

こんにちは!ウイスキーの魅力と楽しさを伝えるカエル「sister-ley」です!

今回は、「サントリー ワールドウイスキー 碧 Ao」の解説&レビューを行っていきます!
「世界のウイスキーを一度に楽しみたい」「新しいタイプのウイスキーを試してみたい」と思っている方におすすめしたいのが、このサントリー ワールドウイスキー「碧 Ao」です!
2019年に発売されたこのウイスキーは、サントリーが世界で唯一実現した「世界5大ウイスキー産地の原酒を使用したブレンド」として話題になりました。2014年のビームサントリー誕生により可能になったこの革新的な製品は、従来の「調和」ではなく「重ね合わせる」という新しいブレンディング哲学によって作られています。
今回は、世界5大ウイスキー産地の7つの蒸溜所から生まれる原酒の特徴から、5代目チーフブレンダー福與伸二氏の技術、さらには様々な飲み方での味わいの変化まで詳しくご紹介していきます!
サントリー ワールドウイスキー「碧 Ao」の基本情報
カテゴリー | ワールドブレンデッドウイスキーワールド |
産地 | アイルランド、スコットランド、アメリカ、カナダ、日本 |
蒸留所 | サントリー所有の各蒸留所原酒をブレンド |
アルコール分 | 43% |
内容量 | 700ml |
価格帯 | 5,000〜6,000円 |
飲みやすさ | |
味わいの特徴 | 複雑で豊かな香味、スモーキーさと甘みが調和 |
おすすめの飲み方 | ハイボール、ロック、ストレート |
サントリーワールドウイスキー「碧 Ao」の誕生は、2014年のビームサントリー誕生が鍵です。サントリーがビーム社を買収したことで、世界5大ウイスキー産地すべてに自社蒸溜所を持つ唯一の企業となりました。
この独自の優位性を活かし、5代目チーフブレンダー福與伸二氏が新たな哲学で作り上げた「碧 Ao」の全貌を、これから解説していきます。
世界初の挑戦【2014年ビームサントリー誕生という転機】

企業買収が生んだ奇跡のポートフォリオ
サントリー ワールドウイスキー「碧 Ao」の物語は、2014年のサントリーによる米国ビーム社買収から始まります。この戦略的買収により、サントリーは世界的なスピリッツ企業へと成長し、同時に極めて稀な地位を獲得しました。

買収完了後、サントリーグループは以下の蒸溜所を所有することになりました
世界5大ウイスキー産地の蒸溜所を所有
- スコットランド:アードモア蒸溜所、グレンギリー蒸溜所
- アイルランド:クーリー蒸溜所
- アメリカ:ジムビーム蒸溜所(クレアモント)
- カナダ:アルバータ蒸溜所
- 日本:山崎蒸溜所、白州蒸溜所

これらの蒸溜所を俯瞰したとき、社内で「もし、これらの世界の原酒をブレンドしたらどうなるだろうか」というアイデアが生まれるのは自然な流れでした。
「やってみなはれ」精神と現実的な課題
この開発は、サントリー創業者・鳥井信治郎から受け継がれる「やってみなはれ」精神の現代的な表現として語られています。しかし、その背景には近年のジャパニーズウイスキー市場が直面する深刻な原酒不足という現実的な課題もありました。
原酒不足への戦略的対応
世界的な日本のウイスキー需要の急増により、「山崎」や「白州」といった長期熟成原酒は枯渇状態となり、多くのエイジステートメント製品(年数表記製品)が休売となりました。「碧 Ao」は、この状況に対する見事な解決策として位置づけられます。
- 日本の貴重な原酒を節約
- 世界の蒸溜所ポートフォリオを活用
- 新しいプレミアム製品の創出
「碧(あお)」という名前に込められた意味
「碧 Ao」という名前は、世界5大ウイスキー産地を繋ぐ「海」の色に由来しています。個性豊かな世界の原酒が海を越えて日本に集い、一つのウイスキーとして結実するという物語が込められています。
漢字の「碧」には「青く美しい石」という意味もあり、製品に宝石のような希少性と高級感を与えています。

