このウイスキーの特徴
- ウイスキー属性:ブレンデッド
- メーカー:マルスウイスキー(本坊酒造)
- 概要:創設者「岩井喜一郎」の名を冠したウイスキー
- 飲みやすさ:★★★☆☆
- 味わい:バターのような滑らかさ、良質なグレーンの風味
- おすすめの飲み方:ハイボール、ロック
- 総合評価:★★★★☆
このウイスキーについて
ウイスキーのボトルネームは「地名」や「歴史」そして「土地柄」など様々ですが、「人名」も多くあります。
今回レビューするウイスキーは、ジャパニーズウイスキーの基礎を築いた人物「岩井喜一郎」の名を冠した「岩井 トラディション」です。
岩井喜一郎とは
岩井喜一郎は日本ウイスキー誕生から発展にかけて尽力を尽くした需要な人物です。
岩井喜一郎は、マルスウイスキーの創始者であり、日本の酒類業界で重要な役割を果たした人物です。彼は日本式アルコール製造法の研究に取り組み、後に摂津酒造でアルコール連続蒸留装置の考案や焼酎・酒精飲料の製造に深く関与しました。
岩井は当時、部下であった竹鶴政孝をスコットランドに派遣し、ウイスキー造りの技術を学んでくるよう指示。竹鶴は帰国後、ウイスキー事業を始めるための報告書を提出しました。これが後に受け継がれる「竹鶴ノート」と言われる日本ウイスキー造りにおける重要な文献です。
岩井喜一郎の才能と情熱は後世に語り継がれ、その功績は日本の酒文化に深い影響を与えました。現在の日本ウイスキーの発展において、竹鶴がスコットランドから持ち帰ったウイスキー造りの技術は不可欠な要素となっており、このことからも岩井喜一郎の存在は、日本ウイスキー業界において非常に重要な役割であったといえるでしょう。
ニッカウヰスキーの創業者「竹鶴政孝」にウイスキー造りを学ぶよう指示をしたのは「岩井喜一郎」だったんですね!!
岩井喜一郎なくして今の日本ウイスキーはなかったとも言えるかもしれません。
マルスウイスキーとは
近年、「シングルモルト駒ケ岳」や「シングルモルト津貫」で有名な「マルスウイスキー」
誕生は「岩井喜一郎」の後輩にあたる「本坊蔵吉」が運営していた「本坊酒造」が始まりです。
1934年、大阪帝国大学の講師であった岩井喜一郎。その時、若い学生である本坊蔵吉が彼のもとに蒸留の技術を学びにやってきました。この出会いが後に、素晴らしいウイスキーの創造に繋がることとなりました。
縁があり、本坊は岩井の娘婿となり、実家の本坊酒造という老舗の酒蔵で、岩井と共に焼酎や梅酒、ワインなど様々な酒類の製造に取り組むことになりました。
岩井はウイスキー部門の計画を担当し、山梨工場でウイスキー蒸留工場の設計と製造指導に情熱を傾けました。そして、その努力が実を結び、「マルスウイスキー」が誕生しました。
しかしながら、当時はウイスキーブームはまだ訪れず、売上も芳しくありませんでした。マルスウイスキーは苦境に立たされ、山梨の蒸溜所は一時的にワインの醸造所として使用されることになりました。
その後、1980年代に地ウイスキーブームが訪れ、マルスウイスキーは再び注目を浴びました。地方で限定品として生産され、人々の心を魅了しました。しかし、酎ハイや焼酎ブームによりウイスキー需要は低迷しました。
このような状況から、マルス信州蒸溜所は1992年に稼働停止となりました。しかし、ジャパニーズウイスキーブームの復活に伴い、2011年にマルス信州蒸溜所が再開し、2020年には12億円の費用をかけて35年ぶりの全面リニューアルが行われました。また、鹿児島にはマルス津貫蒸溜所が完成し、現在はマルスウイスキーが2つの蒸溜所で造られています。
岩井と本坊の情熱と努力から生まれたマルスウイスキー。その歴史と魅力は今もなお語り継がれています。どんな時代にも愛される味わいと共に、未来へと続く軌跡を刻んでいます。
一升瓶でウイスキーを販売するというのは、なんとも焼酎蔵らしいスタイルですね!!
