このウイスキーの特徴を簡単にまとめると
このウイスキーについて
今回はサントリーが販売する「ワールドウイスキー碧 Ao」をご紹介します。
「ワールドウイスキー碧 Ao」はサントリーが2019年の4月より数量限定で販売を開始し、現在は通年でリリースされているブレンデッドウイスキーです。
最近ではスーパーなどでも見かけますが、最初は少数ロットの限定品でした。
この「碧 Ao」は、サントリーがアメリカのビームス社を買収したことをきっかけに、世界5大ウイスキー産地の全てに自社の蒸溜所を所有する事になったことがきっかけで生まれました。
つまり、世界中の酒造メーカーで世界5大ウイスキーの産地に蒸溜所を持つ企業は無く、サントリーにしか作る事が出来ないブレンデッドウイスキーになります。
5大ウイスキー産地とは
では、「世界5大ウイスキー産地」について簡単に見ていきましょう。
まずは、何と言っても「日本」ですね!近年のジャパニーズウイスキーブームは目を見張るものがあります。
そして、日本がお手本にした「スコットランド」、スコッチウイスキーとはスコットランド産のウイスキーを指します。
さらに、諸説ありますがウイスキーの起源とも言われるアイルランド。近年は蒸溜所の建設ラッシュが起きています。
また、バーボンウイスキーで有名なアメリカ合衆国。ケンタッキー州を中心に蒸溜所が数多く存在してます。
そして最後はカナダ。アメリカの禁酒法時代に反映したとされるカナディアンウイスキーの産地になります。
5大ウイスキー産地の特徴
まずはアイリッシュウイスキーですが、滑らかなでクセがなくとてもスムース味わいで初心者の方でも飲みやすいのが特徴です。
次に、スコッチウイスキーの特徴は何と言ってもピートを使用したスモーキーフレーバーにあります。重厚なモルトは世界中にファンがいますし、ウイスキーと言ったらスコッチと言われるほど最もメジャーなウイスキーになります。
アメリカンウイスキーは、原料にトウモロコシを使い新樽熟成を行うことで生まれる独特の風味、バニラ香、甘くフローラルな味わいが特徴的です。
カナディアンウイスキーの特徴は何と言ってもライトな酒質。クセもなく飲みやすいので初心者に最も向いているウイスキーかもしれません。
そして日本が誇るジャパニーズウイスキー。特徴は日本人の感性が作る繊細で多彩な味わい、オリエンタルな香味をもたらすミズナラ樽は今や世界中の蒸溜所が注目をしています。
碧Aoに使われている原酒について
「ワールドウイスキー碧 Ao」にはサントリーが所有する世界中の蒸溜所原酒がブレンドされている訳ですが、これはサントリーだから出来る事と同時に、各産地の個性を1つにまとめる(ブレンドする)というのは前代未聞の事でもありました。
音楽に例えると!?クラシック音楽にR&Bのリズムはマッチしないですよね・・・
様々な個性を一つにまとめる事は、簡単そうに思えて非常に難しく場合によっては個性を潰してしまう危険性もあります。
この異色のブレンデッドウイスキーを完成させたのは、サントリーのチーフブレンダーでもある 福與伸二氏。サントリーウイスキーにおける製造責任者です。
では、次に福輿氏のコメントを参考に「碧 Ao」に使われている蒸溜所とその原酒の役割についてご紹介いたします。
碧 Aoの各原酒の役割について
アイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーで採用している原酒は「カマネラ」をリリースしている「クーリー蒸溜所」のノンピート原酒。
「碧 Ao」では味わいに複雑味を与える役割をしています。ブレンド比率では使われている量が一番少ないと福輿氏は述べています。
スコッチウイスキー
スコッチウイスキーで採用している原酒は「アードモア蒸溜所」のスモーキーモルト原酒と、ハチミツを感じる「グレンギリー蒸溜所」のノンピートモルト原酒を使用しています。
スコッチウイスキーの重厚で個性豊かな風味は「碧 Ao」のスモーキーな香味とスパイシーな味わい、そしてウイスキーに厚みを与える役割をしています。
アメリカンウイスキー
アメリカンウイスキーには、アメリカを代表するバーボンウイスキー「ジムビーム蒸溜所」のバーボン原酒が使われています。
トウモロコシが原料のバーボンウイスキー。新樽熟成がもたらす甘く華やかな香りの原酒が「碧 Ao」の味わいにも活かされています。
カナディアンウイスキー
カナディアンウイスキーはライ麦を原料とする贅沢な製法を行う「アルバータ蒸溜所」のグレーン原酒を使用しています。
アルバータ蒸溜所のグレーン原酒を採用している理由は、ライトな酒質のカナディアンウイスキーが突出した他の個性を抑え、味わいに柔らかさをもたらしてくれるからです。
ジャパニーズウイスキー
繊細な旨味を持つサントリーの2種類のモルト原酒。その役割は個性豊かなそれぞれの原酒をまとめ上げる役割を担っています。
アイリッシュ、スコッチ、アメリカン、カナディアンのそれぞれの個性を尊重しながら1つの味わいを作る為に繋ぎ止める重要な役割がジャパニーズモルトの役割です。
碧 Aoの製法
次に「碧 Ao」の製法についてご紹介いたします。
ブレンドに使われる各蒸溜所の原酒をレシピに合わせてブレンドします。
ブレンドされた原酒はお互いの酒質や味わいなどを馴染ませるために、4ヶ月の間ステンレス製のタンクで後熟を行います。
後熟というと、グレンモーレンジィに代表される様な木製の樽を使った方法を想像しますよね!?