名前に込められた意味を知ると、このウイスキーへの愛着がより深まりますね。
世界7つの蒸溜所による原酒構成【各国の個性を解説】

構成原酒の詳細分析
「碧 Ao」の複雑な味わいの根幹をなすのは、5カ国7つの蒸溜所で造られた原酒です。これらは山崎蒸溜所に集められ、日本のブレンダーの手によって一つのウイスキーに仕上げられます。
サントリーワールドウイスキー「碧 Ao」は、世界5大ウイスキー産地の個性が織りなす、まさに「世界初」のブレンドです。それぞれの蒸溜所の原酒がどのような役割を果たし、あの複雑で豊かな味わいを生み出しているのか、詳しく見ていきましょう。
個性をもたらすスコットランド代表【アードモア&グレンギリー】

スコットランドからは、個性豊かな2つの蒸溜所が参加しています。
アードモア蒸溜所
アードモア蒸溜所は、ブレンドに「コクとスモーキーさ」「味わいの深み」をもたらします。ハイランド地方の豊かな自然が育んだ爽やかなピート香が特徴で、そのウイスキーは「アードモア レガシー」に代表されるように、薬のような独特の風味も持ち合わせています。この個性が「碧 Ao」に奥行きを与えているのです。
グレンギリー蒸溜所
グレンギリー蒸溜所の原酒は、蜂蜜やヘザーを思わせる甘くスパイシーなモルト特性を加え、ブレンド全体に厚みをもたらします。グレンギリーのシングルモルトは、その繊細でフローラルな香りが評価されています。
複雑さの要となるアイルランド代表クーリー

クーリー蒸溜所
アイルランドからは、クーリー蒸溜所の原酒がブレンドに「複雑な味わい」をもたらします。単体では比較的控えめな個性を持つウイスキーですが、その存在なくして「碧 Ao」の奥行きは語れません。
クーリーのアイリッシュウイスキーは、3回蒸留によるスムースさが特徴で、代表銘柄はカネマラです。チーフブレンダーの福與氏は、この原酒をブレンドから除くと、味わいが薄くなり、複雑さが失われてしまうと語るほど、その縁の下の力持ち的な役割は重要です。
華やかさをもたらすアメリカのジムビーム

ジムビーム蒸留所
アメリカからは、世界No.1バーボンとして知られるジムビームの原酒が貢献しています。ブレンドの「華やかな香り」と、バーボン特有のバニラ様の甘さの源泉となっており、「碧 Ao」の第一印象を決定づける支配的な要素です。ジムビームの象徴的なボトルである「ジムビーム」自体が、その華やかさと甘さの代表例と言えるでしょう。
安定性をもたらすカナダのアルバータ

アルバータ蒸留所
カナダからは、アルバータ蒸溜所の原酒が「柔らかな味わい」を提供し、ブレンド全体の骨格を形成しています。ライ麦を主原料とするアルバータのウイスキーは、スムーズで飲みやすい特性があります。
福與氏は、この原酒を「ライトなグレーン」と位置づけ、他の個性的なモルトを支える土台として活用しています。アルバータ蒸溜所の主力商品である「カナディアンクラブ」は、その滑らかでバランスの取れた味わいで知られています。
全体の調和を成す【山崎 & 白州】

そして、日本のサントリーが誇る2つの蒸溜所が、ブレンド全体をまとめ上げます。
山崎蒸溜所
山崎蒸溜所の原酒は、重厚で華やかな味わいを提供します。「山崎」シングルモルトが持つ、熟成感と複雑なアロマが「碧 Ao」に深みを与えます。
白州蒸溜所
白州蒸溜所の原酒は、爽やかで軽快な味わいをもたらします。「白州」シングルモルトの、森のような清々しい香りとクリーンな味わいが、全体のバランスを整える役割を担っています。
これら世界各国の個性が、チーフブレンダー福與氏の卓越したブレンディング技術によって見事に調和し、唯一無二の「碧 Ao」が誕生しました。

