
アードベッグ蒸溜所はスコットランドにあるアイラ島にあり、非常にピーティーで強烈なスモーキーフレーバーが漂うクセのある味わいが特徴です。しかし、酒精は軽く意外なほどフルーティーな香味を持っているため、世界中で熱狂的なファンがいます。アードベッグ蒸溜所は、このファンに対して最大限の敬意を評して、いつしか「アードベギャン」と呼ばれるようになりました。
初心者の方はもちろん、ウイスキーを飲み慣れていない人は、煙たさとヨード香に鼻を背けてしまう事もしばしばありますが、飲んでみると煙たさの奥にトロピカルな香りを感じることが出来ます。そして、いつの間にか”アードベッグの虜”になっているかもしれません。
スモーキーなのに軽くてフルーティー、他のアイラモルトにはない独特の個性が世界のファンを魅了しています!!
ひと目見ただけで惹かれてしまうボトルとロゴ、アードベッグには人々を引き付ける何かがあるんですね!
アードベッグデーについて
アードベッグ・デーとは、毎年5月の最終週から6月の第1週にかけて行われるウイスキー・フェスティバルの一環です。このイベントでは、アイラ島内外から集まる熱心なモルトファンのために、毎日異なる蒸留所をオープン・デーとして特別に開放します。そして、そのクライマックスとなるのが、毎年6月の第1週土曜日に行われる「アードベッグ・デー」です。
2012年からは、アイラ島だけでなく、世界中の熱狂的な「アードベギャン」として知られるアードベッグファンと共に、世界中の場所で同時開催されるようになりました。この特別な日、皆がアードベッグで乾杯し、楽しいひとときを共有しています。それが「アードベッグ・デー」です。
アードベッグ ヘビーヴェーパーの製法
「アードベッグ ヘビーヴェーパー」は「ピュリファイアー」を通さない重い蒸気、しかも「最も重い蒸気」だけを抽出したニューメイクから出来ています。熟成に用いた樽は”ファーストフィルのバーボン樽”と”セカンドフィルのバーボン樽”で、非常にシンプルに原酒の味わいが楽しめる仕様となっています。
つまり、スタンダードな「アードベッグTEN」と比べることにより、ピュリファイアーの役割を実感できるというアードベッグファンにとっては非常に興味深い内容のアードベッグとなっているのです!!
軽い蒸気で造られるスタンダードな「アードベッグTEN」と、重い蒸気の「ヘビーヴェーパー」!!
蒸気の違いによって、味わいはどのように変わるのでしょうか!?とても気になりますね!?
では、今回もストレート、ロック、ハイボールと3種類の飲み方はもちろん!スタンダードな「アードベッグTEN」との違いなど飲んで確かめていきましょう!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- タール、石炭、オイル、シトラス、ハーブ、スモーク、ダークチョコ、土埃
味わい
- 重く重厚な味わい、石炭感のあるスモーキーさ
感想
まずは、ストレートから飲んでみます。
香りは、石炭やタールといった重いスモーク感が漂い、工業オイルも混ざった印象があります。しかし、奥深くにシトラスやユーカリのようなニュアンスも感じられ、アードベッグならではのフルーティーさもしっかりと感じられます。
口に含むと、石炭やタールの強烈なスモークが口いっぱいに広がります。飲み慣れていない方には、その強さでむせ返るかもしれませんが、通常のアードベッグにはない非常に強いスモーキーフレーバーが特徴です。
その強いスモーク感の中で、すぐにスパイシーなノートが広がり、その後にビターな要素が追いかけてきます。そして、煙たさとスパイシーさが収束する頃になると、硫黄やゴムのような特徴的なニュアンスが現れ、余韻ではビターさとスモーキーさが絶妙に交じり合いながら徐々に消えていきます。
過去にもいくつかのアードベッグを試した経験がありますが、これほどまでに煙たく石炭やタールのニュアンスがはっきりと表れるものは珍しいです。長年のアードベッグファンであっても納得できる味わいだと思います。
まさに爆煙アードベッグ!!ただ煙いだけでなく、重くどっしりとしたスモーク感は異質でアードベッグに可能性を感じさせてくれました!!