岩井トラディションについて
岩井トラディションは、マルスウイスキーの生みの親である岩井喜一郎氏に基づき、本坊酒造のウイスキー造りの創生期を支えた功績を讃えるために2010年に発売された記念のウイスキーです。元々は蒸溜所限定のウイスキーでしたが、現在では一般販売されています。
岩井トラディションの原酒は、海外産(スコットランド、カナダ)のモルトウイスキーと国内産のグレーンをブレンドして造られていると推測されますが、日本ウイスキー界の功労者の名前が刻まれている以上、下手なものは出せないという意気込みが伝わってきます。
マルス信州蒸溜所では、使用される麦芽には英国から輸入したものが使われ、内容はノン・ピーテッド、ライトリー・ピーテッド(3.5ppm)、ミディアム・ピーテッド(20ppm)、スーパーヘビリー・ピーテッド(50ppm)の4種類が用いられます。これらの麦芽と岩井式ポットスチルを組み合わせることで、岩井トラディションの風味が生まれるそうです。
つまり、発売時期から仕様変更があったため、現在のラベルに記載されている「原料原産地:英国製造、カナダ製造、国内製造(グレーン)」という表記からは、グレーン原酒のみが国内で生産されていることが分かります。
いずれにせよ、低価格でありながら「岩井喜一郎」の名を冠しているところに期待が高まります!!
では、マルスウイスキーきってのエントリーボトル「岩井トラディション」の味と香りを3種類の飲み方でレビューしていきます!!
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- 食パン、樽香、プラム、レーズン、ピート
味わい
- ハチミツ香る滑らかさ、スパイシー、グレーンのスムース感
感想
まずは、ストレートから飲んでみます。
香りは、シングルモルトほどではなく落ち着いた感じで漂っています。感じるのは食パンと樽のウッディな香り、奥まってプラムやレーズン、そしてピートの少々スモーキーな香味が感じ取れます。
口に含むと、ややアルコール感はありますが口あたりはとても滑らかで、ハチミツの甘さ・香りが広がります。そして、段々とスパイシーな味わいに変わり、余韻にかけてはビターでほろ苦さが残ります。
価格を考えれば十分美味しいブレンデッドで、コストパフォーマンスは高いと思います。ただ、モルトの旨味よりもグレーンを先に感じる軽やかさがちょっと安っぽくも感じてしまう部分はありました。
ドッシリとしたモルトの感触もありますが、グレーンの風味が強いです。そのため、軽く飲みやすさもありますが、ちょっとチープにも感じる部分も・・・。
ロックで飲んでみる
香り
- ピート、ハチミツ、レーズン、焼き菓子
味わい
- バターのようなクリーミーさ、ビターテイスト
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。
香りは、奥まっていたピート感が前に出てきて、ハチミツや焼き菓子の香ばしさ、そしてレーズンも感じ取れます。
口に含むと、非常に滑らかで塩気のあるバターのようなクリーミーさがあります。そして、香ばしい麦の香りとピートが徐々に膨らみ、追いかけるようにビターな味わいに変わっていきます。余韻にかけてピーティーさは続き、飲み干してしばらくは柑橘の皮のようなビターが鼻腔に残りゆっくり消えていきます。
安価にも思えてくるグレーンの感じは弱まり、バターのような滑らかさと余韻にかけて膨らむシトラスのビターは心地よく、飲み飽きることはありません。
想像以上にピーティーさを感じます。そして、なんといっても塩バターのような滑らかさがクセになる味わいです。
ハイボールで飲んでみる
香り
- スモーク、ピート、樽香、麦、ハチミツ、桃
味わい
- 香ばしく優しい甘さ
感想
最後はハイボールで飲んでみます。
香りは今までよりもグッとスモーキーで、ピートのニュアンスも効いています。そして、麦(穀物)、樽香、ハチミツと続きますが、奥まってフルーティーな香りを覗かせます。
口に含むと、果実と香ばしい麦の甘さが広がり、ピートが追いかけてきます。そのまま香ばしさは続き、余韻にかけて果実とスモーキーな香りがゆっくりと調和しながら消えていきました。
グレーンの影響かもしれませんが、このウイスキーはハイボールとの相性がとても良いと思います。香ばしさとスモーキーな香りに果実香が漂い、飲み飽きずにスルスルと飲めてしまいます。
香ばしくスモーキーで周りを果実が優しく包みこむ味わいはハイボールでしか感じられなかったニュアンスでした!!岩井トラディションはハイボールが一番かもしれません!!
まとめ
岩井喜一郎に敬意を評した「岩井トラディション」のレビューです。
マルスウイスキーはやはりサントリーやニッカとは異なる独特の風味があります。それは、スコッチウイスキーを中心に本格的なウイスキーの追求をする姿勢の表れかもしれません。竹鶴政孝(ニッカ)はかつて摂津酒造時代の上司である岩井喜一郎(マルス)に指名され、スコットランドにウイスキーを学びに行きました。そして、その技術を独自に展開していったのが鳥井信治郎(サントリー)です。
日本ウイスキーの偉大な功労者の一人である岩井喜一郎の名前を冠したウイスキーは、その名にふさわしい素晴らしいウイスキーでした。
個人的には、ストレートでも十分に楽しむことができましたが、やはりハイボールとの相性の良さを一番に推したいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
テイスティングに使用しているグラス「グレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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