7つの蒸溜所それぞれに明確な役割があるんですね。まさに世界のオーケストラです!
原酒構成比率の秘密
ブレンド比率において最も大きな割合を占めるのは、カナディアンウイスキー(アルバータ)です。この構成により、「碧 Ao」は北米系の甘さとクリーミーさを基調としながら、スコッチとジャパニーズの複雑さが後から追いかけてくる味わい構造を実現しています。
福與伸二氏の革新的ブレンディング哲学【「重ね合わせる」技術】

従来の「調和」を超える新しいアプローチ
この前代未聞のプロジェクトを指揮したのは、サントリー5代目チーフブレンダー福與伸二氏です。彼に最初に与えられた指示は、「5つのウイスキーを使ってくれ」という、異例なほどシンプルで自由度の高いものでした。
「調和」から「重ね合わせる」へ
サントリーの伝統的なブレンディング哲学は「調和」です。これは、それぞれの原酒の個性を突出させることなく、丸みを帯びた完璧な球体のような香味を創り上げることを目指す考え方です。
しかし福與氏は、「碧 Ao」においてこの伝統的なアプローチでは、各国の個性を活かすことが不可能になると判断しました。個性を調和させれば、その個性は消えてしまうからです。
「重ね合わせる」という新技術
そこで福與氏が編み出したのが、「重ね合わせる」という新しいブレンディング哲学でした。
わかりやすい比喩
これは絵の具の青と黄色を混ぜて緑色を作るのではなく、透明なシートに描かれた青と黄色を重ね合わせることで、青は青として、黄色は黄色として認識できる状態を創り出すイメージです。
技術的な意味
この哲学は、完璧な単一のハーモニーを追求するのではなく、個々の音がはっきりと聴き取れる複雑な和音を創り出すことを目指します。構成要素間にある種の創造的な緊張感を許容することで、多面的な味わいを実現しています。

「重ね合わせる」という発想は、ブレンディングの世界における大きな転換点ですね。
実験からマリッジまでのプロセス

福與氏と彼のチームは、山崎蒸溜所で無数の実験的ブレンドを繰り返しました。各国の原酒の特性を一つ一つ見極め、組み合わせを変え、その相互作用を丹念に探求しました。
マリッジ(後熟)の重要性
最終的なブレンド比率が決定した後、その液体は数ヶ月間の「マリッジ」期間に入ります。特筆すべきは、このマリッジが樽ではなくステンレスタンクで行われる点です。これにより、樽由来の個性を加えることなく、ブレンドされた原酒同士が馴染み、一体化することができます。

焼酎では【前割り】という、水とアルコールの結合を促すスタイルがありますが、「碧Ao」も同様に、原酒同士をタンク貯蔵し馴染ませています!

こうして、それぞれの個性を活かしたワールドウイスキー碧Aoは造られているんですね!

それでは、5大ウイスキーをブレンドした異色のウイスキー「碧Ao」をストレート、ロック、ハイボールで味と香りをみていきましょう!
ワールドウイスキー碧 Aoを実際に飲んでみた