ロックで飲んでみる
香り
- スモーク、硫黄、ゴム、石炭、タール、ハーブ、シトラス、埃
味わい
- 強スモーク、強ビター
感想
次はオンザロックで飲んでみます。
香りは、強烈なスモークで石炭やタールが交じり合っています。また、ストレートの際に感じたサリファリーな要素が強まり、硫黄やゴムのニュアンスが強く感じられます。
口に含むと、力強いスモークの香りが満ち溢れ、石炭やタールのニュアンスが広がります。そして、ビターが膨らみ続け、石炭やタールが徐々に落ち着いていくと、微かにトロピカルなニュアンスが香り立ち、スモーキーな風味がゆっくりと消えていきます。
ロックにしても煙たさは変わらず、硫黄やゴムの要素が際立った味わいに変化します。ストレート以上に強烈な印象を受けました。また、氷が溶けて加水が進むと、微細な埃のような感触が増してくるのも興味深い特徴です。
ピュリファイアーを通していない分、硫黄やゴムっぽさがバーボン樽熟成ながら感じることが出来ます。蒸留スタイルの変化は如実にウイスキーの味に影響が出るんですね!!
ハイボールで飲んでみる
香り
- スモーク、タール、石炭、硫黄、ゴム
味わい
- 強スモーク、心地よいヨード香
感想
最後にハイボールで飲んでみます。
香りは、弱まっていますが石炭やタール感のあるスモーキーな香りが漂い、硫黄やゴムっぽさもしっかりあり、とても飲み物とは思えない香り立ちです(笑)
口に含むと、一気に石炭やタールを感じるスモーキーフレーバーが膨らみ、ビターを感じながらハーブ(ユーカリ)やヨード(磯っぽさ)とモルト由来の香ばしい甘さを僅かに感じます。そして、薬品っぽいニュアンスが現れ、スモーキーな余韻はハイボールでも長く続きます。
ストレート、ロック、ハイボールと飲み勧めてきましたが、ハイボールでようやくアイラモルトらしいヨードを感じられ、同時に煙たさやサリファリーな印象とのバランスがまとまった感じがします。ただ、アイラモルトを飲み慣れていないと一口で敬遠してしまうとんでもなくクセの強さがあります。
度数も下がり飲みやすくはなりますが、石炭っぽいスモークと、硫黄やゴムのサリファリーな感じはアイラ好きでないと楽しめないかもしれません。とにかく煙い・・・!!
アードベッグTENとの味の違い(飲み比べ)
香り
- マンゴー、バニラ、ハチミツ、スモーク、ピート、タール、ヨード
味わい
- シトラス香るフルーティーな甘さとスモーキーな香味
感想
レギュラーの「アードベッグTEN」をストレートで飲み比べてみました。
香りは、トロピカルフルーツの香りにバニラやハチミツの甘さがあって、スモーキーな香りはタールやピートのニュアンスがバランスよく出た心地よい煙たさです。
口に含むと、シトラスやトロピカルフルーツの果実香が膨らんで、同時にスモーキーさが追いかけてきます。「ヘビーヴェーパー」と比べると非常に軽やかでフルーティーな香味を感じ、甘さも際立ってシロップのように思えるほどです。
「ピュリファイアー」の有無による酒精の違いは、こうして飲み比べてみると明らかで、アードベッグがアイラモルトの中でも特筆してフルーティーなのがよく分かりました!
飲む順番も大切ですが、「アードベッグTEN」がいかに軽やかでフルーティーなのかがよく分かりました!やはり「ヘビーヴェーパー」はとんでもなく煙たいウイスキーでした!!
まとめ
アードベッグの限定ボトル「ヘビーヴェーパー」のレビューでした!
その名の通り「ピュリファイアー(精留器)」の有無による蒸気の違いに焦点を当てた、非常にユニークなアードベッグです。フルーティな味わいも楽しめますが、何よりも強烈な煙の香りが特徴で、他のアードベッグとは一線を画しています。フェノール値という煙の濃度の尺度では、他にも高いフェノール値を持つアイラモルトはありますが、ヘビーヴェーパーは石炭やタール、そしてサリファリーな香りといった要素によって、これまでにない圧倒的な煙の強さを実現しています。
今回試飲したボトルは、「コミッティ限定」のカスクストレングスで、アルコール度数50.2%と高めでした。一方、通常版は加水されており、アイラモルト特有のヨードのような風味が感じられるようです。
他のレビューを見ても、通常版の方がより煙っぽさが感じられるようです。どちらも数量限定ですが、アードベッグのファンで物足りなさを感じていた方や、アードベッグらしい特徴が欠けてしまった味わいに興味がある方には、十分に満足できる内容だと思います。もちろん「アードベギャン」にとってもおすすめです。
このヘビーヴェーパー、いったんレギュラー商品として販売しても良いのではないか、と個人的には考えますが、実験的な要素も強く現段階では限定リリースとなっていますので、気になる方は早めにチェックしておいた方が良さそうです!!
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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