ステンレスでは熟成はしないのでは!?と思ってしまいますが、福輿氏によると「ステンレス製のタンクでも熟成はする」という説明がありました。
木製の樽だからこそ木の成分が滲み出て熟成されると思いがちですが、ステンレス製のタンクでも各地で熟成された様々な原酒が混ざり合い、科学的に成分が融合する!?みたいな感じがあるのかもしれません。
焼酎の世界でも「前割り」といって前日に水で焼酎を割り一晩冷蔵庫で寝かすことによって成分が馴染み旨味が増すという事もあるので、ステンレス製のタンクでも熟成はするのかもしれません。
様々な意見があるサントリー「碧 Ao」。今回も3種類の飲み方でレビューしますので、最後までご覧ください。
テイスティング(実際に飲んでみた)
フレーバーチャート
味わいチャート
ストレートで飲んでみる
香り
- バニラ、キャラメル、りんご、洋梨、ハチミツ、レーズン、紅茶
味わい
- 砂糖のような甘み、スパイシー、ビターなアフターテイスト
感想
まずはストレートから飲んでみます。香りはバーボンを思わせるバニラとキャラメルの甘い香りが先行して、リンゴや洋梨といった果実香も感じます。続いてハチミツやレーズン、紅茶のような発酵感も伴っています。
口に含むと、砂糖菓子の様な甘さがグッと広がり続いてスパイシーな刺激へと続きます。アフターにかけてビターが追いかけ飲み込むと同時に鼻にリンゴや洋梨、ハチミツの戻り香が余韻として残ります。
以前に「碧 Ao」の初期ロットを飲んだ事がありましたが、その時の物とは別物に感じます。以前はもっとバーボンの要素が強くセメダイン臭が強く飲み辛かった印象があります。しかし、今回のレビューに際し購入した物はセメダイン臭が極めて少なく、リンゴや洋梨がふくよかでニッカウイスキーの”セッション”の様なモルト感を豊富に感じます。
開発者の福輿氏によると、ブレンダーチーム内でもテイスティングノートを執ると”全員違う意見”になるそうで人によって感じ方が大きく異なり、注視する香りや味わいによって変化するらしく様々な原酒の個性が溶け込んでいる「碧 Ao」には、「これといった正解はなく全部が正解」とも述べています。
ブレンド比率も初期とは違うと個人的には察していますが、この味わいならストレートでも十分に美味しく何より面白みがありました。
後でも述べますが、体調などによっても感じ取れる要素は変化するので初期ロットと比率は同じで、筆者の変化によるものかもしれませんね!?
ロックで飲んでみる
香り
- バニラ、キャラメル、ハチミツ、フィナンシェ、オレンジ
味わい
- ハーブのトップノート、スパイシーなミッド、ビターなアフター
感想
次は氷を入れてオンザロックで飲んでみます。香りはバニラやキャラメル、ハチミツの甘い香りに香ばしくバターっぽいフィナンシェの様な香りが混じり、柑橘とオレンジが周りを囲むように感じ取れます。
口に含むと、アイリッシュウイスキーにある柔らかいハーブっぽさがあり、続いて穏やかなピート香とスパイスが広がります。アフターはビターですが渋みもなく柔らかな印象で、冷やしても柔らかでスムースな飲み口は、アイリッシュやカナディアンの原酒要素が効いているのかもしれません。とても飲みやすく柔らかな口当たりの味わいです。
ハイボールで飲んでみる
香り
- バニラ、キャラメル、クッキー、セメダイン、ピートスモーク
味わい
- スモーキーでバーボンの華やかさ、カナディアンのメイプル感
感想
最後はハイボールで飲んでみます。香りはバニラやキャラメルにクッキーの香ばしさを感じ、バーボン特有のセメダインにピーティーなスモークが漂っています。
口に含むと、アードモアの大陸系ピートが爽やかに広がり、続いてバーボンのフローラルとリンゴが追いかけてきます。甘さも感じますが砂糖の様なギュッとした甘さではなくメイプルやハチミツといった自然由来の優しい甘さがあり、アフターにかけてオリエンタルなスパイスがスッと香り消えていきます。
アードモアのピートからバーボンのフローラルへ変化するあたりは、通常のウイスキーではあり得ない変化で、ハイボールで飲んでも非常に面白みのある味わいだと思いました。
まとめ
世界でも類を見ない5大ウイスキーのブレンドによって生まれた「碧 Ao」
賛否両論ありますが、個人的にはとても面白みのあるウイスキーだと思います。何よりストレートからロック、ハイボールと飲み方を変えることで顔を出す各産地のウイスキーの個性を感じることが出来ますし、それは体調によっても変化すると言われます。今回、レビューをするにあたって以前と違うと述べましたが、それはもしかしたら体調や自身の味覚の変化かもしれません。
いずれにせよ、少し飲んだだけ全てを評価出来る類のウイスキーではない、ということは確かだと思います。今後、瓶内で少しずつ変化もするでしょうし、未だに感じ取れていない香りが開いてくるかもしれません。
様々な原酒が溶け込んでいる「碧 Ao」未だに感じ取れていない香りや味わいを見つけようとしながら変化を楽しんでいくのも、このウイスキーの楽しみだと思います。
サントリーでしか造れない多彩な味わいを持った「碧 Ao」是非、一度お試し下さい。
最後までお読み頂きありがとうございました。
「フルボトルはちょっと高い・・・」という方はお試しサイズのハーフボトルもあります。
テイスティングに使用しているグラス「ゲレンケアン」、クリスタル製なのに丈夫で倒れにくく洗いやすい!!しかも、安価という素晴らしいウイスキーグラス。
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