碧 Aoのフレーバー
碧 Aoの味わい
ストレートで飲んでみる

香り
バニラ、キャラメル、りんご、洋梨、ハチミツ、レーズン、紅茶
味わい
砂糖のような甘み、スパイシー、ビターなアフターテイスト
感想
まずはストレートから飲んでみます。香りはバーボンを思わせるバニラとキャラメルの甘い香りが先行して、リンゴや洋梨といった果実香も感じます。続いてハチミツやレーズン、紅茶のような発酵感も伴っています。
口に含むと、砂糖菓子の様な甘さがグッと広がり続いてスパイシーな刺激へと続きます。アフターにかけてビターが追いかけ飲み込むと同時に鼻にリンゴや洋梨、ハチミツの戻り香が余韻として残ります。
以前に「碧 Ao」の初期ロットを飲んだ事がありましたが、その時の物とは別物に感じます。以前はもっとバーボンの要素が強くセメダイン臭が強く飲み辛かった印象があります。しかし、今回のレビューに際し購入した物はセメダイン臭が極めて少なく、リンゴや洋梨がふくよかでニッカウイスキーの”セッション”の様なモルト感を豊富に感じます。
開発者の福輿氏によると、ブレンダーチーム内でもテイスティングノートを執ると”全員違う意見”になるそうで人によって感じ方が大きく異なり、注視する香りや味わいによって変化するらしく様々な原酒の個性が溶け込んでいる「碧 Ao」には、「これといった正解はなく全部が正解」とも述べています。
ブレンド比率も初期とは違うと個人的には察していますが、この味わいならストレートでも十分に美味しく何より面白みがありました。

後でも述べますが、体調などによっても感じ取れる要素は変化するので初期ロットと比率は同じで、筆者の変化によるものかもしれませんね!?
ロックで飲んでみる

香り
バニラ、キャラメル、ハチミツ、フィナンシェ、オレンジ
味わい
ハーブのトップノート、スパイシーなミッド、ビターなアフター
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。香りはバニラやキャラメル、ハチミツの甘い香りに香ばしくバターっぽいフィナンシェの様な香りが混じり、柑橘とオレンジが周りを囲むように感じ取れます。
口に含むと、アイリッシュウイスキーにある柔らかいハーブっぽさがあり、続いて穏やかなピート香とスパイスが広がります。アフターはビターですが渋みもなく柔らかな印象で、冷やしても柔らかでスムースな飲み口は、アイリッシュやカナディアンの原酒要素が効いているのかもしれません。とても飲みやすく柔らかな口当たりの味わいです。
ハイボールで飲んでみる

香り
バニラ、キャラメル、クッキー、セメダイン、ピートスモーク
味わい
スモーキーでバーボンの華やかさ、カナディアンのメイプル感
感想
最後はハイボールで飲んでみます。香りはバニラやキャラメルにクッキーの香ばしさを感じ、バーボン特有のセメダインにピーティーなスモークが漂っています。
口に含むと、アードモアの大陸系ピートが爽やかに広がり、続いてバーボンのフローラルとリンゴが追いかけてきます。甘さも感じますが砂糖の様なギュッとした甘さではなくメイプルやハチミツといった自然由来の優しい甘さがあり、アフターにかけてオリエンタルなスパイスがスッと香り消えていきます。
アードモアのピートからバーボンのフローラルへ変化するあたりは、通常のウイスキーではあり得ない変化で、ハイボールで飲んでも非常に面白みのある味わいだと思いました。
まとめ
世界でも類を見ない5大ウイスキーのブレンドによって生まれた「碧 Ao」
賛否両論ありますが、個人的にはとても面白みのあるウイスキーだと思います。何よりストレートからロック、ハイボールと飲み方を変えることで顔を出す各産地のウイスキーの個性を感じることが出来ますし、それは体調によっても変化すると言われます。今回、レビューをするにあたって以前と違うと述べましたが、それはもしかしたら体調や自身の味覚の変化かもしれません。
いずれにせよ、少し飲んだだけ全てを評価出来る類のウイスキーではない、ということは確かだと思います。今後、瓶内で少しずつ変化もするでしょうし、未だに感じ取れていない香りが開いてくるかもしれません。
様々な原酒が溶け込んでいる「碧 Ao」未だに感じ取れていない香りや味わいを見つけようとしながら変化を楽しんでいくのも、このウイスキーの楽しみだと思います。
サントリーでしか造れない多彩な味わいを持った「碧 Ao」是非、一度お試し下さい。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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